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04『盗聴と真実』

 盗聴器、と。

 そう聞くとあまりに聞こえが悪すぎるが、実際は病院でも使われている患者の独り言や逃げる人の位置を特定するためのコンパクトな情報送信端末だ。特に後者の機能は保育園児や小学生の園外学習に際して使われている。親が年端もいかない子供の外出時に靴底に入れたりバッグに水筒の底に張り付けたり、形も様々だ。無論、犯罪での使用を禁じているため、比較的安価に購入できる反面、購入には役所への届け出が必要だが、それはさして重要なことではない。

 俺はその盗聴器もとい情報通信端末をレジスタンスのみなが夜寝静まっている際に主要施設と思われるところに張り付けて回った。

 勿論レジスタンスを相手が名乗っているためか、深夜の交代制の巡回もあったが人数が多くないことや受け入れに体力を使っているからか見回りの人数は少ない。そのため簡単にその隙をついてつけることが出来た。特に公民館は常時開けっ放しなようで、居眠りをしているデブの門番を除いて誰もいなかったためつけ放題だった。


 「やっと、ひと段落か………。夜中の内に帰ることができたのは幸運だな」


 そう息を吐いて、俺は空になった隣家の屋上で脚を曲げる。隣家は珍しい三階建てであり、一番上には屋外テラスがある。そして第三世代の電波集中アンテナを取り付けているため、超遠距離の機器でも登録済みなら探知できる。それなら最初からここからドローンを飛ばせばよかったと思うが、残念なことにドローンの機体は第七世代なため、世代間の問題で登録しようとしてもできなかったことがある。


 「今のところはなにもないか…朝まであと三時間か…」

 

 寝たら起きれないやつだと思い、俺はその場に立ちあがる。情報と思考をまとめながら、屋上を歩き回る。


 ヤマト地区のレジスタンスは現在受け入れ人数は十人ほど。元の人数を合わせれば五十後半から六十前半だろうか。老人は全体の一割のようで残りは若者、中年くらいの男女だ。こればかりはレンズの性能の問題で細かくは見れなかった。


 「バリケードは非常に簡易的なものだった。今後は強化されるかもしれないが、外の化け物があまりいなかったが故か、もしくは資材が足りないか…。なんにせよ、どこからか化け物を釣れば簡単に壊滅しそうだ…」


 勿論、今のところそんな非道なことはしないが。


 主要な施設は主に資源を集めて保管する場所らしい。少し見ただけだが、保存食品が山と積まれていた。それが四つの家にそれぞれある。あれだけ段ボール箱だらけならしばらくの生存は大丈夫だろう。そして放送用、もしくは会議用として公民館が使われている。盗聴器を仕掛けた際に見たが、随分と乱暴な開け方をしたのだろう、扉全体が曲がっており、ちゃんと閉められない状態だった。


 「巡回のパターンは一通りで、しかもあまり広範囲じゃない。しかも全員やる気がないのかおしゃべりしている。あれじゃ自分の居場所を教えているようなものじゃないか」


 あそこまで馬鹿だと救いようがないと言いたいところだが、集団だと気が大きくなるのかもしれない。それにどうやったのかは知らないが化け物が全くいないところを見るに、安心もあるのだろう。

 レジスタンスのメンバーはそれぞれ公民館に近い家に集団生活をしているらしく、他の家は電気がついていないにもかかわらず、特定の数件だけは明かりがついている。

 

 「問題点は今のところバリケードの問題と巡回の問題、武装の問題か…」


 あとは簡単に侵入者が入り込めてしまうほど杜撰な地域利用だが、こちらは俺がレジスタンスに入るかどうか決めるまでは杜撰なままであってほしい。


 そんな考えをしながら俺はやはり疲れた脚を折り、持ってきた「生命体を堕落させるクッション」に腰掛けて―――――。


 やがて。


 『それでは、ヤマト地区のレジスタンスの会議を行う。議題は主に二つある。バリケードの弱さと個々人の戦闘能力についてだ』


 『まってくれマサユキさん。まだ食料関係の問題は解決していないだろう』


 『いや、昨日来てくれた生存者が大量の保存食を提供してくれた。みんなのためにってな。しばらくは持つだろうから、この際に本格的に攻防の準備やゾンビを倒す手段を得られれば…』


