Part.02
──…麻奈美はあれから、眠ったままだ。
それでも俺は、麻奈美に毎日話しかけた。無駄だとしても…俺は続けた。
一年、二年、三年…どれだけの時間が流れたんだろうか。
「…髪、伸びたね」
「ああ…確か肩につくかつかないか、そんぐらいだったな」
気が付けば、俺は…
松葉杖をつきながらだが、一人で歩けるまでに回復して、去年ぐらいに退院してる。
今は、真琴とルームシェアで暮らしている。
…あの家には、もう戻りたくないからな。俺と麻奈美の物や、大切な物だけ持ってきた。
麻奈美が目覚めたら、あの家じゃなくて俺達と暮らせるように。
「…あ、そろそろ面会終了時間だね」
「えっ、マジかー…」
もうそんな時間か…。
今日も帰る前に、麻奈美の頭を撫でる。
「………また明日来るぞ。麻奈美」
「…じゃ、行こうか」
「…おう」
病室を後にしようとした。その時だった。
「…え?」
思わず振り返った。
…俺の服の裾を掴む手が、ベッドから伸びているのが見えた。
「…麻奈美?」
「優輝?」
「……にいちゃん…マコにい…」
「…えっ…麻奈美ちゃん…なの…?」
麻奈美は…そっと目を開いて、光が戻った瞳で、俺達を見て…
「…ただいま」
昔と同じ、元気な笑顔を見せた。