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スイッチ
ママはナースさんです。
パパはジムヤさんです。
ふたりとも病院ではたらいています。
コロナがひどくなってから、
ママとパパはずっと病院にいて、
もう家にはかえってきません。
コロナのせいでいそがしいからです。
あんなにゲームがきらいだったパパが、
僕と弟のあっ君に
ニンテンドースイッチを買ってくれました。
しかも、ひとりに一台ずつ。
うれしくて、飛び上がってよろこびました。
でも、なんだか変だなって、
そのとき少しだけ思いました。
ママとパパがいなくなってから、
伏見のおばあちゃんがうちにきて、
いっしょにくらすようになりました。
7日めの夜、
あっ君がないて言いました。
「ママの唐揚げがたべたい」って。
おばあちゃんは台所で唐揚げを作ってくれました。
べちゃべちゃだったけど、おいしかったです。
白菜のおつけものといっしょに食べたら、
もっとおいしかったです。
ごはんのあと、
あっ君とスイッチでマリオメーカーをしました。
ブロックをならべて、ジャンプして、
何回も落ちて、またやりなおしました。
そのとき、ふと思いました。
人が死んで、だれかがいなくなってしまった世界って、
こんな感じなのかなって。
夜、スイッチをけして、
まくらに顔をうずめると、
外の風の音がきこえました。
ママのいる病院の風と、
おなじ音がする気がしました。