 『バリケードに関してだけど、さすがに机並べただけじゃ薄すぎる。山の木でも切ってフェンスを作る必要があるんじゃないのかな?』


 『確かにな。だが大仰なものを作ってもいざ出る時に困る。ずっと此処に居るわけじゃないからな』


 『兄貴、どこ行くって言うんだ?ここは山の上だし物資もまぁまぁ足りてる。住宅街もあるからまだ人を入れる余裕はあるぜ?』


 『弟よ。謎の伝染病で人がゾンビになるって状況だ。いくら物資があるって言っても、ずっと保存食生活は嫌だろう?』

 

 『リーダー、それってつまりあの大型スーパーを占拠する気かい?でもシャッターは閉められたままだしちょっと確認しに行った時は駐車場の時点でゾンビがわんさか居たじゃないか』


 『まぁそっちの問題もあるよな。でも俺が言うのはスーパーの方じゃなくてな。―――土地さ』


 『土地って…いや兄貴。土地ならここでも…』


 『弟よ。確かにこのパイナップルタウンも広いが、しっかりと広い場所っていったらどこだ。俺はその場所を知っている。重い鉄門に大量の人間が生活できる空間、畑仕事も可能で、いざという時は車で逃げることも可能だ。あそこなら、ゾンビに対抗できる有力な武器もあるんじゃないか?』


 『おいおい兄貴、そんな夢みてぇなところがあるのかよ。確かにそんな場所にレジスタンスを構えられればとても良いじゃないか。でもよぉ…』


 『ふふふ、分からんかね弟よ』


 『学校ですね! 私立十六夜学園! あそこならボスの言ってた要素全部ありますよ!』


 『おいおい、まさかすぐに当てられるとはなぁ。天才か? サキちゃん』


 『何を言うか、私はそこの小学校出てるんですよ。分かりますともこのくらい!』


 『ところでリーダー、その学校へ行く算段はあるんですか?』

 

 『そこなんだよなぁ。いや、俺もルートに関しては良いものを作った自覚はあるんだよ。でもこういう非常時って学校とかが避難先として指定されるだろう? そうなると…』


 『なるほどな兄貴。そのための個々の戦力強化ってことか』


 『分かってくれたか! そうだ、戦える人間が増えれば、あのゾンビも相手ではない。実際、力もそこまでだし動きもすっとろい』


 『それはリーダーが筋肉の妖精だからでしょう!? 一緒にしないでくださいよ』


 『筋肉の妖精…』


 『でも戦力の強化は欲しいよね。私は戦場に出ていなかったから分からないけど、車でドーン!ってやれば良いんじゃないの?』


 『サキちゃん…。一応この国は未成年の運転は禁じているし、肝心のガソリンも可燃性エーテルも中々手に入り辛いんだよ』


 『最近は買いだめしてる家もないですからねぇ』


 『流石にチェーンソーやら矛では機動性や必殺性に欠けるからな…。せめて武装を持ってる人がいれば…』


 『無茶ですよ。テロリストは軒並み粛清されましたし、……知ってるでしょリーダー。この間大検問が行われたのを』


 『あぁ、そうだったな…』


 『………………』


 『でも入ってきた人の話じゃ、一週間ほど前にけたたましい音楽が流れてからゾンビの姿がほとんど見えなくなったって聞きましたよ』


 『え、そうなの大西君?』


 『そうらしいですよサキさん。まぁ、その音楽を聴いてないのも無理ないですよ。ここは背の高い木々に守られてるから下の状況は分かりにくいし…。でも、あの住民は嘘を言ってるように思えませんでした。実際、昨日の受け入れで下に降りた時、ゾンビの姿はほとんどありませんでしたから』


 『まぁそのゾンビ云々の話は後だ。とりあえず兄貴、個々人の戦力とバリケードの強化。当面この問題だろ? 筋トレというか朝の運動はやって貰ってるけど、やっぱ武器が欲しいよな』


 『DIYで作れないこともないが、時間がかかる。それに銃器の知識は全くないからな…。地道に一個一個作るのが、まぁ……良策かなぁ』


 『バリケードの方はちょっと改善案を他のメンバーにも出してもらうよ』


 『私はまた今日のお昼過ぎに放送をかけてみますね』


 『俺は兄貴を手伝うぜ。それじゃぁ、また夕方の会議で。今日なら他のメンバーも手が空いてるだろうから会議に参加できると思うぜ』


 『それじゃぁ、朝の会議は終わるとするか。みんな! 今日も頑張って生き延びような!』


 そして――――。


 「なるほど、学校か…」


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