温泉
今日は久しぶりに午後まで何もやることはない。
体術の師匠であるエグザが所用で外出しているからだ。
かなり慌てていたが何があったんだろう。
ここでエグザのことをもう一度おさらいする。
エグザは俺の属するギルドの案内係の女の子。
女の子と言っても20歳過ぎているらしいが見た目は俺と同じ10歳ぐらいに見える。
案内係とはギルドに依頼に来たクエストを冒険者たちに振り分けるのが仕事。
時々エグザは冒険者に対して
「まだあなたには早いわよ。
このクエストをしたいならもう少し修行しなさい」
と諭している。
ちなみに俺がやるクエストはギルドの中でも最上級のクエストらしい。
最近、俺が知ったことだ。
ギルドに所属する冒険者はみんなエグザに従順だ。
彼女がマスコット的存在というのもあるが実は体術の達人だと言うことがみんなに知られている。
だから俺以外口答えする人がまずいない。
ていうかエグザがみんなのクエストに同行した方がいいんじゃないかとも思う。
そういえばここには行ってギルド長に会ったことがない。
そのことをギルドの連中に聞くと皆、口を閉ざす。
誰かから口止めをされているようだ。
そんなことを考えているとどうやら昼になったみたいでエグザが帰ってきた。
エグザはかえって来るなり俺の部屋をこじ開けこう言った。
「今日は夜にクエストよ。
いつものメンバーでいつもの場所に集合よ」
「いつもの場所っていつも違う場所に集合なのに何処に集合するんだよ」
と俺が口答えすると
エグザは
「うるさいわね。
集合場所はここに書いてあるからそこに行きなさい。
7時厳守ね」
そう言うとササッと地図を書き俺の部屋に置いていった。
俺はそれを見るとびっくりした。
かなり正確な地図だ。
それを今白紙の紙にほんの数秒で書いたのだ。
俺はこの人のすごさを改めて知った。
俺はその集合場所に少し早く着いた。
その場所にはいつものメンバーが待っていた。
いつものメンバーとは
女剣士、ソーキラ、
男武闘家、パンキック
女勇者、カレアラ
彼女たちは全て見習いだ。
しかし、彼女たちは遅刻はしないまでもいつもぎりぎりに来るのだが。
そしてそこになぜかエグザがいた。
エグザは
「もうここに来て1年になるのね。
今日はその記念にあなたをお祝いしてあげる。
いわゆるサプライズというやつよ。
本当は一年ちょうどにやりたかったんだけどいろいろと立て込んでいて遅れたけど今日はお祝いよ」
俺がここに来て1年と半年になる。
遅れるにも度がある。
もっと早く祝って欲しかった。
でも正直嬉しい。
前世でもこんなことがなかったから。
エグザは
「サプライズに用意したのは温泉よ。
あなたの(前世)国では温泉が一杯あると聞いたわ。
そこはこの国で最高の温泉地。
そこでゆっくりするといいわ。
今日は貸し切りだから」
と言った。
エグザは午前中に忙しかったのはこのためかと俺は思った。
続けてエグザは
「いろいろと立て込む話があるからあなたは女湯に入ってらうわ。
これは異論を認めないわよ」
俺は「え〜っ」と困っているとパンキックは
「女湯なんて子供の時しか入れないんだ。
存分に楽しめよ」
と笑顔で答えてきた。
パンキックは1人の方が気が楽だとも言った。
パンキックのその一言で俺の女湯行きが決まった。
女湯に入ることも問題なのだがもう1つ問題がある。
俺は神様見習いだ。
そのため神様からもらった体は飲食が出来ない体になっている。
飲食が出来ないと言うことは排泄器官がない。
そして性器も存在しないのだ。
性別は見た目だけ。
裸になると一目瞭然なのだ。
一度裸になると人間でないことが分かってしまう。
俺はどうすればいいのかと考えていたら誰よりも先に入って大事な場所を隠せばいいことに気づいた。
それで俺は温泉に入る時真っ先に温泉に飛び込んだ。
まるでエロガキのように(俺に下心はないが)
そして他のメンバーが入ってくるのを待った。
エグザは
「本当にエロガキね。
下心見え見えじゃない。
顔を赤くしちゃって。
って冗談はここまで。
大事な話があるからこっちを向いて。
向こうを向いていたら話が出来ないから。
大丈夫、他の2人には待ってもらっているから」
それでも俺は恥ずかしくてエグザの方に顔を向けないでいた。
エグザは
「もういらつくわね。
いいからこっちを向きなさい」
と強引に俺の顔を向けた。
俺は驚いた。
エグザは俺と全く同じで体に何も付いていない。
エグザは
「お察しの通り、私は神様よ。
あなたと同じね。
正確には神様見習いと言うべきなのか。
そしてあなたの監視役でもある。
あのエロじじいもといあなたをこの世界に転生させた神様がいるでしょう。
私はその人の部下になるの。
まさか男が転生されるとは思っていなかったけど」
と言うとエグザがため息をついた。
エグザは続けて
「あなたにはこの世界でやってもらわなければいけないことがあるの。
本物の神様になる修行ね。
次に示すクエストがそれに当たるのだけど。
それはお楽しみに。
ちなみに私たちが神様見習いであることはあの3人は知っているわ。
何しろ1番弟子だしね。
ていうかギルドの連中はみんな知っている。
そのことを知らないのはあなただけ。
ギルドの中だけだけどね。
後あなたが知りたがっていたギルド長は私だから。
だって見た目子供のギルド長だなんて示しが付かないでしょう
だからこの2つのことはギルドの秘密になっているの。
やっとあなたの実力が規定に達したからこのことを話したんだけど明日から大変よ。
一応あの3人と一緒に行動してもらうからね」
俺はこの後存分に温泉を楽しんだ。
ていうか開き直った。
前世では体験できなかった貴重な体験をさせてもらいました。
師匠、ありがとうございます。




