自称彼女
このジャンル初執筆です。
お見苦しい点もあるかとは存じますが、読んでいただけますと幸いです。
僕には秘密がある。
いや、なにも好き好んで隠しているわけではないのだが。
この前から、何故かいつも誰かに見られている、そんな気がしてならないのだ。
しかし確証はないので、友達に話したとて、自意識過剰と笑い捨てられるだろう。
でも僕にとっては、こんなに強い予感は今までにない。
正直言って、なんと言うか、危機感のようなものを感じる。
ある日のこと。
僕が学校に行く、そのときにも常に感じているこの感じ。
なんだろうか。
後ろから見られている気がする。
ふと振り返ると、クラスの女の子と、その他同級生がいるばかりで、特におかしいところはない。
僕は前を向くと、改めてまた歩き出した。この感じは気になるが、気にしている暇はない。今日は宿題をやり損ねたので、授業までに終わらせねばならない。
僕は若干急ぎ足で学校へと向かった。
僕は特別に早い時間に来ているわけではないので、教室にはすでに何人かの人が登校していた。
僕は自分の席に着くと、かばんの中から教科書を取り出し、机の中に入れた後、宿題を別で取り出した。
後は丸付けするだけだが、解答の文字が細かいせいで時間がかかる。間に合うといいが。
僕は宿題を始めた。といっても、順番に丸をつけるだけだ。簡単作業である。
しかしその間にも、なにか視線を感じる気がする。振り返ると、そこには先ほどの女の子含むクラスメイトがいた。
気のせいだ、僕は気を取り直し、再び机に向かった。
再び発生した違和感には目もくれず。
結論。授業には何とか間に合った。
先生は、提出率の低さに唖然としていたが、僕は出せたのでOKだ。
出せたのはクラスで2人だけ。ものすごい提出率だ。関心意欲が思いやられる。
というか学校にくる気があるのか?
いつもよりやる気のなくなった先生の授業は、いつもより面白くなかった。
おかげで僕は余計にはっきり、視線を感じることが出来た。
後方からの強烈な視線。はっきり言って怖い。なんだか貫かれて死んでしまいそうな視線だ。
振り返る。いつもどおりのクラスがあるだけだ。
特におかしいところはない、僕は自分にそう言い聞かせた。そして、板書に戻った。
生きた心地がしなかった。
昼休み。トイレの個室にいるときさえ、何らかの気配を感じる。
見回すが、誰もいないし、無論カメラなどもない。
僕は、落ち着け、と自分に言い聞かせ、昼休みを過ごした。
家に帰るときも感じている、視線。
何故かどこに行ってもついてくる。誰だろう、と振り返っても、例の女の子が…あれ?
あの子、いつもいないか?
家に入れども、寝ようとも、常に感じているこの気配。
これが僕の日常。
そしてそれを、先日親に相談したところ、ちょうどいい、お父さんが単身赴任する話があったんだ、弁当とか自分で作るなら別に来てもいいぞ、といわれたので、学校を変えることになった。
今住んでいるところは東京で、引越し先は広島だ。そんなところに単身赴任とは、お父さんも大変だ。
という訳で、僕は引越しを決意した。しかし、友達がシリアスになるとろくに話せないので、友達との関係を壊したくないということで、両親に頼み、直前まで明かさないということにした。
早速そういうことで電話をかける。学校は、残念がりながらも承諾してくれた。
これで例の気配は消えるはず、そういって、刺すような視線を感じたまま、僕は寝た。
今日は視線を感じているが快眠だ。
そして上記の、まるでテンプレートのように同じ日々が過ぎていった。1日たりとも気配が消えた日はなかった。
そして、発表の日。その日は引越し前日だ。
先生から、自分で言いますか、と確認されたが、いえ、お願いします、と先生から発表してもらった。
しかし予想外だったのはその後のことだ。いつも振り返ると後ろにいる女の子、その子も引っ越すというのだ。
向こうは一人暮らしをはじめるらしい。どんな中学生だよ。
「彼と彼女は、共に広島の@@中学校への転校となります」
先生が告げた言葉に、僕は大変驚いた。
偶然にもほどがある。これはもしかして…
僕はその女の子を、無人の教室に呼び出すことにした。
この教室なら、何かあっても職員室が近いから助けを呼ぶことも出来るだろう。
「突然…どうしたの?ミライくん」
彼女は何故か大変照れている様子。なんでだよ。
「ああ、なんか同じ中学校に、タイミングも同じに転校って珍しいから、なにかあったのかなと」
僕が聞いた瞬間、彼女はとてもうれしそうな表情になった。
「そうなのっ!!あのねっミライくんが転校するって聞いて、それはイヤだと思ったの!
