07『とある夏の日の夕方の記録』
『さて、今日は色々あったが、みんなよくやってくれた! さて、今日の午後の会議を始めるぞ! まずは俺たち兄弟の仕事の報告からだ!』
『そうでしたね。マサさんはたしか武器を作っていたと聞いてますが、完成したんで?』
『そうだ! まぁ弟は徹夜で作って疲れてるから寝ているから今日の会議は来ないが、完成品の武器はいくつか持ってきた』
『わぁ~、これって刺股ですか? DIYでもこういうのが作れるんですか?』
『そんな訳ない。俺たちのやるDIYはガチで初心者の真似事で、ここまで丁寧なのは他の奴の手を借りたからだ』
『他の奴って、………あぁ、前に入ってきた何人かの生存者の中にテロリストがいましたね。彼から聞いたんですか?』
『そうだ。正確にはテロリストじゃなくて、武器の設計図の横流しとかしてた人だけどな。ゾンビと戦うためって言ったら喜んで設計図出してくれてな。感謝してもしたりねぇってな』
『確かに長柄武器ならリーチも長いし、戦闘経験のない人でも扱えそうですね』
『そうなんだよな。これをあと六本くらい作れば、ちょっと遠い場所でも行ける気がする』
『今は硬質エーテルもありますからね。武器としては中々の耐久度だと』
『マサさん、ちょっと遠い場所っていうと、前ぼやいてたあそこの私立学校ですか?』
『そうだな。昨日入ってきた子いただろ? あの子が有志の人間から教えてもらったらしくてな』
『それって信用できる情報なんですか?』
『阿野君、それってあの子が嘘つきだって言いたいの?』
『ち、違いますよサキさん…。その有志の人があの中学生に嘘の情報を流し込んだ可能性があるってことでして…』
『嘘の情報を流して何の恩恵があるって言うの? それにその有志の人があの子に「伝えて」って言ったわけじゃなくて、こっちのレジスタンスに渡すまでの三十分くらいの時間で、雑談程度に言ってたことじゃない?』
『そりゃ、まぁ、そうなんですけども…』
『喧嘩しないでくれよ。リーダーだって困ってるだろ。でもその有志の人の言ってたことは本当なんじゃないかとは思うよ』
『というと?』
『阿野君、顔が近いんだよ。まぁ落ち着いて聞いてほしいんだけど、僕としては真偽は定かではない。でも実際生きている人が校内に閉じ込められているって情報はあるっぽいんだよ』
『なんですかスマホなんか見せて…うん? 「ヤマト地区の十六夜学園ってところ、生きてる人が取り残されてるっぽい」、「数日前そこ通ったことあるけど、助けてって声が聞こえた。周囲に化け物がいたから逃げたけど、たぶん生きてる人だアレ」…。これは……』
『SNSの投稿だよ。複数人の投稿で、やらせのようには見えない。実際音声の入った動画もある。少なくとも、一人は校内に残されていると考えるのが自然だろうね』
『じゃぁ、あの子が聞いた話っていうのも、有志の人がついた嘘ってわけじゃないんだよね?』
『まぁそう考えるのが自然だな。まだSNSも電波も通じるうちにレジスタンスの広報してたから、こういう情報も時々入ってくるんだよ』
『でも怪しいものは怪しいですよ。聞くとその有志の人って不自然な状況で出てきたんでしょ?』
『不自然、それは少なくともこの状況を指しているなら不自然だよね。まぁ気持ちはわかるよ。でもリーダーだってパンデミックの夜は周囲にゾンビもいないのに、「外にゾンビがいる!」って騒いでたじゃないか。実際は木々の葉っぱで透き通った月の光だったのに』
『急に俺に飛び火したな!?』
『実際、あの子も数日満足に食事できてないし、身体も洗ってない、精神的に参ってた状態だったんだろ。だったら幻聴が聞こえた可能性もあるはずだよ』
『だけども…』
『まぁこの話はいいや。そんなに有志の人間が怪しいと思うなら、君は遠征に参加しなければいいだけだ』
『ちょっと待ってほしいなぁ!? 遠征に行くって? もう決まったことなの!?』
『叫ばないでくれよ。もう決まったっていうか、刺股作ってる時点でその気はあったでしょリーダーは』
『……まぁ、そうだな。みんなの同意はまだだけど、武器作ってるあたりで俺と弟は腹決めてた。生存者がいて、助けを求めてるなら、その人を助けないって判断はちょっとな…』
『落ち込む必要はないでしょ。まぁ、でも……はぁ……。で、今は誰誰が遠征に行く予定なんですか?』
『あぁ、それはな』
『遠征の話ー?』
『うぉわ! びっくりしたぁ……。尾形か…。入る時はノックしてからにしてくれ』
『わりーわりー、んで、聞いたけど遠征行くメンバーの話だろ? 俺はメンバーに入ってるんだろ!?』
『『はぁ!? 尾形が入ってるだって!? この馬鹿がぁ?』』
『おうおう、なんだお前ら。馬鹿ってなんだ馬鹿って』
『尾形さん、入るんですか? 学園の遠征に』
『おぉ、サキちゃんもいるのか? テンション上がるわー!』
『ううん、私は遠征には行かないかな』
『サキちゃんいないのかよー、テンション下がるわー!』
『あんな馬鹿、本当に連れて行く気ですかマサさん?』
『阿野と意見が合うなんて嫌だけど、尾形なんて役に立たない。囮でも荷が勝ちすぎる』
『お、おぉ……、見事に嫌われてるな尾形………』
『納得いかねーよ!!!』
『それで? 尾形はメンバーから抜くとして、誰が参加するんですか? 一応僕は行くつもりですけど』
『言い出しっぺだしリーダーは行くでしょ。あぁ僕もお供するよ。ハルキさんはどうだろう。筋肉の妖精だけどインテリじゃんあの人』
『俺も行くっつってんのにさぁ! マサァ、良いだろう? 別についてってもさぁ……!』
『分かった、分かったからひとまず鼻水を拭け! かかる! 大胸筋にかかる!』
『ひとまず、僕は広報ついでにレジスタンスの戦えそうな候補者のリストを作っておくよ。組織の運営もあるし、あまり人数は出せないだろう?』
『ん? あぁ、助かるよ』
『それじゃぁ僕は今日の巡回と受け入れ窓口の防御力強化の計画を練ってきますね。あと、家庭菜園の様子も見てきます』
『私も放送頑張ります! 毎日やればきっと、生存者も心を許してこちらと合流してくれると信じて』
『サキちゃんも阿野君も助かる。とりあえず、尾形は一旦離れろ。……メンバーには入れてやるから』
『え、マジで?』
『その代わりに、勝手に特攻とかするなよ、遠征の時は絶対に指示に従って、先行するな』
『分かったぜマサァ!! この尾形サマがいれば、泥船に乗った気でいてくれ!』
『大船だよそれを言うなら…。急に不安になったな……』
『とりあえず、みんなも今日一日頑張っていこうぜ! おー!』
『『『お前が仕切るなッ!!!!!』』』
『ひぇっ、じょ、冗談、冗談だってばよ………』




