修行
ここは俺たちの言う所の天国らしい。
ここに来てしばらく経つがいろいろと分かったことがある。
まずここは夜という概念がない。
ずっと昼間なのだ。
そして俺もなぜか眠くならない。
そのせいか日にちの感覚も大分おかしくなっている。
神と称する俺の上司に当たる人物は俺に会ったその日からつきっきりで勉強やら体術やらを教えてくる。
俺は頭のいい方じゃないが不思議とそいつの言うことは自然と頭の中に入ってくる。
この世界では見聞きしたことは全て頭の中に入る仕組みだとその人物は言っていた。
確か俺の上司はブノーなんとか、確かブノージソンとかというへんてこで長い名前だったと思う。
俺は面倒くさいからブノーさんと呼んでいる。
そういえばいつの間にかブノーさんと一緒にいた女の子がいなくなっていた。
あの娘も神様なのかなとふと思った。
結局一言も話さなかったなと少し寂しく思った。
ある日、なぜ俺が神様候補になれたのか聞いてみた。
そうしたらブノーさんが
「前にも言ったと思うけど君は善行ポイント1億ポイント貯まった人物なんだよ。
善行ポイント1億ポイント貯まると自動的に神様になる資格を得るんだ。
善行ポイントというのは文字通り1つの善行を行うと1ポイント。
君たち人間は覚えていないだろうけど輪廻転生を繰り返し善行ポイントを貯めていく。
ちなみに人間は輪廻転生をするたびに記憶を消していくのだけど。
君の直前の人生では仲間を助けることで善行ポイントを稼いだんだけど、その前の人生、その前の前の人生で偉大なる功績を残している。
ほぼ、君の人生は偉人の人生だ。
本当は前の人生でポイントをおまけして神様の修行をしても良かったのだけど、君が心残りがあるというんだ。
それが不良になりたいという君の願い。
今までまじめに過ごしてきたから一度でいいから人生のレールを踏み外れた人生を歩みたいと言うんだ。
私はその申し出にかなり驚きましたが承諾することにしました。
それがあなたの歩んできた人生となります。
まぁ、覚えてないでしょうが」
確かに俺は覚えていないがそんなふざけた理由で荒んだ人生を歩んできたんだと思うと前世の俺に腹が立ってきた。
続けてブノーさんは
「これから君はいろいろな課題をクリアーするために輪廻転生を繰り返す修行を行う。
輪廻転生を繰り返すと言っても今までみたいに記憶は消さない。
つまり今の記憶の状態で輪廻転生を繰り返すのだ。
そこでいろいろな経験を蓄積し君は最終的に神様へと進化する。
まぁ、何百兆年かかると思うけどね。
我々神は長生きなのだよ」
なんか気の長い話を聞いているみたいだ。
ブノーさんは続けて
「君が転生する世界はもう決めてある。
私がいくつか管理している世界の1つです。
ここでいろいろと注意を言い渡さなければならない。
まずはアヒンサーの精神、
これは人を傷つけてはいけないと言うこと、物理的にも精神的にも。
そして色即是空の精神。
これはその世界でいくら物欲にまみれたとしてもそれは幻、持ち帰れるものなど何一つない。
決して物欲にまみえることなかれという精神。
まぁ、簡単に言うと金儲けをするなと言うこと
まぁ、金儲けをするなといっても生活費ぐらいは儲けてもいいけど。
要するに必要以上に特に神の力を使って金儲けをするなと言うこと。
この2つの約束を破ると善行ポイントは即座に0ポイント、記憶も消してまた一から輪廻転生をやりなおさせてもらう」
俺は黙って聞いていた。
ブノーさんは続けて
「我々神は人間の三大欲求を持たない。
三大欲求とは食欲、睡眠欲、性欲の3つだ。
君はこの世界にきて大分経つが、なにも食べたいとは思わないし眠くならないことに疑問を持たなかっただろうか」
確かに俺はこの世界にきてから飲み食いはもちろん眠ってもいない。
それでいて元気なのだ。
ブノーさんは続けて
「我々が性欲を持たないのは裸になってくれれば分かると思う。」
「え!?」と俺はブノーさんの言葉に驚きつつ裸になった。
そして俺は驚いた。
いわゆる股間になにもついていないのだ。
ブノーさんは続けて
「まず最初に説明しておきたいのは我々は食べないということ、いや飲食が出来ない体だということ。
よって我々には消化器官、排泄器官が存在しない。
そして見て分かるように我々には生殖器官が存在しない。
よって性欲がないのはそのためでもある。
男か女かというのも前世の記憶と見た目と言うことになる。
事実、私は男にも女にもなれる。
今は男として生活していますが。
取りあえず大事な話はここまでです。
次に説明しなければならないのは転生後の世界でのことです。
我々は生殖器官を持たないので成熟した大人に転生することは出来ません。
よって、あなたは10歳前後の少年に転生することになります。
そしてあなたは転生した世界で課題を自分の力で見つけクリアーすることが今回の転生の目的となります。
そこで諸注意があります。
転生後も神の能力を受け継いだままです。
具体的に言うとなにも食べることも眠ることも出来ない体です。
出来るだけばれないようにして下さい。
体も人間の体とは違います。
出来るだけ人間の前では裸にならないように。
それとあなたにこのリュックを授けます。
このリュックは中身はなにも入っていませんが中に手を入れてほしいものを念ずると大概のものは生成され出てきます。
リュックよりも大きいものは無理ですが。
このリュックが課題達成の役に立つと思うんでお持ちなさい。
そして決して無くすことがないように。
もちろんこのリュックを使った金儲けも禁止です。
このリュックを無くしたりこのリュックを使って金儲けをしたりしたら修行は中止です。
私はあなたが立派な神になると信じています。
良きご武運を。」
そう言うとブノーさんは俺の視界から消え俺は転生することになった。
しかし、人間にばれないようにって無茶を言うなと。
絶対に無理じゃん。
俺はそうぶつぶつ言いながら新しい転地に向かうことになった。