へんか。
ー誰かの声がする…その声を聞こうと耳を澄ます。
「***が***でも、僕がすぐそばにいれば怖くないだろう?だって手を伸ばせば僕がこうやって***の手を握ってあげるのだから。」
何処かで聞いたことがあるような随分と懐かしい声だった。
彼はクスクス笑って手を握っている。
(ああ、この人は誰だっけ?)
もう少しで出そうな気がしたが出てこない。
ガバッと体を起こす。部屋の中は暗かった。
(あれ?ここどこだろう。私の部屋じゃない。)
寝ぼけた頭で考えていたら、コンコンと部屋をノックする音がした。
「だあれ?」
私が聞くと少しためらうように声がした。
「私です。ユリウスです。」
そういえば、ユリウスとアルムに城に連れてこられたんだっけ。
考えているとまた扉の向こうで声がした。
「怜様にお話があります。」
また、ためらうような声だった。
私は扉を開いて迎え入れた。
「中にどうぞ、椅子にかけてお話ししましょう。」
ユリウスはおそるおそるといった感じで椅子に座った。
「で、話って?」
私が尋ねると彼はビクッとして顔を俯かせて言った。
「先ほどはご無礼な振る舞い、誠に申し訳ありませんでした。
アルムにはああやって振舞っていろと言われておりましたが、私にはもう耐えられません。」
たいして変わってないと思うが本人は相当気にしていたようだ。
「あの…別に前みたいな喋り方でいいよ。どうしてアルムはそんなこと言ったの?」
彼はバッと顔を上げて涙目で喋り始める。
「いいえっ…そんな恐れ多いことです。こんな喋り方では尚更私たちが怪しく見えると…もう少し気さくな感じにしろと言われたのです。」
たしかに気さくな感じの方が親しみやすいが、さほど変わらないし別にいいのに。
「それならそれで別にいいけど。」
私が答えると彼は笑顔になった。
「ありがとうございます。それと、夕食のお時間なので行きましょう。」
そういえば寝たせいでもう夜になっていたのだった。
「うん、行きましょうか。」
私は彼の後について廊下を歩き出した。
城には様々な人がいるようだ。
すれ違うたびに挨拶をされる。
ユリウスがチラッとこっちを見た。
「この部屋です、どうぞお入りください。」
ユリウスが部屋の扉を開くと、そこはとても華やかな明るい部屋だった。
もう花織や尚が席についていた。
ユリウスが椅子を引いて座らせてくれる。
(これはマナーが必要なのだろうか。)
あまりに豪華なので気が引けた。




