お別れ
祖母のお見舞いの計画を立てて休日に行く予定のはずだったが、
お見舞いに行くことはなかった。できなかった。
母から学校に電話がかかってきた。
祖母が亡くなったという連絡だった。
担任の先生からそのことを告げられて、
私は帰る支度を淡々とした。
もう頭が真っ白になりパニックになっていた。
祖母が亡くなったことが信じられなくて
頭の中が混乱してとりあえず学校を後にした。
私は学校を早退し、中学校の制服で
祖母の葬式会場へと向かった。
母も葬式会場に参列し、祖母の最後の姿を見にいった。
棺桶の中の祖母は目を瞑り、寝ていた。
祖母は今にも元気に笑いかけてくれる気がしていたが、
そんなことは当たり前だが、なかった。
私はその日、涙の1つもでなかった。
悲しいという感情が頭に追いつかずきっと何も考えてなかった。
葬式が終わり、母と家に帰る途中、車の雰囲気はどんよりしていた。
母も言葉としては発していないが、何か思っていたと思いたい。
私は母とゆっくり家に戻った。
私は葬式の日の晩、一睡もできなかった。
真っ暗な天井を見ながら、時間が経つと共に太陽がのぼり朝になった。
一睡もできなかったが私は学校へ向かい、普通な日常を過ごせている。
祖母が死んでもちゃんと時間は経つし、世界は回る。
私も普通に生きていける。
そんな現実が私を苦しめたのだ。学校にいる間は特に感情的にならなかったが、家に帰り布団に入ると自然と涙が溢れてくるようになる毎日。
きっと祖母も寂しかっただろう。
私は死ぬという経験がない。どのようなものか想像もつかない。
そんな世界に祖母は行ってしまった。