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もう一度、魔王を討つまで  作者: 空崎恵
英雄の背を追って
5/14

包囲されたって、尋問されたって仕方ないじゃないか

今の状況を簡潔に言うと、包囲されている。

右にアレーティア、左にネモ、前にアレアト。全員静かに俺を見つめている。

なんで誰も話さないんだよ!!と心の中で叫ぶ。この沈黙が辛いって!!

そう思っても、誰も話さないのが現状である。圧迫にも程があるって.....。

なんでそんな冷たい目で見るの?!怖い!!

そう思いながらも、やはりこちらが何かを言わないと始まらない気がして


「.............俺、なにかした?」


と言っておくことにした。正直、俺からしたらさっきまでただ戦っていただけである。


「.........恐ろしいほど強くて、美しいのね(戦い方が)......カタルシスは......」


深淵から発せられたような声に、褒められているにもかかわらず背筋が凍った。

だからやめようよ!!そんな冷たそうな目で見るの!凍っちゃうって!!!


「......正直、カタルシスみたいな強い人は初めて見たんだ。衝撃を受けるのもおかしくないよ」


ようやく火のように暖かい声でアレアトが語る。あと少し遅かったら、本当に凍っていたかもしれない。あぁ、暖かい.....


「本当にそうよ!!なんなのよあの戦い方は!!!」


パンッと足を叩き、アレーティアが叫ぶ。本当にこの人は感情の起伏が激しいな.....


「ネモ!!ご飯にしましょう!!!話はその間でもいいでしょう!!」


「わ、わかった.....」


アレーティアの圧に押され、ネモはビクッと震えながらも夕餉の準備を始めた。このパーティの食事担当はネモなのか.....


数分もしないうちに、いい匂いが拠点の辺りを漂い始める。この匂いからしておそらくはシチューだろう。空気の冷える夜にはピッタリだ。頃合いのときにトライポットの周りに集まる。ネモが皿にシチューをよそいでみんなに渡していく。手渡されたシチューは身体の芯まで暖かくなりそうなくらい、ほかほかと湯気か出ている。


『いただきます!!』


口に運んだシチューはとろけるほど絶品で、スープを掬う手が止まらない。1分にも満たない速度で平らげ


「ネモ!おかわりを頼めるか?」


と皿を差し出すと


「もちろん。気に入ってくれて良かった」


と笑顔で返してくれた。


「それじゃ、尋問を始めるわね」


「尋問なのか....」


つまりははっきり答えなければならないということだ。拒否権は無い。でもそもそもとして回答拒否するようなことはない。はっきり言えばいいのだから。


「じゃあ訊くわ。あなたに戦い方を教えた人がいるなら、その人は本当に人間なの?」


前言撤回。ここまではっきり答えることが難しい質問が来るのは思ってもいなかった....!!

そもそもなんでそんなことを訊んだよ!!!


「......」


全力で答えを探す


「............」


頭の中で言葉をならべて、なんとか文を作ろうとする。


「.....................」


だが口から出てきた言葉はー


「.............................多分人間....」


これだけだった。

そもそもなぜそんなことに自信をもって言えないのかは、まずとしてこの世界には沢山の種族がいること。そして種族によっては一般的の人間種と外見の大差がないものもある。故に「こいつぜってぇ人間種だな」ってなる証拠がない限り、断言できないのである。


「......そう。まぁ、あんたの身体能力が変態並に凄いってことにしとくわ」


その言い方はなんか嫌だな.....と思いながらも、先程の質問は終わったのだと安心する。質問一発目があんなぶっ飛んだどんな事考えてたらそんな質問でてくんだってやつだったから尚更である。


「じゃあもう一つ訊くわ。あぁ、それのさっきの質問は忘れていいわ。半分冗談だし」


なんてことを!!こっちは真面目にちゃんとはっきり返そうと思考回路をフル起動して考えていたってのに...!!!

そう悔しい思いをしまいこみながら、一応で次の質問に備える。また予想斜め上から突進されても困るものである。


「どうして、あんなに優雅で美しい戦い方ができるの?これは純粋な疑問よ」


まぁ、聞かれるなら普通そこら辺だろうと考え、そこを聞かれたので安心する。理由はもちろん、魔物のボア並に突進してくる質問ではなかったからだ。


「俺に戦い方を教えてくれた師匠の教え方が、上手かったからだと、俺は思う」


それと、修行に費やした時間の長さもあると考える。ざっと10年、師匠は俺が知りたいと、身につけたいとおもった戦い方を細かく、丁寧に教えてくれた。それに、師匠がおそろしいほど強かった。そんな師匠に追いつきたくて、必死に修行した。