で、親に相談したら、1人暮らしするならいいぞって!!許可出してくれたの!
ミライくん、一生ついていくね!」
僕は目の前で何が起こったか理解できなかった。そして、数瞬後、僕は我に返った。
そして、自分の考えに確信を持った。
僕は空恐ろしくなって、一歩後退したのち、先生に言わなくては、と思い、反対側の扉から出ようとした。
しかし彼女は、まるで先を読んでいたかの様だった。扉には鍵がかけられ、うんともすんとも言わなくなっていた。
後ろで声がする。
「ミライくん、怯えなくてもいいんだよ?
私が、ミライくんのこと、守ってあげるし、構ってあげるよ?
…24時間、365日。」
僕はどうやら顔を引きつらせたらしかった。彼女は、えー?とでも言いたげに、首を傾げた。かわいらしい動作が、今となっては恐怖しか生み出さない。
彼女によって閉鎖された密閉空間は、もはや誰もこないだろう。僕は頭の中が早くも真っ白になってきていた。
そして僕は、この教室の立地を思い出した。この教室は、僕のクラスルームの真上、職員室の2つ隣である。叫ぶか音を出せば、誰か助けにきてくれるかもしれない。
僕は一抹の望みをかけて、鍵のかかった動かないガラス板を叩きまくった。
割れんばかりにこだます音。しかし期待に反して、反応してくれる人は見当たらない。
僕は後ろに気配を感じ、勘で横に飛びのいた。
すぐ横をカッターナイフが通過した。
ガラスに当たって、嫌な音を立てながら折れるカッターの刃。
もう少しで当たるところであった。危ない。
「どういうつもり?」
僕はなるべく刺激しないように言ったつもりだが、どうしてか彼女の神経を逆撫でしたらしい。彼女は、まるで殺人者のような、冷たいような、それでにて熱いような視線で返答した。
「私はっ…ミライくんのことが好き…っ
あなたが私のこと好きじゃないなんて、理解できないっ!」
ぜひ理解してくれ!と視線で訴えてもすでに彼女は暴走状態。手に負えない。
そして教室程度しかないこの部屋では、いつか僕は刺し殺されそうだ。
せめて鍵さえ手に入れれば…そのためには、一瞬でもいい、彼女の動きを止めないと…
しかし都合の良い道具がこの放置教室のなかにあるわけがない。僕の体力は次第に削れていき、そして、両者が動作を一時停止した。
「ミライくん、ねぇ、いつまでも一緒にいようよ?
そうしたら私も、こんなことしなくて済むの」
「お前が勝手に好きになったんだろ…
僕は君の事が好きじゃない。そして諦めてくれ」
彼女のハイライトの失せた眼は、何度見ても正気度が残っている様には見えない。
僕は徹底抗戦を宣言した。そしてまた回避行動の応酬が始まった。
数分後、僕にチャンスがやってきた。
彼女が全力疾走で突っ込んできたとき、回避して彼女が突き当たった先がコルクボードだったのだ。
当然、すぐには抜けない。本当に一瞬だが、チャンスはチャンスだ。
僕は隙をついて、彼女のスカートのポケットから鍵をとった。
彼女は、それを見て一瞬顔面蒼白になったが、次の瞬間には再びの全力疾走で、僕に迫っていた。
無論、学校の鍵だ。すぐに回るはずがない。
僕は、後ろから貫かれたような感覚を感じた。
ふと前を見ると、貫通した刃が、僕の目に映った。
すぐに腹部に鋭い痛みを感じ、僕は立っていることも不可能になった。
「これで、あの世で一緒になれるねっ!
これからもよろしくね、ミライくん」
死に際に見えた彼女は、とびきりの笑顔をこちらに向けた後、ためらい傷も作らずに手首の血管を切った。




