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私、怪盗やってます。2  作者: 水上イリス / ICCHAMA
第1章 正義の怪盗
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第2話 怪盗フィアット

 その夜、私たち3人は闇夜に紛れながら例の当たりをつけた宝石店付近を訪れていた。

「このあたりに身を隠そう。張り込み開始だ。これまでの窃盗事件を全て同一犯であると仮定すると、だいたいの犯行が23時前後に行われていることが分かった。つまり今回もその時間くらいに犯行が行われる可能性が高い。これまで死傷者は出ていないが、犯人と接触すると何が起こるかわからない。くれぐれも遠巻きに監視くらいにしておくこと。」

奏の的確な説明を受けて、私たちはそれぞれ決めた場所へと向かい、息をひそめて張り込みを始めた。


 張り込みを始めて数時間が経った頃、そろそろ時間であると小型トランシーバーから連絡が入った。来るか来ないかもわからない犯人をこの目で捉えるべく、私たちは張り込んでいたのだが…。連絡が入った数分後、暗闇の中で宝石店に近付く怪しい人物がいることに気がついた。降りたシャッターを開けようとガチャガチャやっているように見える。私たちは遠巻きに顔を見合わせながら監視を続行した。

 しばらくするとその怪しい人影はシャッターを静かに上げ、店内へと入っていった。耳をすませていると、かすかにガラスのケースが割られるような音が度々聞こえてきた。

「奏、聞こえる?警察への連絡は任せるわ。このまま静かに待機して監視続行するわよ。」

奏との連絡を終え、美沙に連絡しようと彼女の持ち場を見た。

「…いない。」

どうやら彼女は持ち前の好奇心に抗えず、店内へと入っていったようだ。いや、大丈夫か?

仕方がない。私も店内へと潜ることにする。

「奏。美沙がどうやら店内へと入った模様。私も潜るわ。店の監視カメラを手掛かりにアシストよろ。」

「了解。」

手短かつ予想していたような冷静沈着な返事が返ってきた。私は瞬時にいつもの水色アクセントのスーツに着替え、物音立てずに店へと入った。


 店内は当たり前だが真っ暗で、目をならしても常人ではなかなか活動は難しい。

「どこに行ったのかしら。」

心の中で美沙の無事を願いながら犯人の気配を探る。すると少し先でガラスの音が聞こえた。私は暗闇の中、物音たてずに気配を殺し、犯人と美沙の気配を探りながら接近する。だが、次の瞬間、私の近くでゴツンと音がした。美沙だった。彼女は隠れていたがどうやら音を立ててしまったせいで犯人に気づかれてしまったようだ。犯人が懐中電灯を向けようとする。私はそのままのスピードで犯人の背後へまわり、首一点を狙い撃ちした。私の締めが上手く当たり、犯人はもがきながらその場に崩れ落ちた。

「ふぅ。何とかなったわね。」

心の中で安堵しながら美沙の方を見る。どうやら怖かったようで、縮こまって震えていた。姿を見せてもいいが、私であると気づかれてはまずい。あいつは勘が鋭いことが多いからな。だから私は話しかけるだけに留めることにした。

「けがはないかしら。危ないことをしてはダメよ。あなたが傷ついてしまうかもしれないわ。」

「あ、あの……助けてくれてありがとうございます。あなたは…味方ですか。」

震える美沙に私は返す。

「助けたけれど味方ではないわ。だって私は悪い人の1人だから。」

不思議そうな顔をする美沙に1枚のカードを渡す。

「もうすぐ警察が来るから、そのカードを渡しなさい。事情はすべてわかってもらえるわ。今後はこんな危ないことをしないこと。今回助かったのは運がよかったからよ。それじゃ私は行くわ。」

私は店を後にする。遠目に見た店は数台のパトカーの赤色灯で照らされていた。

「奏、帰るわよ。」

私たちはそのまま家へと帰ったのだった。



 翌朝、テレビのニュースではこのような報道が行われていた。

「昨夜11時30分頃、川瀬町の宝石店で窃盗未遂事件が発生しました。犯人は……。……で現在も操作が行われているようです。現場にいた女性から怪盗フィアットのカードが警察に提供されており、関与について警察は詳しく調べています。」

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