個性的な仲間がいるパーティに飛び込んで
「彼は、このパーティの中では1番新しいメンバーなんだ。あまり口を開かないけれど、それでも大事な仲間には変わりないよ」
焚き火を見つめながら、リーダーは言う。やっぱりミステリアス系か.....とまたまた思いながら、火の温かさを享受する。瞳の中で揺らめく炎は、神秘的に他ならない。
拠点についたところで、まずは夜の寒さをしのぐため、火をおこしておこうとなった。サバイバーかと思うほどテキパキとした様子で2人は動いて、たった5分で焚き火が完成した。
その後は、とりあえず全員の自己紹介をしていこうということになった。
「オレはアレアト。このパーティの中ではリーダーを務めている。なにか困ったことがあったら、いつでも頼ってくれ」
はじめはリーダー。アレアトは冒険者になって5年らしく、意外とベテランといわれる範囲に足を突っ込んでいるようだ。趣味は古書や伝承の記された巻物といった書物を集めることらしく、持ち歩いている簡易型図書館(魔法アイテムのひとつ。なんでもっているのかは聞かないことにした。普段は持ち運べるくらいの大きさだが、発動すると本物の図書館にはいることができる)にそれらを保管しているらしい。
「オレの図書館には、世界一を誇れるほどの書物を保管しているんだ」
「どうやってそんなに集めてるんだ?」
お金とか、お金とか、マネーとか。譲ってもらうこともあるだろうが、世界一を誇れる量なんだ。目を眩むほどはかかるだろう。まだアレアトの図書館を見たことがないから、今現在でどれくらいの書物が集まっているのかは分からないが。
「依頼の報酬として譲ってもらうこともあるけど、大半は訪れた街で買っているが....」
「違うわよ。きっと、なんであんな量の書物を買う金があるのかってことを聞きたいのよ」
頬杖をつきながら話を聞いていた僧侶の人(まだ名前を聞いてないから、一旦そう呼ばせてもらおう)が、僕の疑問を投げてくれた。
「そ、そっちか?お金については...。実家が裕福だから、とだけ答えておくよ」
ふふーん。つまりはお坊ちゃまってことか?つまりは収集のために使う分のお金には困らないってことか。恐ろしい財力だ...。それにしてもなんでそんなに生きることに困らないような裕福な家を出て、結構自由にやれるけど、いつ死ぬかも分からないようなホワイトかブラックか不明な冒険者になったんだ?
そんな疑問が顔によく分かりやすい字で書かれていたのか、苦笑いをこぼしたアレアトは
「昔に、色々あってね。「自分の目で確かめる」...。それをするために、自由に行動できる冒険者になったんだ。書物収集は、おまけに近いのかもしれない。けれど、大切な、大事なことであることにはかわりないけれどね」
とこたえた。「それで、そこのお嬢さんは?」とアレアトは意地悪っぽく笑いながら僧侶の人に話をふると
「あんたね...名前を呼びなさいよ名前を!知ってるでしょうが....」
と頬を膨らませて拗ねた。
「まぁ、いいわ....。わたしはアレーティア。普段は僧侶として動いているけれど、魔法もつかえるわ」
見た目から僧侶だろうと予想はしていたものの、まさかの魔術までいける口だったとは思いもしなかった。世界は広い。
そんなことを思いながら、アレーティアをみていると、一際目につくものがあった。それは左目に覆い被さる眼帯だ。結構オシャレ。なんでしてるんだと突っ込んでみたら、「小さい頃に、色々あったの」と返ってきた。そのうちわかるだろうか。
「もしかして、「この目は、隠された力がひめられているの....!」とかってはならないよね?」
と中二病のようなことをためしに聞いてみると
「.....!!なんでそんなことを平然と聞けるのよ!このやろう!!」
とお酒を飲んで少し酔った人のような勢いで答えてくれた。
「まぁまぁ、2人とも....」
とアレアトが一旦場の空気を沈め、コホンと咳払いを挟んでここにはいないもう一人の仲間について
「そして...ここにはいないけれど、フードを深々と被った子がネモだ」
と教えてくれた。
ネモ.....名無しか.....と不思議に思いながらも、どこかしっくりくるところもある。
