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めでたしめでたしな『浦島太郎』

入れるはずだった話が入らなかった…!

四話で終わりません。

次にちょっとおまけとして入れます。

それで完結!

   「結婚しよう、茜」


 

 村に帰ってきて皆に詰め寄られ怒られ怒鳴られ泣かれ責められ殴られ蹴られた太郎はボロボロになった姿で私にそう言った。



 死んだと思っていた太郎が帰ってきて、村中は大騒ぎになった。

 私は太郎が竜宮城に行っていたことを知っていたので「帰ってきた」という感想で済んでいるが、村の皆はそんなこと知らないので「生き返った!?」と驚愕している。

 「帰ってきた」と「生き返った!?]の衝撃の違いは比べるべくもないだろう。

 

「太郎!??」

「死んだんじゃなかったのか!?」

「……もしかして幽霊…」


「いや、俺生きてるから。勝手に殺すな」


 このままだと幽霊に断定されそうだった太郎が口をはさむと、皆が一斉に太郎の足を見た。


「……あるな、足」

「ありますね」

「そうだな」


「「「「「………………………………」」」」」

「……え?」


 あとは先ほど言った通り。

 詰め寄られ怒られ怒鳴られ泣かれ責められ殴られ蹴られていた。

 三年も行方をくらましていた理由は、

『あの日海に飲み込まれてしまったんだが、運よく他の浜辺についた。そこで俺を見つけた人が看病してくれていた。怪我が結構ひどくて治るのに時間がかかり、その人に恩返しもしていたら三年もかかってしまった』

 と、上手いような下手なような作り話を話していた。

 まあ、村の皆はそれで納得したらしい。

 その後は『太郎が帰ってきた』祝いで、ささやかな宴が開かれた。


 そして、その宴が終わって太郎が「茜、話したいことがある」と私を連れ出して言ったのが冒頭のセリフだ。


「……は?」

「だから、結婚しよう」

「…………酔ってるの?」

「素面だ。俺はさっきの宴で酒は一滴も飲んでいない」

 そうだった。

 私は宴の前に太郎と話す時間があったので、遠慮して(ボロボロな)太郎の様子を離れて見ていた。

 主役であるはずの太郎は「皆に心配をかけたお詫びに今日は俺が酌をする」と言って皆の盃に酒を注いでいた。

 皆がお前も、と酒を進めても今日は素面でいたいから、と断っていた。

 何故飲まないのだろうと疑問に思っていたので、太郎が素面なのは当然知っている。

 

 しかし、今太郎はなんと言ったのだろうか。


 『結婚?』

 結婚ってあの?


 私は自分の太郎の関係について整理する。

 

 私は太郎が恋という意味で好きだが、太郎は家族としての意味でしか私を好いていないはずだ。

 ずっと一緒にいて太郎からは私にときめきを感じたり、欲情したりする様子は見られなかった。(私はドキドキしたりふとした瞬間にときめいたりしていたのにもかかわらず、だ)


 なのにどうしてこんなことを言い出したのだろう。


 そう考えた私は一つの答えを導き出した。


 もしかして太郎は乙姫が好きだったのではないだろうか。

 でも、その想いを振り切って帰ってきた。

 乙姫は絶世の美女だと聞く。

 彼女を見た後で他の娘に恋などできなくて。

 でも両親を安心させるためにも結婚して、家庭を築きたい。

 ずっと一緒にいる私とならば恋はできなくても、愛のある家庭を築けると考えたのでは。


 ……きっとそうだ。

 だってたった三日間で太郎の私に対する想いが『家族愛』から『恋』に変わるはずがない。


 そう断定した私は自分の中にふつふつと怒りが湧いてくるのを感じた。


「……らい」

「茜?」

「太郎なんて大っ嫌い!」

「え!?」

「私の気持ちも知らないで!私を都合よく使わないで!」

「何言って……」

「そんなんだったら、他の人と結婚する!!」

「は!?」

「私だって求婚してくれる人くらいいるんだから!太郎はずっと独り身でいればいいんだ!馬鹿!!」

「ちょ、待てよ茜!!」


 太郎の制止も聞かずに私はそこから走って逃げた。




「ぐすっ」

 今まで大の苦手であったはずの海辺に座り、私は自己嫌悪に陥っていた。

 さっきは思わず太郎を責めてしまったが、太郎が乙姫様を諦めなければいけなくなったのは私のせいだ。

 私の言葉が太郎を縛りつけた。

 太郎に望む道を諦めさせたならば、私だってそれくらい我慢すべきかもしれない。

 

 私に恋する太郎じゃないくらい。


 よく考えたら私は大好きな太郎と結婚できるし、別に悪い話でもない。


 ……謝ろう。

 そして提案を受け入れよう。


 そう決めて、落ち着いてから太郎に話そうと呼吸を整え始める。

 

「茜」


 ビクッ


 後ろから投げかけられた声にとても分かりやすく反応してしまった。

 でも、よりによってこのタイミングじゃなくてもいいと思う。


「ちょ、ちょっと待って、」

「待たない」


 太郎は私の言葉を聞かずに、回り込んでくる。

 恐る恐る太郎を見た私は息を呑んだ。


 太郎の目には激しい怒りが宿っていた。

 

 何を言われるだろう。

 お前のせいで俺は乙姫への想いを諦めなくてはいけなかったのに?

