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サカタニ

駅前のスーパーエビスクが閉店してから、しばらく外に出る理由がなくなった。

行きつけやったのに、急に、更地になると、まるで人生を置き去りにされたみたいな気分になる。

家にあるもんで済ませる日が増えて、気がつけば足腰まで弱ってきた。

けど、なんやかんやで週に何度か、サカタニのファミマに行くようになった。

あそこは入りやすいし、午前中は日陰だし、野菜やだいたいのものはある。

レジの子も愛想がいい、

あんまり喋らんけどな。


そこで、よく会う男の人がいる。

シャキッとした帽子に、下駄、新聞を小脇に抱えて、果物やらを手際ように選ぶ。

なんとなく、「東京の人やな」と思った。

しゃべり方に、にじみ出る小気味よさがある。

梅雨が明けた日、その人が声をかけてきた。

「よお、あんたもひとり?」

びっくりしたけど、変に馴れ馴れしいわけでもなく、

その一言がなんとなく、胸の奥に引っかかった。

話すうちに、最近こっちに引っ越してきたこと、

前は東京の下町で暮らしてたことなんかを、ぽつぽつと聞いた。

「あすこ(ファミマ)があるだけ、助かるね」

と言われて、ちょっと笑ってしまった。

うちもそうやった。

エビスクがなくなって、どこに行ったらええかわからんかった。

それに今、あの人に会えるかもしれんと思うだけで、少し、足が軽い。



ある日、その人がいなかった。

次の日も、そのまた次の日も。

ぼんやり店の前で立ち止まってしまった。

こんなこと、若い頃には考えもしなかったのに。


「京都の暑さにゃ参ったね。風鈴鳴らずに蝉だけガン鳴き、こっちの頭もガンガンよ!」」

不意に声がして、そっちを見たら、

いつものカンカン帽と笑顔があった。

口が勝手に動いた。

「あらまぁ、あんた、夏バテしてはったん?」

ふたりで笑う。

ただそれだけで、今日がなんとかなる。

恋やなんて、そんなおこがましいことは思わん。

でも、会えるとうれしい。

誰かを待つ気持ちを、こんな歳になって、また持つとは思わんかった。

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