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人間の街

 (注意;このお話は炎竜フィラーの視点でお送りします)


 私は初めて人間の村というモノを見た。

我々の文化とは全く違った文化。

かなり進んでいることは一目で分かった。


 思えばコバル(主人公)と言う少年に出会ったことが発端だ。

彼は人間のパーティを連れてやってきたのだが私は彼らを侮っていた。


 私はいつもある場所から敵が来ないかを見張っていた。

そして私の領地に入る輩をいろんな策を持って追い出してきた。

最初はただ単に脅していたのだが次第に腕に覚えのある連中がやってくるようになった。

そして私は考えたのだ。

今度は泣き落としだ。

私がドラゴンの被害者になってあまりにも強すぎることをアピールするのだ。

ドラゴンの力は人知を越えるものだと。

そうやって幾つものパーティを追い出してきた。

そういう実績があるのだ。


 しかし、今回は違った。

コバルと言う少年は明らかに人間とは違ったのだ。

そうなれば私の嘘が簡単に見破られるのも時間の問題。

そして現在に至る訳だ。


 コバルと言う少年の話によると彼の使命は人間と竜族の融和であるという。

彼の上司であるエグザという少女から懇切丁寧に説明された。

それはもう丁寧に。


 彼女の言う言葉は非常に回りくどい。

竜族は会話のほとんどをテレパシーで行う。

しかもほとんどがイメージ中心だ。

だから人間の言葉というものは非常に回りくどい。

私も必要最低限のことしか言葉にしない。

しかし、人間は言葉によるコミュニケーションが主だ。

竜族の私にとっては慣れないのだ。

しかもエグザはすぐ横道にれる。

それも関係の無い話だ。

ギルドの連中がどうとか私が会ったことのない人物の恋愛事情とか。

とにかく話が長いのだ。

重要な話と関係の無い話の比率は1:9だ。

9割は関係の無い話なのだ。

結局話が終わるのに12時間ぐらいかかった。


 しかし、エグザも能力者の1人でその能力はすさまじいものだった。

時間を操れる能力を持っているのだ。

1時間を1分にする能力。

よって上述の話も体感時間は12時間だが実時間は12分という信じられない体験をした。


 人間の街はコバルという少年に案内された。

私の住んでいた街では料理というものは存在しない。

大体、動物の丸焼きが主流だ。

もちろん、調味料というものは無い。

しかし、ここには見たことのない食材を使ったいろいろな料理を見ることが出来る。

私は目にするもの片っ端から食べた。

どれも美味い。


 パンやライスも美味かったのだが特に美味かったのがラーメンという代物。

コバルと言う少年が異世界から持ってきたものらしいのだがそれがメチャクチャ美味い。

醤油味や塩味、味噌味や豚骨味、ピリ辛胡麻味(担々麺のこと)、海老味や咖喱(カレー味、多種多様だ。

こんな美味しいもの食ったことがないのだ。


コバルは

「こんなに喜んでくれるとはありがたい。

()れてきた甲斐があったよ。

料理もそうだけど人間はあらゆる知恵を使って文化を発展させてきたんだ。

ここにある魔法道具なんかもそう。

これは掃除機と言って魔法の力でゴミを集めることが出来るんだ。

人間との交流を深めればこういった君たちの村になかった便利な道具や料理を手にすることが出来る。

もちろん、人間側も竜族との戦争を望んでいる訳じゃない。

お互いに良いところをつまり情報を共有することはメリットだと思うんだ。

簡単には結論は出せないと思う。

ここに滞在している時間、そして村に帰ってからの時間よく考えて欲しい」


 私は人間がこんな便利な生活をしていたとは知らなかった。

それに比べて竜族はかなりみすぼらしい暮らし。

私は人間を甘く見ていたのだ。

もちろん誇り堅き竜族の暮らしを捨てる気は無い。

しかし、竜族の暮らしを堅持しつつ人間の文化を取り入れることは可能だ。

いや、そうすべきだ。

我々は勝手に人間は劣っているものだと思っていた。

偏見を持っていたのだ。

人間は力は弱いが、知識で竜族を上回る生活をしていた。

我々は知識も人間を上回るものを持っていると思う。

事実、紹介された道具のほとんどの原理は理解できる。

しかし、力が人間よりあるので知識を使う機会が無い。

いわゆる宝の持ち腐れだ。

我々は人間よりも遙かに頭の良い種族だ。

しかし大抵のことは力業でなんとかなる。

だから知識を利用することは一顧だにしなかった。

人間の知識を利用する力に関心をしていた。

我々にない発想なのだ。


 私はこれらの経験を村のみんなに話そうと思う。

最初は半信半疑だろうが必ずや説得する。

人間の世界は素晴らしいものだと。

人間との交流は素晴らしいものだと。

幸いエグザが窓口になってくれるそう。


 コバルはと言うと他の竜族に出会う旅に近々出るそう。

そうエグザさんは言っていた。

本人はまだ知らない。

私にも内緒にしておくように言われた。

大丈夫、我々は必要以上のことはしゃべらない種族だから。

それにしてもどの属性の竜族に会いに行くのだろうか。

また、私と同じパターンなのだろうか。

同じパターンだとするとなんとも寒い出来事になるような気がする。

とにかく今はコバルとそのパーティにご武運を祈るばかりである。




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