 それとも…


「こんな遅くに一人で海へ行くなんて危ないだろう!馬鹿!!」

「……え」


 まさかの言葉に目を見張った。

 そんな私を気にせず太郎は怒鳴る。


「村の皆に聞いたけど茜が海に来れるようになったのは今日が初めてだったんだろう!?ただでさえ夜の海は危ないのに昼の海でさえ一度しかきていない茜が一人でなんて!何を考えてるんだ!!」


「……太郎、怒ってないの?」

「怒ってるだろ!どう見ても!」

「そ、そうじゃなくて!私との約束のせいでおと……」

「おと?」

 ……やばい。

 動揺しすぎて余計なことまで口走りそうになった。

 太郎が目で続きを催促しているのは分かるが言うわけにもいかない。

 私はだんまりすることに決めた。


「茜」

「……」

「茜」

「…………」

「……はあ」


 何度呼びかけても軽く睨みつけるだけの私に太郎も諦めたらしい。

 でも、溜息を吐いてから私を厳しい目つきで見る。

「茜、海に慣れてないどころか最近まで一人で海に近づけなかったお前が一人で夜の海に行くなんてどれだけ危ないことか分かるか?」

「……なんとなくは」

「それさえもなんとなくでしかわからないのに行くなんて危険極まりない。俺が茜をここで見つけた時は肝が冷えた。絶対にもうしないように。俺だけじゃなくて皆心配する」

「……はい」

「よし」


 太郎は私の頭をこれでこの話は終わりというように撫でた。

 私はほっと息をついた。


「で、さっきの話だが」


 ビクッ


 ……ついた瞬間に話を切り出され、またわかりやすい反応をしてしまう。

 よし、今度もだんまりで行こう。

 で、太郎が諦めたら私からまた話を切り出して結婚しよう。

 そう決めた私だったが、聞こえてきた太郎の言葉にその決定はすぐさま消し去った。


「茜は『私の気持ちも知らないで』と言ったが俺は知ってるよ。茜、俺のこと好きだろう?」

「……は?」

「『都合よく使わないで』とも言ったが俺は茜を自分の都合よく使った覚えもない」

「は!?ちょ、ちょっと待ってよ!」

「なんだ?」

「太郎、私の気持ち知ってたの!?」

「知ってたよ」

 

 『ボケボケな太郎は私の気持ちには気づきもしない』

 そう思っていた私には衝撃だった。

 しかし、私の気持ちを知っていたとなるとやはり……。


「やっぱり私を都合よく使うつもりだったんじゃない!」

「なんでそうなる!?」

「だって太郎は私のこと好きじゃないじゃない!!」

「好きだぞ?」

「それは家族としてでしょ?」

「いや?女としてだけど」

「…………は?」


 私はぽかんと間抜け面を晒した。


 太郎が私のことを好き?

 女として?


「嘘だ!」

「嘘じゃないよ!なんでそうなる!?」

「だって太郎は私にドキドキしたり、欲情したりしたことないじゃない!」


 もし太郎がそういう気持ちな一度でもなったことがあるなら私は絶対気づく。

 ずっとそういう目で見てほしくて、いつだって気にしていたから。


 私は目にいっぱいの涙を溜めこんで太郎を睨みつけた。

 太郎はそんな私を見て首を傾げた。


「ドキドキしたり、欲情したりすることが恋ってわけではないだろう?」

「……え」

「俺は茜と一緒にいるとすごく安心する。茜とずっと一緒にいたいと思う。茜のもとに帰りたいと、茜に約束したとか言われたからだとかじゃなくて、俺がそうしたいと思う」

「…………」

「茜の『恋』とは違うけど、俺のだって『恋』だよ。この気持ちが意味を決めるのは俺で、茜じゃない。俺は茜が好きだ。だから結婚したい。それだけだよ」


 太郎の『恋』。

 太郎の『好き』。


「……本当に?」

「ああ」

「本当に太郎は私に恋してるの?」

「本当だよ」


 夢みたい。

 私は太郎に女として好かれていないという問題について後回しにしてばかりだった。

 それよりもどうしたら太郎がこの村に帰ってきてくれるか、そのことに頭がいっぱいだった。

 

 太郎が帰ってきた。

 太郎が私に恋してる。


 なんだか自分に都合の良い夢を見ている気分だ。

 でもこれは現実だ。


 嬉しい。


 嬉しい嬉しい嬉しい!!


「太郎!」

「うおっ!?」

 私は感極まって太郎に飛び掛かるようにして抱き着いた。

 

「太郎大好き!」

「っ!!お、れも好きだよ」

 私は太郎の胸に自分の頭を押し付ける。


 すると、太郎の胸が激しく鳴っていることに気が付いた。

 さっき太郎の『好き』はドキドキしたり欲情したりすることじゃないと聞いたばかりの私は困惑して、顔を見上げて太郎の顔を見た。


「!見るな!

「……見ちゃった」


 太郎の顔は赤く染まっていた。


「っしょうがないだろ!この前までまだ女の子だった幼馴染がなんか大人な女になってるんだから!というか俺が茜にドキドキしたり欲情したりしなかったのもそれが理由でっ」

 聞いてるうちに私の顔は赤く染まった。

 そしてさらに嬉しくなっていく。


 今、私は最高に幸せだ。

 

 太郎の顔を見ながらニコニコと笑う私に、見るなと恥ずかしがっていた太郎も諦めて、私を抱きしめ返してくれた。


「太郎、愛してる」

「……俺も。愛してるよ茜」







 『浦島太郎』

 この物語をハッピーエンドだと思う人はおそらくいないだろう。

 しかしこの『浦島太郎』は、私たちの物語は間違えなくハッピーエンドだ。

 だから、言おう。

 この物語の、終わりの言葉を。

 だってこれから始まるのは、ただの漁師とただの村娘である夫婦の幸せな物語だから。


 

  「めでたし、めでたし」



ありがとうございました。


余談

 毎日投稿ってホントすごい。たった三話で撃沈しました。うん無理。

 している方々、ほんと神。

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