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刹那の記憶  作者: りりぃ
第6章 初めての
17/112

おみやげ。

エインは白い軍服のような制服に身を包んでいた。


私の視線に気がついたのか、エインはこっちの方に顔を向けた。


「記憶はまだ何もないんだろ?今日 俺は記憶の一つを届けに来たんだ。」


今まで変わらない笑顔だった花織の顔が一気に変わった。


「記憶?へぇ…。」


そう言ってまたいつもの顔に戻った。

エインは真剣な顔つきになった。


「俺が持ってきた記憶は、おそらく一番辛い記憶だ。だからまだ見ない方がいいかもしれない。」


(一番辛かったかもしれない記憶……。)


私が悩んでいると、エインは優しくわらった。


「すぐ見なくてもいいんだぞ。ウェスタが、真王を目の前で失った時の記憶だからな。まあ、俺はその時はもう生きてなかったから状況はわからないが。」


そう言って頭をかく。


「俺たちは、この記憶を覗くことができないんだ。これは記憶の持ち主でないと見ることができない。」


「でも、私はウェスタではないわ。」


「お前自身がウェスタではなくとも魂がウェスタと同じなんだ。

記憶は魂でもある、記憶をなくしてしまえば魂は壊れてしまう。」


魂が一緒。

そしてたどる道も一緒。

なんて皮肉なのかしら。


「とりあえず立ち話もなんですから、お部屋へ行きましょう。」


ユリウスはエインに提案し歩き出した。


部屋の椅子に腰掛けるとエインが口を開いた。


「『もう繰り返したくはない。

何度 僕は彼を失えばいいんだろうか。


この悲劇は運命へ変わろうとしている。そして、繰り返してしまうと運命は、決して変えることのできない必然へと変化する。


ねぇ、僕の傲慢が生んだ悲劇なのだろうか。

彼のそばにいることを望んだ僕への罰なのだろうか。

いや違うね、そばにいるだけでは飽き足らず、彼が欲しいと思ったからか。』


彼女、いやウェスタはそう言ってよく嘆いていた。」


エインは悲しそうに言い、ユリウスもアルムも悲しそうな顔だった。


「その記憶を見れば何かが変わるの?」


「抜け出す道を見付け出すことができるかもしれない。」


愛しい人を失った悲しみ。

何度も繰り返し起こる悲劇。


「見るよ。繰り返してはいけないはずだもの。」


ユリウスは苦しそうな顔だった。

いや、ユリウスだけではない 。

エインもアルムもだった。


エインが手渡したのは鉱物だった。


「フォシスだ、法石ともいう。ウェスタ専用のものだが、お前が見たいと思うなら記憶が流れ込むだろう。」


手のフォシスに意識を集中する。

そうすると、ほのかに光が灯り、一気に輝き出した。

私はその輝きに目が眩んだ。

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