そういえばそう言っていた...
次の日、俺達は宮殿へ足をはこんだ。
どうやら、仲間全員が元気になったら来るよう言伝があったらしい。
以前と違い、門兵に止められることなく宮殿へ入ることが許された。
広間より奥、女帝の執務室の前まで案内され「女帝様、例の冒険者達です」と案内役の兵士が扉に向かって言うと、中より「通しなさい」と返ってきた。
「失礼します」
アレアトがそう言い、扉を開ける。中には凛々しい表情をして待っていた女帝がいた。
「待っていたぞ。だが、我の予想より早かったな」
「それなら良かったです。それで、ご要件とは...?」
「我が冒険者を集った時に話した内容は覚えているか?」
そういえば....生還した者には願いを叶えるとか言っていたような...?
「何か、願いや欲しいものはあるか?それぞれ叶えてやろう」
『うーーん........』
正直、考えていなかった.......
「ではオレから。イフィリオスに存在する種族に関して書かれてある、辞典のようなとのはあるでしょうか?」
そういえば、そんなのが欲しいってタレスティアに来る前に話してたな........
「そんなもので良いのか?」
「はい。元々、それを求めて来たようなものですから」
「そうか...わかった」
「じゃあ次は私が」
アレーティアが声を上げる。
「私は、女帝様が持っている中で、1番魔術が書かれている本を貰いたいわ」
魔術師らしいといえばらしいが、アレーティアが魔術書を望むのはなんか意外な気がした。
「ふむ...我は魔術を使わぬからな...いいだろう」
「感謝するわ」
「俺は....そうだな........」
欲しいものといっても、思い浮かばない。
どうしようかと迷っていると
「そういえば、タレスティアの鍛造技術はこの世界でも随一のものでしたよね?」
とアレアトが女帝に聞いた。
「よく知っているな.....その通りだ」
それなら....と、女帝に何を願うかを思いつく。
「では....この街で1番腕の立つ鍛治職人に、武器を作ってもらうのはいいですか?」
「あぁ、いいだろう。了解した」
「ネモは...どうするんだ?」
最後まで悩んでいるネモに声をかける。
あ...と小さく声を漏らし、顔をあげる。
「僕は......勇者の物語が書かれている本を.......」
「勇者イリアスの本か...いいだろう。厳選して渡そう」
ネモらしいなと、心の中で呟く。
それにしても厳選と.....どれくらい勇者の書物を持ってるんだ.....。
「これで全員、言い終わったかな?」
アレアトが確認する。
俺の記憶では全員言ったと思うが....
「ええ。私もネモも、カタルシスもあんたも言っていたわ」
「なら...これで以上です。女帝様」
ふむ...と頷き、近くにいた兵士に何かを命じる。
はっ。と兵士が頭を下げ、執務室を出ていった。
「今、部下に書物を持ってこさせるよう命じた。それと.....カタルシス」
俺の名前が呼ばれるとは思っておらず、ビクッと震える。
「後で、我についてこい。鍛冶屋へ案内しよう」
「あ、あぁ」
「では、これでいいだろう。書物は、後に我が責任をもって届けよう」
「もう一度、感謝を」
深々と頭を下げるアレアトを見て、続いて頭を下げる。
「いいのだ。我らも、お前たちに命を救われた。これは我からの礼だ」
もしあの時、ネモが決死の覚悟で悪魔をへ攻撃をしていなければ...
もしあの時、誰も立ち向かうことができなかったら...
