シュレディンガーのゴスロリ
今年は特別だった。
曜日の並びが良くて、東寺のしまい弘法と、北野天満宮のしまい天神、両方に行けた。
京都のガラクタ市はすごい。名前に偽りなし、正真正銘のがらくたがところ狭しと並ぶ。
特に弘法市は圧巻だ。
骨董品もあれば、なんでこんなもん売ってんねん、という謎の物体まで揃ってる。
その中で、やけに目を引いたのが、漬物の簡素なテントにいた、ゴスロリの少女だった。
レースのリボン、ふわふわのスカート、長い袖。
まさかの「ぴえん系」。
その服装で、前に飾り気のない“たくあん”や“すぐき”を並べ、うつむいていた。
気になって、翌週の北野天満宮でも注意していたら、やっぱりいた。
同じ格好、同じ漬物、同じ伏し目がちの姿。
あれはもう、何かの現象のようだった。
職場で話題にしてみたが、誰も気づいていなかった。
「そんな子、いてたっけ?」とまで言われた。
なぜだろう。
あんなに目を引くのに、まるで私にしか見えていないようだった。
「次は漬物を買ってみよう」
そう思った矢先、もうその娘はいなかった。
弘法市にも、天神市にも、十日ゑびすにも。
誰も気づいてない。話しても覚えてない。
でも、確かにいた――と、思う。
それとも私の記憶が、何かを欲しがって作った幻なのか?
彼女は今も、どこかの市に現れているかもしれない。
でも見ようとたら、彼女は“存在しない”。
忘れていたら、もしかしたら“いたことになる”。
――そんなことを考えていたら、ふと気づく。
買ってみようと思ったのは、漬物か、それとも――




