表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/52

夕立

夏の夕立が好きだ。


どうしようもなくこもった、街の不要な熱を、

下水に、河川に、ビルの谷間に押し流していくから。


バスの車体が濡れたアスファルトを引っかき、

屋根に叩きつける雨音が、眠っていた「冷たさ」を起こす。


やがて雨があがると、鴨川の流れが冷えた静かな空気を東山から降ろしてくれる。

その風が好きだ。

熱に浮かされていたこの街の脳みそを、ひやっと撫でて、

「もういいよ」と言ってくれるみたいだから。


夕立があがると、みんな笑顔になる。

街の灯りが反射する舗道を、

浴衣の女の子も、ダボダボTシャツのイケメンも、

どこか弾けたような表情で歩いていく。


まるで、

「熱がひいて、楽しんでもいい」っていう許可証が空から発行されたみたいに。



私は、いわゆる“ぽっちゃり”だ。

笑われるほどじゃない。

でも、自分の写真を見ると、いつも思う。

“お前は、物語の外な”って。


こんな体で何を着ても滑稽だし、

手をつなぐ相手もいない。

街の“笑顔の群れ”に入るには、細い体が必要で、

それを持ってない私は、箱の中から眺めてる。


たまに思う。

どんな悲しみでもいい、誰かの死でもいい。

私の心に降り注いでほしい。

この醜い脂肪を、熱みたいに押し流してほしい。

そうすれば、

私だって笑えるかもしれない。


夕立が、また降ってくる。

ガラスに水玉が打ち付けられ、光をぼやかす。


私はレシートを握りしめて、外に出る。

傘は、差さない。


濡れているのか、泣いているのか、

わからない顔のままで、鴨川に向かう。


いつか私にも、許可証が降ってくることを願いながら。


私だって、あんなふうに笑いたいんだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