みんなでランチにレッツゴー!!
魔術師にとって1番厄介なことは、近距離に近づかれること.......。それは、魔術の大半が遠距離攻撃なことに関係している。風変わりな魔術師の中には、杖を顔の目の前まで近づけて、魔術を放つことが趣味の人も居たと話に聞いたことはあっても、そんな人は魔術師の中でもほんのひと握りだけだと思う。
そして今僕は、魔術師相手に近距離を維持する戦法を何度もとっている。
「ちょっと!少しは離れなさいよ!!魔術が打てないじゃない!!!」
「それなら......もっと近距離用の魔術を、習得した方がいいんじゃないかな........」
「そうね.....その通りだけど........っ!!」
間合いまで踏み込み、剣を振るおうとする。だけど、アレーティアは反応が早いからすぐに離れられる。これの繰り返しだった。
「近距離魔術...近距離魔術......もう!これしか思い浮かばないわよ!!!」
アレーティアはそう呟きながら、杖に魔力を込めだす。完全に込まれる前に1本を取ろうともう一度間合いに詰め寄り剣を振るうー
「杖よ、鋼のように固くなりなさい!!!!」
そんなことを言って、アレーティアは杖で僕の大剣を弾こうとする。
いくらなんでも、杖は剣より脆い。だから、押し切れると思った。なのに.......
「.....?????」
その予想が覆される。杖は見事に僕の大剣を弾いた。
「あれこそ、脳筋って言うと思うんだ」
2人の戦いを見ての感想である。まさか杖をカッチカチの鈍器に変えて攻撃を防ぐとは思わないじゃん。そもそも唯一思い浮かんだのがこれっていのもなかなかだと思うんだ。
「でも、ほぼいつもの事だと思うし.......」
隣のアレアトは苦笑い。
一体誰がアレーティアを脳筋の湖に突き落としたのかが気になってくるものである。
次第に杖にかけた魔術が弱くなってきたのか、ネモの大剣(木)から放たれる重い攻撃に耐えられなくなり、ポッキリ折れたところでネモとアレーティアの戦闘が終わった。
「やっぱり、もう少し近距離魔術の練習をした方がいいかしら......」
コップの中の水を見つめながら、呟くアレーティア。
少なくともさっき使ってた近距離魔術よりかは、違う近距離魔術を習得した方がいいとは思う。
「魔術師に取っての弱点みたいなものだからね。克服できたら、相当強くなれると思うよ」
「そうよねぇ......」
しょもんとした顔で俯くアレーティア。
どうにか元気づけたいなと思った時、正午を告げる鐘の音が街中に響き渡る。
「もうお昼だし、どっか食べに行かないか?」
「それ....いいね。みんなで行こうよ.......」
「それじゃあ、そうしよっか」
「何食べようかしら......」
そうして、少し元気になったであろうアレーティアを連れて、みんなで外食することにした。
「女帝様、偵察隊が戻ってきました」
昼前、執務室に報告に来た兵士がいた。
前線になるであろう地に、3日程前から偵察隊を送り込んでいた。
「通しなさい」
執務室から、先程の兵士とはまた別の格好をした兵士が3人、入ってきた
「女帝様、只今戻りました」
「ご苦労であった。報告を」
「はっ。前線より北、ゆっくりではありますがこちらへ向かってくる暗黒影を確認しました。それと、暗黒影の進行方向に位置する雨の都は、やはり健在でした」
「あの都は暗黒そのものを退けるか......。去年と比べ、影の大きさはどうなっていた?」
「おおよそ1.5倍ほどかと......」
去年ですらあの大群だったものが、更に増えるか....。
今回の遠征は、最悪全滅を覚悟しなければならないようだ。なにしろ暗黒はー
「よい、下がれ。他の者には必ず休息をとるよう伝えよ」
「はっ。感謝します」
今回の遠征が、ついに我の終着点になるのだろうか......。だとしても、1人でも多くの部下を生還させる。それが女帝として、前に立つ者の責務だ。
「店長!ハンバーグ3つと看板メニューのスパゲティ1つ!!」
「あいよ!!」
ということで外食が始まった。メニューを開いて1ページ目に出てきた肉汁溢れるハンバーグに、俺とアレアトとネモは心を奪われた。その様子を見ていたアレーティアは「それも美味しそうだけれど....私は看板メニューにしようかしら」と言った。
「それにしても、美味しそうな料理ばかりだな.....」
メニューに載っている料理全てを食べてみたい....。そう思ってしまうほど美味しそうな料理ばかりだった。
数分もすれば、店のどこからか香ばしい香りが漂ってきた。
「もうすぐかな......?」
「どんなかんじになっているんだろうな?」
「そりゃあもう、写真より美しいんじゃないかしら?」
そんなことを話しているうちに、料理が運ばれてきた。
『おおおお!!!』
思わず歓喜の声があふれるほど、美味しそうでは足りないほどの美しい料理が机を彩る。
「ほ、ほら...言った通りでしょ.....?」
アレーティアは逆に震えている。
「とっても....美味しそう.......」
「そうだね.....」
アレアトとネモは釘づけ。
「ほら、早く食べような?冷める前に」
みんなを正気に戻す役割は俺だったらしい。
「そ、そうね。冷めないうちに食べちゃいましょ」
「そうだね.......」
「それじゃあ.......」
『いただきます!!』
それぞれが最高の1口を噛み締める。ハンバーグから溢れ出す肉汁に溺れそうな気がした。
「んんんん〜!!!」
ほっぺを持ち上げ、幸せそうにするはアレーティア。スパゲティの方も絶品のようだ。おそらくはモッチモチなのだろう。
「美味しいか?ここの料理は我も気に入っている」
隣の席から声が飛んできた。ここの料理は誰だって気に入ってしまうほどに美味しい。
それにしてもこの声、どこかで聞いたことがあるような.......。
「じょ、女帝様?!なんでこんな所に.....?」
思考が遥か彼方から1番最初に戻ってきたアレアトが声を上げる。
「静かにな。食事中は周りの人に迷惑をかけてなならぬぞ?」
「は、はい......」
そう言われても、隣にこんな人がいたら誰でもこうなるだろ......。
「街の民が、美味しい食事を取れているか確認するのも、王の責務だろう?」
なるほどそれでこんな街中のレストランに........???
「それで、お前たちは冒険者だな?」
「そ、そうですが.....」
ちなみにだが女帝もハンバーグを頬張っている。いい食べっぷりだなぁ...。
「お前たちは......遠征に来るのか?」
女帝の顔が曇る。返ってくる返答が、怖いのだろうか?
「もちろん........ついて行きます」
だが、アレアトが返した言葉は、女帝の予想とは違った。
「........理由を聞いてもいいか?」
「たとへ死地へ出向くことだとしても、貴方達を...助けたいと思ったからです」
「.........馬鹿げた理由だな」
だがその言葉には、確かに喜びと感謝が混ざっていた。
「...貴方こそ...どうして...戦いの先陣を切るのですか........?」
ネモが、そう聞いた。どうしても知りたかったのだろう。震えた声だが、確かに俺達はその言葉を聞いた。
「単純な理由よ」
女帝の目が、俺達の目を掴んだ。引き込まれるような、力強い目で女帝は言った。
「王が先陣を切らずして、誰がその後ろをついてこようか!!」
世界のどこかには、ちゃんと使えば超絶強い武器を鈍器として使う人もいるだろう.......。
例えば身長より大きい十字架をぶん回す人とか......。
やっぱりなんだかんだで脳筋ていやーー!!が全てを解決する時もあるんです。だから、脳筋は手段の最後に入れておくのがいいと考えます。




