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 すぐ冒険者ギルドへ向かうのかと思えば、先に宿屋へ案内された。宿屋は、賑やかな大きな通りじゃなく下町にあった。下町と言っても、ナーラ村に比べれば大きく賑わっていて、人通りも多い。建物は2階建てで立派だ。ナーラ村には、平屋しかなかったからね。

 宿屋で受付を済ませると、エナを寝かせるマグナ舎という所に案内された。マグナが1頭ずつ入れるように仕切りと屋根がついた建物で、ナーラ村で見たマグナの小屋と似ている。

 エナは少し窮屈そうだけど、藁の布団をチェックしたあと、満足そうに横になった。


「さてと。次は冒険者ギルドだな」


 冒険者ギルドは、頑丈な造りの建物だった。2階建てで、訓練場や獲物の解体施設などが併設されているんだって。ということは、敷地面積も広めだね。

 ギルド内は人で賑わっていた。大きな掲示板があって、特にそこに人が群がっていた。あとは、カウンターがいくつかあり、そこに行列ができている。

「ははっ。キョロキョロして。珍しいか?」

 あちこち見ていたら、アレンに笑われてしまった。

「こっちだ。受付で、冒険者登録をするんだよ」

 行列のひとつに並び、順番が来るのを静かに待った。


「あら、アレンさん。なんの用ですか?」

 受付嬢がアレンに声をかけた。

「あぁ。こちらのふたりが冒険者登録をしたいと言っていてね。手続きをお願いできる?」

「いいですよ。こちらの用紙に記入をお願いします」

 

 渡された用紙には、名前と年齢、職種を書く欄があった。名前と年齢は問題ないけど、職種って?冒険者じゃないの?

 困って顔を上げると、ディルも困った顔をしていた。

「なにかわからないところがありました?」

「あの、職種ってなんですか?」

「えっ。職種というのは、剣士や魔法使いといったものですね。ええと、リアさん?リアさんは、なにができますか?」


「えっと。わたしは魔法が使えます」

「じゃあ、魔法使いになりますか?」

「はい。じゃあ、それで………」

 

 結局、ディルも魔法使いとして登録していた。


 冒険者にはランクがあり、FランクからAランク、そしてさらに上のSランクがあるそうだ。Fランクは10歳以上の冒険者見習いがなるもので、普通はEランクからなるらしい。

 冒険者登録したばかりのわたしとディルは、当然Eランクからのスタートとなった。


「こちらが身分証です。初回は無料でお作りしますが、紛失したり壊れた場合には、2回目からは銀貨1枚いただきますのでご注意ください」

 手渡されたのは、楕円形の銅に輝く金属プレートだった。首から下げるように、革紐がついている。

「あ、お金!」

「なんだ。金が欲しいのか?」

 わたしが突然「お金」と言い出したものだから、ディルがポケットに手を突っ込んだ。たぶん、空間収納からお金を出そうとしているんだろう。


「そうじゃなくて。入都料を払うのを忘れてたの」

「そういえばそうだな。いいのか?」

 ディルはアレンを振り向き、入都料を払わなくていいのかと聞いた。

「あ、そうでしたね。うっかりしていました。入都料はおひとり銅貨3枚です。マグナは無料ですよ」

「はい。どうぞ」

 わたしはポケットから出すふりをして、ディルから貰った銅貨を6枚差し出した。

 アレンの目が細くなった気がするけど、たぶん気のせいだろう。


 アレンはわたしから銅貨を受け取ると、しげしげと眺めた。

「これは、ずいぶん古い銅貨だね」

「使えませんか?」

「いや、そんなことはないよ。ただ、コレクターが欲しがりそうだと思ってね」 

「コレクターですか?」

「ああ。こういう古い貨幣を集めるのが好きな連中がいるんだよ。主に貴族や商人だけどね。状態のいい貨幣は、価値が上がるんだ」

「知りませんでした」


「他にも古銭はあるのかい?もしあれば、古物商に行ってみるといいよ。意外と、高値で買い取ってくれるかもしれない」

「その必要はない。金には不自由していないのでな」

「まあね。その恰好をみればわかるよ。安月給の僕からしたら、羨ましい限りだ」

 ディルの台詞に、アレンは苦笑した。


 わたしから見ても、ディルは質のいい服や装備を身に着けているとわかる。質がいいものは、それだけで値段が上がる。つまり、ディルはその服装だけでお金に不自由していないと体現しているのだ。


「じゃあ、僕はこれで帰るけど。なにか困ったことがあったら警備兵の詰所へ来るといいよ」

「ありがとうございます」


 アレンと別れたあと、わたしとディルは服屋へやって来た。

 女性店員はディルを見るなり、上機嫌で接客を開始した。腰をくねらせているのは、なぜだかわからないけど。

「お客様、こちらの商品などいかがです?上等の綿で織られた生地を青ツユクサで染めた一級品ですよ。お客様によくお似合いになると思います!」

 ちょっと、鼻息も荒い。


「俺はなにもいらん。リアに見繕ってくれ」

「え………この田舎娘………いえ、使用人にですか?」

 女性店員はわたしの全身を見回し、ふんっと鼻で笑った。

「リアは使用人ではない。俺の友人だ。用意できないのなら、他の店へ行くまでだ」

「ディル。この店、居心地悪いよ。他に行かない?」

「リアがそう言うなら………」

「ちょっ、ちょっとお待ちください!」


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