人間の街〜氷の竜〜
前もそうだったが1人の竜族の人間を連れてくるのは大変だ。
俺はとりあえず氷竜の人間、アイーゼを人間の街に連れていかなかればならない。
そして、エグザにも会わせなければならない。
1番何が大変なのかというと彼らは暑さに弱い。
だから彼らが言うには暑さから身を守る必要性がある。
アイーゼ曰く何回も地上には行き来をしているらしい。
だから地上に行くのは苦にもならないらしい。
しかし、それなりの服装は必要だ。
そういえば、俺が(前世の)小学校の時ある実験をしたことがある。
氷の融ける実験だ。
その実験の概要は氷を2つにわけて実験すること。
1つはそのまま氷を外に放置
もう1つは透明なビニール袋に入れて外に放置。
そして最後の1つはダウンジャケットに包んで外に放置。
結果は思いのほか、ダウンジャケットに包んだ方が氷が融けるのが遅かった。
ダウンジャケットは中に入っている空気のおかげで断熱効果が出来、外の熱を吸収しにくいのだそうだ。
ちなみにこの実験は夏休みに自由研究だ。
何が言いたいのかと言えば彼らは地上に降りる時、信じられないぐらい厚着をする。
彼らの体温はかなり低いのでそれで外の暑さから身を守るのだ。
そして、彼らの食べるものにも気をつけなければならない。
彼らが食べるものは基本俺らと変わらない。
そう、基本だけは。
基本俺らと変わらないのだが、一旦凍らす必要性がある。
そう、カチンカチンに。
それを彼らが食べるのだ。
でも、ここで不思議な現象が起こる。
彼らがその食べ物を手に取ると即座に解凍される。
そして俺らと見た目同じ食べ物を美味しそうに食べるのだ。
解凍されるのならいちいち凍らす必要性がないようにも思われるのだがそれは違う。
先日、凍らせたラーメンを彼にご馳走したのだがそのラーメンは彼の目の前で湯気のあるアツアツのラーメンへと変化していった。
俺がその様子を不思議そうに見ているとアイーゼは
「君にはあげられないよ。
ていうか、君は食事をしないんだっけ。
意地悪で言っている訳じゃないんだ。
君から見たらアツアツのラーメンに見えるかも知れないけれど実は温度は変わっていないんだ。
凍っている時の温度のまま。
僕は普通の人間が食べるような温度の高いものは食べられない。
でも、温度の低いものなら食べられるんだ。
でもカチコチのままではいくら僕でも食べられない。
だから僕が食べやすいように食べ物を変化させる必要性がある。
僕が食べるものは見た目が暖かそうでもとても人間が食べられる温度じゃないのさ。
この世界にある冷凍食品がちょうど良い食べ物。
アイスクリームは僕にとっては火傷するぐらい熱いかな」
と笑って答えていた。
ある日、アイーゼは
「僕が人間の街に来てから1週間。
思ったよりもこの街は暑いんだね。
この服じゃ足りないぐらいに。
僕の部屋は君のおかげで快適なんだけどもうちょっと暑さに対する服をなんとかしてもらえないかな」
と言われた。
確かに今は夏。
彼にとってはかなり辛い時期だろう。
と言ってもリュックからそういった服を出せなくはないが彼の好みが分からない。
俺は師匠のエグザに頼んで夏なのに冬服を売っている場所を教えてもらった。
エグザはそんなこともあろうかと倉庫にすうひょくちゃくもの冬服を自慢げに用意していた。
エグザはアイーゼが男か女か分からない状態で用意していたから男物と女物が半々と言った具合だ。
アイーゼはなぜか女物に興味があるようだ。
ていうか彼は男物と女物の区別がつかないようでもあった。
結果、かなり中性的な出で立ちとなった。
アイーゼは人間の街に来てからエグザとかなり長いこと話し合っていた。
かなり難しい話をしているらしく俺にも聞かせてもらえない。
と言っても週末にレポートがエグザに渡されるのだが。
俺はその内容を理解するのにも四苦八苦している。
俺が話し合いに参加できるのは今の修行が終わってからだそう。
そういえば、前の炎竜フィラーの時も話し合いには参加できなかった。
レポートだけを渡されていたっけ。
俺はとりあえずそのレポートの内容をエグザの前で暗唱しなければならない。
数百ページもの内容を自分の頭の中で覚えなければならない。
これに関しては神の力を使ってはならない。
自分の記憶力を使ってだ。
しかも自分が内容を理解しない限り覚えられないように枷がしてある。
ただ言葉を覚えれば良いというものではない。
それを1人の竜族に関して数百ページ、5人いるからレポートは千ページは超えるだろう。
それだけでも頭が痛い。
実のところ今も炎竜のレポートで手こずっているところだ。
しかもおもてなしは俺の仕事、その合間を縫っての暗記だから正直、ヘトヘトだ。
これが今の俺の修行の中身だ。
そして、氷竜のアイーゼは帰って行った。
後、3人の竜族の長を人間の街に連れて行かなければならない。
まだまだ、修行は続くのだ。
正直、気が重い。
そんな様子を見て性格の悪い師匠のエグザはにやついていた。
次はどんな竜族の長と会うのだろうか。
風当たりが強くなければ良いのだが。
そんな思いは杞憂だと自分に言い聞かせ俺は横になってリラックスをした。




