第4話 しばしの小休止
一体何だったのだろう。なぜ私に接触してきたのか…。わざわざ向こうから怪盗フィアットに接触する理由があっただろうか。あの状況ならば警察に宣戦布告でもなんでもすればよかっただろうに。私は考えを巡らせながら家へと帰るのであった。
奏と情報共有した。小型トランシーバーでお互い共有していたが、改めてまとめることにした。今回得た情報は次の3つだ。
・フリーゲルは日本で何かしようとしている
・爆弾はその計画の始まり
・私たち怪盗フィアットにわざわざ接触してきた
「まさかフリーゲルが接触してくるとは…。組織の動向から近々アジア圏での活動を始めるとは思っていたが…。」
「コスチュームは着ていたけれどこれまであまり表沙汰になっていないから怪盗フィアットだと一目見て気づくのは少し難しそうね。でも怪盗フィアットだと断定して接触してきたのは間違いなさそうね。それで、どう動く?」
「フリーゲルの計画から探る必要がありそうだ。現在の爆弾は消防が順次解決するはずだ。とりあえず僕がフリーゲルの計画について調べてみることにする。向こうは向こうで怪盗フィアットの出方を探っているかもしれない。しばらくはあまり表立って動かないほうが良さそうだな。」
「分かったわ。」
こうして私たちはフリーゲルの次なる標的について調査を開始したのだった。
それから数日間はフリーゲルが絡んだと思われる出来事はなかった。息をひそめているのか、裏で準備が進んでいるのか…。音沙汰がないのは不気味である。
「花蓮~、この後暇~?買い物行こ~。」
美沙が元気に話しかけてきた。私は爆弾事件の後から、フリーゲルの調査に時間を取られてなかなか付き合えていなかった。久しぶりに一緒に過ごすのも悪くない。
「大丈夫よ。行きましょう。」
今日くらいはゆっくり息抜きでもしますかね。私たち2人は近くにある大型ショッピングモールへと向かうのであった。
学校が終わり、電車を乗り継いで数十分、私たちは地域最大規模の大型ショッピングセンターにたどりついた。大手チェーン店が多数入居していてなんでも楽しめる。
「ここ、ずっと来てみたかったのよね~。花蓮と来れてよかった!ゲームしたりスイーツ食べたりたくさん楽しみましょ~!」
美沙はうきうきのようだ。私もここ数日張っていた気を緩めて今日はめいっぱい楽しむことにする。
それから数時間、話題の新作ミルクティーを飲み、ハンバーガーを食べ、クレーンゲームにハマった。友人と過ごすこの時間はとても楽しいものだった。
「そろそろ店も閉まってきたし遅くなってきたから帰ろっか。また来たいね。」
私がそう言うと、美沙は笑顔で振り向いて言った。
「今日はありがとう!とっても楽しかった。花蓮、最近忙しそうにしてて関われていなかったから…、一緒に過ごせてよかった。これからもよろしくね!」
私はコミュ障なのかわからないが、人と話すのが苦手に感じている。だから大学生になってから自分から話しかけられたことが数えられるほどしかない。そんな私に積極的に話しかけてくれていつも明るく接してくれる存在、それが美沙なのだ。ああ、なんて眩しい笑顔なのだろう。決して友人が多くない私にここまで関わってくれる…。私は精いっぱいの笑顔で深くうなずいたのであった。
その頃、奏はある有力な情報を掴んでいた。
「なんてこった…。これは…まさか…。」
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親愛なる構成員諸君
我々はついに行動を開始する
決して取り残されるな
組織第一の行動をすべし
今宵、この国の信用を失墜させる
来たる6月30日に開かれる国際会議にて
我々の力を示すべし
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