「きっと、いい師匠だったんだろうね」


静かに耳をかたむけていたアレアトが口を開く。俺もそうだと思う。


「そういえば故郷を出る前に、師匠がお守りをくれて......」


そう呟きながら、俺は胸元から1つのネックレスを取り出す。


「なんだかタイムペンダントみたいね」


飾りの形状をみたアレーティアがそう言ったが


「でもこれ、開かないんだ」


普通開くはずの場所が、どうやっても開かないのである。


「特殊な開き方というか....そんなものがあるのかな......?」


「多分、そうなんだと思う....」


俺はそう言ってネックレスを戻す。


「とりあえず、ここらへんで尋問は終わり。はやくシチューを食べきっちゃいましょ」


そう言ってアレーティアが鍋に寄りかかったレードルに手を伸ばす。そういえばまだ鍋には少なからずシチューが残っていた。

みんなでせっせせっせと味わないながら完食し、寝る準備をする。


「明日にはタレスティアに向かうから、みんなしっかり寝るんだよ」


そうアレアトが言い、そして1番に寝た。多分目を瞑って5秒後に。


「それじゃ、おやすみ〜」


アレーティアもそう言い残して入眠。俺も寝るかと目を瞑ろうとしたところで、ネモがいないことに気づく。


「そういえばあいつ、何してんだろ....」


みんなを起こさないよう、抜き足差し足忍び足で拠点を離れる。近くには崖があり、そこでネモは腰掛けていた


「こんなところで何してんだ?」


「星空をみてるんだ。もう数ヶ月もすれば、1000年に1度訪れる、巨大な彗星が見えるんだって」


「1000年?!そりゃこの目で拝めなきゃだな」


そんなことを話しながら、俺はネモの隣に腰掛ける。

夜空をじっと見ていたネモが、ふと口を開ける。


「.....君の師匠は、どんな人だったの...?」


「俺の...?うーん...そうだなぁ...」


腕を組み、じーっと考える。もはや家族のような人だったから、話したいことが次々に浮かんでくる。が、もっとも記憶に残っている姿を話すことにした。


「勇者の話をたくさんしてくれる人だったな」


「勇者の.....?」


気のせいかもしれないが、ネモの目が少し見開かれたように感じた。


「俺自身、勇者について興味津々だったんだ。そんな俺に沢山勇者の話をしてくれたんだ。今思えば、ほとんどが師匠の考えた話だったんだと思うけれどな。」


「たとえば...?」


「そうだなぁ。俺が、勇者だから魔王を倒せるのかって聞いた時は、『勇者だから、魔王を倒せるとは限らない。選ばれし者にのみ抜くことのできる剣を抜いたから、勇者と呼ばれるのではない。魔王を倒したからこそ、勇者とよばれるんだ。その強い意志と勇気をもって、偉業を成し遂げた存在としてな』って話してくれたんだ」


「そうなんだ.....」


「そんなお前は、勇者について何か聞いたことはないのか?」


予想もしていなかったことを聞いてしまったようで動揺を隠せずにいたが、一呼吸置いて俯いたまま


「僕はあまり、勇者について聞かなかったんだ....そんなことに興味があったなんてって思われるのが恥ずかしくて......」


と小さな声で言った。


「けれど......1度だけ父さんに聞いたことがあったんだ......」


「どんなことを.....?」


「勇者は.....勇者になったことを後悔することはあるのかって.......」


そんな視点から疑問をもつことは、おそらくはネモだけだろう。俺にはそう思えた


「.......それで、お前の父さんはなんて言ったんだ?」


「.....きっと、後悔していないと思うって。自分の愛する世界を、守ることができたんだからって......」


「....そっか.......」


冷たい芝生に寝転がり、夜空を眺める。全てを数えることの叶わない星々が、太陽の照らさない夜空で煌めく。

目を閉じる。たしかに師匠は魔王を倒した者が勇者とよばれると語った。けれど、こうも言っていたと思い出す。



『だが魔王を倒し、この世界を救った魔王は違う。あれはまさしく運命だったんだ。初めから出来上がった道を歩くかのように。それは残酷なものだ。けれど、勇者はこう思ったんだ。いくら出来上がった道とはいえ、いつかは途切れるときがくると。その先に、自分だけが歩むことのできる道をつくってみせる。と』



明けましておめでとうございます!

せっかくだし、もう1話くらい.....が今です。


自分は包囲されるなら推したちが良いと思います。それならその場で昇天することが叶うからです。


ちょっと?掘り下げ回になってしまい、はようタレスティア向かった方が良かったかなとおもってしまう自分がいます。でも前回があんな終わり方で、「ほなタレスティア行こか」にもならないよなぁって思い、結局はアレーティアによる尋問を挟んでおこうと考えた次第です。


次回は、アレアトが言ったようにタレスティアへ向かいます!おたのしみに

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