竜族
ダンジョンの探索を一通り終えた俺は再びダンジョン前の広場に着いた。
たった1時間のダンジョンの探索。
トラップもなければ命の危機を感じるモンスターもいない。
何の面白みもないダンジョンだった。
その娘とを俺はダンジョンから出てきた少女に聞いてみた。
「そんなの当たり前じゃないですか。
ここは私の寝床なのですよ。
そんな、トラップや命の危機のあるモンスターが住んでいるところで寝れる訳がないじゃないですか」
至極もっともな意見だ。
俺は改めて彼女の素性を聞いてみた。
彼女は
「私の名前はフィラー。
今は人間の姿をしていますが元の体はあなたたちよりもはるかに大きいドラゴンです。
しかし元の巨体ではいろいろと非効率なので今は人間の体に擬態しています」
俺は何が非効率なのかを聞いてみた。
彼女は
「それはもう食事です。
巨体のままだと大量の食事が必要です。
しかし人間の姿をしていればエネルギーもそう使わないので人間の食事の量で事足りるのです。
だから私以外の竜族も人間の姿をしています」
俺は人間の姿をして暮らしているのだったらなぜ人間の街で暮らさないのかと彼女に聞いてみた。
彼女は
「昔から人間と竜族には確執があります。
我々は人間とは殺し殺されの関係。
私もずいぶんと人間を殺しました。
しかしこれはやむにやまれぬ事情です。
私自体平和主義なので出来れば人間を殺したくはないのですが人間はドラゴンを見るとしきりに殺したがる。
それ天災だ、それ厄災だとね。
私から人間を殺そうとしたことはありません。
全て正当防衛です。
それと人間の中にはスキルアップだと称して我々を殺そうとする人たちがいるそうです。
我々にはたまったものではない。
私たちはとにかく静かに平和に暮らしたいのです。
だから人間の街では暮らせないのです」
俺はなるほどと思った。
それと同時に疑問に思ったことを聞いた。
それは俺が人間ではないことを即納得したこと。
人が良いのかどうか知らないが信じすぎだ。
それを彼女に聞いてみた。
「あぁ、それはよく見れば分かりますよ。
最初に出会った時は私もパニックになって分かりませんでしたけど、よく見るとあらゆるステータスが振り切っていますから。
他の人たちは違いますけど。
私たち竜族はステータスを見る能力があります。
私はあなたみたいなこんなステータスを見たことがありません。
私が知っている限り最強のステータスです。
もちろん私も敵うことが出来ません。
それにあなたはいい人そうだし神様だというなら私は信じます。
ちなみに私は人の心も読めるのであなたに邪念がないのも分かっていますしね」
俺はここまで話を聞いてピンときた。
俺は神様見習いだ。
この世界に来たのも神様になるための修行のためだ。
ここに来たのも同じことだとエグザは言っていた。
何しろ神様になるための修行だ。
普通の修行の訳がない。
そういえば善行ポイントがどうのこうのとか言っていたような気がする。
つまりここで善行ポイントなるモノを貯めなければならない。
善行ポイントとは文字通り善行をすることでたまるポイントのこと。
じゃぁここでの善行とは何か。
人に優しくすることはもちろん大事だがそんなことで修行が完了するとはとても思えない。
普通の善行レベルではないはずだ。
(もちろん、普通の善行もかなりやっています)
ではここで課せられた課題は何か。
この世界はあらゆる種族が平和に暮らす世界。
しかし、竜族と人間との確執は未だに残っている。
つまりここで課せられた課題は竜族と人間との確執を無くすことだと俺は直感できた。
俺は彼女に
「まずは人間のことを理解して欲しい。
俺はそのためにここに来たんだ。
我々も竜族の人たちの偏見を無くしていきたい。
竜族と人間とのわだかまりがなくなることが俺の希望だ。
みんな平和に暮らせる世の中が1番だ。
俺はそれを望んでいる。
まずは君たちのことについてもう少し詳しく聞かせて欲しい」
と彼女を説いた。
彼女は
「神様の言うことだからしょうがないわね。
さて何から話そうかしら」
と切り出してきた。
どうやら緊張はほぐれてきたみたいだ。
敬語からため口へと変わっている。
彼女は続けて
「私は炎の洞窟から生まれた炎竜。
何百年と暮らしてきたわ。
今では炎竜の長をやらしてもらっている。
竜には5種類がいて私のような炎竜、そして氷竜、水竜、雷竜、風竜といるわ。
それぞれの属性に基づき5つのコミュニティが存在するの。
さっきも言ったとおり私は炎竜の長。
竜族と人間との和解が必要ならば人間の方は分からないけれど私も含めて5人の竜族の長を説得する必要があるわ。
それは大変なことだと思う浮けどとりあえず私はあなたのことを信用するわ。
あなたが連れている人間のこともね。
後、炎竜の特性については私たちが暮らしている村に来ると良いわ。
目で見た方が早いだろうし。
とにかく今日はもう遅いからここで寝て下さい。
大丈夫、私はあなたたちを襲うことはもうありませんから。
初めから襲う気もありませんが。
ちなみに私の寝床で寝られるといろいろと具合が悪いのでこの広場で野宿して下さい。
幸いあなたたちはその一式を装備しているみたいですしね」
そう言うと彼女は洞窟の中に入った。
洞窟の中はこれからの時間私たちには出入禁止らしい。
明日には俺たちは炎竜の住む村に行くことになる。
どういう所なのかまだ分からないがワクワクしてきた。
俺は眠る必要性がないのでみんなを寝かしつけてから明日どうなるのかを妄想しながら夜を楽しもうと思う。