「不思議な奴だと思うかもしれないが、それでも大事な仲間だ。気にしてやってくれ」
リーダーらしく、仲間思いなもんだと感心する。そんなこんなで最後に俺の番が回ってきたらしい。
「俺はカタルシス。魔王を打ち倒し、勇者になるために冒険家になったんだ」
「そりゃまた大きな夢ね」
一言余計なのが入ったな...?とギ、ギ、ギ、とアレーティアをみると、本人は「なによ?」と知らない顔をしていた。
「まぁまぁ。魔王の討伐は、ほとんどの冒険者が掲げる目標だ。珍しくはないだろう?」
とアレアトが本日2回目の仲裁に入った。
「確かにそれはそうだし、このパーティの目標のひとつでもある。珍しくはないけれど...」
そこまで言うと、アレーティアの顔が曇る。
「魔王の討伐は、そう簡単なものじゃない。伝承では、何百年にもかけてこの世界に災厄を降り注いできたと伝えられている。過去何千人もの冒険者が、魔王の住む山にさえたどり着くことなく災厄によって命を落としてきたそうよ」
手元に持つ杖を優しく撫でながら、なおも顔は曇ったまま晴れることなく、話を続ける
「過去に...中央大陸の首都に住む元老達が、魔王のすむ城に向かって古龍を送ったことがあるそうよ。けれど、冒険者達にとって圧倒的な脅威である存在さえ、魔王に傷をつけることは叶わなかったそうよ」
そこまで言って、アレーティアは「まぁ、果てしない道のりなのかもね」と言葉をこぼした
「それでも...俺達は魔王を倒すべきだと思う」
一時の沈黙が続いたあと、ハッとした様子で
「これで一旦、みんなの自己紹介が終わったね。じゃあ、次はこのパーティの目標について...」
と、アレアトが沈みに沈んだ空気を断ち切り、話題を提示する。
「このパーティの目標はさっきアレーティアが少しこぼしたように、魔王を討伐すること。だけど、それだけじゃないんだ。これは私情になってしまうけれど、さまざまな街を巡り、古書や伝承をあつめることも目標にしている」
やはり目標のひとつに書物収集が入っていたかと思うと共に、アレアトの大人買いっぷりを拝めることもできるのではと好奇心がくすぐられた。
「この街ではある程度集め終わっているから、明日にでも次の街に行こうと思っている。いいかい?」
アレアトはそう言ってメンバーの顔を一人一人見つめる。全員(俺とアレーティアしかいないが)「賛成」の顔をしていたようで、アレアトは頷いた。
「ネモの意見は聞かなくていいのか?」
唯一、この会話に参加していない彼について訊くと、「彼は、反対の時は反対と言いに来るからね」と教えてくれた。こっそり聞いているんだろうか?と疑問に思いながら、まぁそんなところだろうと結論づけた。
「ちなみに、次の街はどこに行くんだ?」
「集めている書物の中で、近くの街でより気になることについて書かれている書物を手に入れられそうな街があってね」
そう言ってアレアトは腰に装備したバッグからアイテムを取り出す。手のひらサイズの平べったい円柱の中に片方が黄金の細長いひし形と、その下に方角がかかれたものだ。一般的なものとは少し違うが、恐らくは羅針盤(特殊)だろう。
「これは普通の羅針盤とはちがって、目的地のある方角を示してくれる羅針盤でね。裏に目的地を変えられるギアがあるんだ」
そしていつ取り出したのか分からないが、手に持っていた地図を広げ、「Kaias」とかかれた場所に羅針盤を重ねる。黄金の針が指し示す方角をなぞると、1つの街にたどり着いた。ここは...
「次の目的地、それはずばり。タレスティアだ」
家の机の上に自立してしまうほど厚い小説が5冊あるのですが、アレアトの図書館にある中で1番厚い書物はどれくらいの厚いんだろうなぁと考えてしまいます。
そういえばそういえば、某魔法学校が出てくる作品の本は目を見開くほど厚かったですが、1度それを上回る厚さの本を見かけたことがありまして。これちゃんとめくれんの?って子供ながら思いました。小学生のころの忘れられない思い出です。
このストーリーを書いた時は、1000文字ほど少なかったのですが、あまりにも自己紹介がさっぱりしすぎているなと思って、色々会話を追加した結果3000文字を超えました。ナガクテゴメンネ




