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もう一度、魔王を討つまで  作者: 空崎恵
英雄の背を追って
13/14

帰還

「......シス〜?.....タルシス〜??」


意識の遠くで、声が聞こえる。

なぜだか分からないが、聞き覚えMAXである。


「カタルシス〜?そろそろ起きないとネモの大剣を落とすよ〜」


うん、絶対重い。だからやめてね?

いや、起きればいいのか。だがな?


「ごめん.........身体が......すんごく.......重い..........」


もしかして既に俺の体の上に大剣落としてる?

置いててもおかしくないくらい重いんだ....身体が.......


「ちなみに........ここ.......は.......?」


「.....タレスティアの宿よ。既にあの戦場から帰ってきたの」


どうやら俺が気絶している間に、帰還したらしい。

ということは少なくとも1日は寝てたんだな、俺。


「もう........1時間だけ...寝かせて.........」


「それかここに回復剤があるから、のんですぐに元気になるかね」


ベッドの横に備え付けられている机の上にある、回復剤を指差すアレーティア。


「.......起きてやりたいことがあるんでしょう?」


.....見透かしてやがる..........

じーーーっとアレーティアを見ながら、机の上の回復剤に手を伸ばす。

まぁなんと美しいコバルトブルーの液体だほう。それをぐいっと一気飲み。

一瞬にして身体から気だるげさが抜け落ちる。いわゆる「生き返るぅ〜」である。


「........ネモなら、外に行ったわ。血槍で刺されてたのに、元気よね」


「...わかった。回復剤、ありがとう」


アレーティアにお礼を告げ、俺は外へ向かった。




だが、外と言われてもその"外"の範囲が広すぎる。ぶっきらぼうに探したところで、見つかる可能性は低い。なのでとりあえず、居そうじゃね?というところを探してみることにした。


「ん〜....けどなぁ。ネモが居そうなところって本当に限られてるよなぁ.........」


まずは、街を一望できる場所に行ってみることにした。夜来たらすんごい目を奪われるような景色なんだろうなぁ。と思いながら一通り探してみるが、いなかった。


「いそうなところ第2位だったんだけとなぁ........」


2択を......外した........。こういう時ってなんかすんごい悔しくなるよね。

というわけでもう1つの、居そうなところ第1位のところへ向かうことにした。


「広場は.......あっちだっけ?」


向かうは勇者の像がある広場。そういえばネモと出会ったのも広場だったなぁと懐かしくなる。数日前の話だが。


「着いたが......さて、問題はネモがいるかどうかなんだが.......」


広場を見渡す。いるとしたら、ベンチにでも腰掛けているだろうかと、この場にあるベンチを一つ一つ確認していくと。


「あ、やっぱりここにいたのか?」


「あ......カタルシス.....もう大丈夫なの.........?」


勇者の像を見つめながら、ベンチに座るネモがいた。


「アレーティアが回復剤をくれてな。見ての通り、元気いっぱいだ」


「それならよかった.......」


相変わらずフードで顔を隠しているネモだったが、安堵した表情はしっかり見ることができた。


「...ネモの方こそ、大丈夫なのか?ものすんごい量こ血槍が刺さっていたと思うんだが.......」


「うん、もう大丈夫だよ」


頑丈すぎない?この人。

俺より重症だったのに、俺より復活する速度速いよ.....。


「.......あの時は、目の前の敵は、動ける僕か倒さなきゃって...」


「俺はあの時気絶しかけだったから、そこまではっきりと覚えているわけではないんだが.....」


圧倒的な魔力。明らかにモノテクネーより奇跡に足を踏み入れていたあの技....。


「あの力は.....何だったんだ?」


俯くネモ。誰にだって言いたくないことはあるし....もしかして聞いたらダメなやつだった.....?

不安になりながらネモを見ていると、何度か口をパクパクさせた後、


「.......あれは、僕の....モノテクネーみたいなものだよ......今は....そうとしか言えない.......」


そう言った。


「......そうか。教えてくれて、ありがとな」


暫くの間沈黙が続いた後、そういえばとあることを思い出す。


「そういえば、アレアトは何処に行ったんだ?」


起きた時には宿にいなかったから、外出でもしているんだろうかと思ったが、どこへ行ったのかは全く分からん。


「僕が聞いたら、もう少し書物を集めたいって言って出かけて行ったよ。出る時に、君のことをお願いって.

........」


遠征では前代未聞のことが起こったし、今後の為にも情報は多く持っておきたいってことなんだろうなぁ。


「それに....ほら......」


ネモがどこかを指差す。

その先には、本を抱えて歩くアレアトの姿があった。


「いっぱい買ってきたな......」


「アレアト〜.....!」


ネモがアレアトを呼び、手を振る。

あちらも気づいたようで、こちらへゆっくりとやってきた。


「もう大丈夫なのかい?」


「あぁ、お陰様で。アレアトは.....すんごい買ってきたね.......」


強く頷くネモ。あはは.....と笑い、本を1冊手に取る。


「遠征の時、悪魔と対峙しただろう?それで、もう少し悪魔の事が書かれた()()()()はないかと思ってね」


そう言い硬い表紙をめくる。そこには、濃く描かれた悪魔の姿があった。


「....なんか......地味に似てないね........」


「あいつは.....もう少しドM(受け)感とドS(攻め)感があった気がするんだけどなぁ.......」


難しい顔の俺達。ほんとに何言ってんだ。

命を奪おうとした悪魔に対して抱く印象がこれでいいのか.......。


「悪魔を葬る方法は、ひとつしか見つかってない。それはー」


「回復が追いつかないほどのダメージを与え続ける......でしょ?」


『ア、アレーティア?!』


いつの間にかベンチの後ろから本を眺めるアレーティア。いつから来てたんだ.....?


「えっとねぇ....アレアトが本を開き始めた時からね」


「そっから.....」


多分、俺達が集まっているところを見つけて、やってきたって感じだろう。


「悪魔は捕獲なんて簡単なことは出来ない。だから、実際に戦った冒険者の話を参考にするしかない。それで、葬り方がそれ1つだけなんだ」


「それじゃあ、悪魔と戦っている時に、別の方法で倒せたらまたひとつ葬り方が増えるってことか?」


「そういうことになるね。だけど.....」


普通に試行錯誤しながら戦える相手ではなかった。

勇者並の強さを持つ冒険者なら可能かもしれないが、そんな冒険者はそう存在しない。


「悪魔は強大な相手であり、そして神出鬼没でもある。戦力が足りていても、次は発見できるかが問題になるんだ」


「なるほどね........戦えなかったら、本末転倒って感じ?」


「あぁ」


まるでレアアニマルを仲間にしようと好物いっぱい持ってきたのに肝心のアニマルが見つかんないみたいなことと同じだなと想像する。


「ちなみに...その悪魔と戦った冒険者ってどれくらいなんだ?」


「実際に悪魔と戦った冒険者は数える程しかいないけれど、倒したとなると1人しかいないそうね」


「ということは......」


「勇者.......だよね...」


悪魔に勝てる者は勇者しかいない。

そういえば悪魔は魔王の次に強い存在って、師匠が言ってたっけ。

魔王を討伐した勇者なら、悪魔も葬ることは可能というわけか。


「さて、そろそろ宿屋にもどらないかい?」


「そうだね.....」


「もうすぐ日も落ちてくるしね」


「そんじゃら帰りますかー!」


俺達はちょっとした世間話をしながらら宿屋へと向かった。

平和?が戻ってきました。

ですが忘れてはいけない....冒険とは常に死が「こんにちは」とやってくるものでもあると.....

(暫くは平和でいたい)

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