俺達も、女帝も、ここにはいなかっただろう。
「カタルシス、ついてこい。鍛冶屋へ行くぞ」
「了解しました」
先にアレアト達と別れ、俺は女帝の後をついて行った。
「どんなに腕の立つ戦士であろうと、なまくらで強大な敵には敵わない。そう思わないか?」
前を歩む女帝が、そう問いかける。
「そうですね...人にもよると思いますが、ほとんどの者は敵わないと、俺も思います」
たまーにフィジカルギフテッドを以て全てを解決する者もいるが、ほとんど無理だろう。これが俺の考えだ。
「だがどんなに脆く、弱い戦士だろうと、鋭利な武器を持っていれば敵一体葬ることら可能だろう。だからこそ、この街は鍛造技術を磨いている者が多い」
「それは...戦場へ赴く戦士のため...ですか?」
「そうだ」
なるほど。確かに戦いと共に繁栄した街ほど、武器の質が高いと聞く。
その理由はそういうことなのだろう。
「さて...着いたぞ。ここが、この街で1番腕の立つ鍛治職人がいる工房だ」
意外にこじんまりとしている工房だがら壁にはびっしりと注文表が貼られてある。
これだけで、腕の立つ者がいると分かる。
「ヘファイストス、今いいか?」
店の奥に向かって聞く女帝。すると、ドスドスという重い足音とともに巨体の職人が表に出てきた。
おそらくはドワーフだろう。
「聞き覚えしかない声だと思えば...バレシッサじゃないか。今日はどうした?」
「この者の武器制作をお願いしたくてな...いいか?」
んんん?と俺をじっくりと見つめる店主。
正直ちょっっと怖い。
「さてはお前、バレシッサに気にいられたのか?」
「.....?」
「違う、ヘファイストス」
鍛冶師の言葉を叩き落とす女帝。
「そうかそうか。そんじゃ、お前さんの武器について教えてもらおうか」
手にした金槌をマイクのように扱うこの人。
「えっと.....エスパダ・ロペラで伝わるか?」
「そんな珍しい武器使うのか?世界は広いってもんだな」
顎に手を添え、考えるこの人。
「よし、領諾した。今から作るが...見ていくか?」
「...?!いいのか?」
鍛冶師の鍛造を見ることはなかなかない。
これは見ていかなくては損。見ていこう。
「なら頼んだ、ヘファイストス。料金はツケでいいか?」
「酒場で無制限に奢ってくれるなら、無料でもいいぞ」
「では、そうしよう。我は他の冒険者に届け物があるから、それへ」
そう言い、女帝は街中へ消えていった。
「それ、なら...鍛造を始めるぞ」
「あぁ、分かった」
「武器の素材は、最高級の鋼鉄て作っていくぞ」
「いいのか.....?そんな貴重な素材を使って...」
「あぁ、その分、バレシッサに奢ってもらうまでだ」
なんという。色々想像の斜め80度をいく考え...。
女帝がどれくらい奢られるのか、見てみたいものである。
「素材を適量準備し終えたら、加熱していくぞ。暑くなるから、気をつけろよ」
かまどのような所へ、坩堝を突っ込む。火花が奥で弾けとび、炭が赤く燃える。
熱気が溢れ出し、工房内の温度が上がっていく。
「いい感じになってきたな......坊主、そこに金属型があるから、そこから望む形の型をもってくるといい」
鍛冶師の指さす先には、オークで作られた引き出しがあり、それぞれの段の端になんの武器の型なのかが書かれていた。
刺剣と書かれている棚を探し、引くとずらりと型が並んでいた。
「そうだな......」
俺はその中から1つの型を取り出し、鍛冶師の元へもっていく。
「用意できたか。なら、流し込んでいくぞ」
白よりの真っ赤になった鋼鉄が、型へと流れていく。
「これは...何をしているんだ?」
「武器のある程度の長さを、これで作っているんだ。こっから、金槌を使っていくぞ」
冷えた鉄の棒を、かまどへ再度入れる。
赤くなったところで取り出し、金槌で叩き伸ばし、形を整えていく。
カンカンカン、という音が工房内に響きわたる。
どこか心地よい音。
かまどに入れては金槌で形を整える。これを何度か繰り返し、最後に冷やすことで刃の部分が完成した。
「どうだ、いい出来だろう?」
「あぁ、こんないい武器を振るえるのが嬉しい」
「そう言ってもらえるだけで、十分やりがいがあるってもんだ」
そう言い、また別の金属を持ってくる鍛冶師。
「今度は、何を作るんだ?」
「柄の部分だ」
先程の力技のようなものよりも更に繊細な作業を進めていくこの人。引き伸ばされた鉄が、美しい曲線を描く。見とれているうちに、柄も完成した。
「あとは、こいつと刃を繋げるだけだ。あと少しだぜ」
合体!の作業もすぐに終わってしまい、あっという間に武器が完成した。
「どうだ?やっぱりいい出来だろう?ほら、持っていきな」
「あぁ、本当にありがとう。感謝してもしきれない」
「いいってもんさ、さて、バレシッサにどれくらい奢らせようか.....」
そう呟く鍛冶師に別れを告げ、俺は宿屋へと戻った。
「わぁ......すごく...きれい.......」
刀身が銀に煌めく。それを見上げるネモの目も光り輝いていた。
「オレたちの方も、先程書物が届いたんだ」
「なんか.....女帝が本当に直々に届けに来たわ」
『バイトのようなノリで済まないが、届け物だ』
「な....るほど....」
多分、アレアト達も困惑を隠せなかっただろう。
だから俺はあえて流すことにした。
「アレーティアの魔術書と、ネモのカタルシス冒険譚、それから...」
なにやら他2冊より厚い本をとりだすアレアト。
「イフィリオス種族辞典だ」
鍛造なんてほとんど見たことがなかったため、Google先生にお世話になりました。ありがとうございます。
鍛冶のことは、なんから真っ赤な鉄をカンカンしていくということしか知りませんでした。
ちなみにヘファイストスはまっっっったく酔いません。
すごーい。




