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今日は、領都ヘランスカへ帰る日だ。朝早く出発するので、ロゼリア様は見送りに来ていない。ロゼリア様と仲良くなったから、離れるのは寂しい。だから、昨日はしっかりお別れをすませておいたの。
「リア、手を」
エナの上から、ディルが手を伸ばしている。
エナは真新しい道具を身に着けていて、どこか誇らしそうにしている。うん。こうして見ると、かっこいい。
ディルの手に掴まると、ぐんっと体を持ち上げられる。二人乗りの鞍に収まり、鐙に足を置くと安定感がいままでと段違いだ。これで、より安心して寝られる!
「なにを考えてる?」
「なんでもないよ~」
「だといいな」
嫌な言い方だな。まるで、頭の中を見透かされているような………
「はっ。顔に出てた!?」
「ああ」
ひどい。わかってて聞くなんて。
「じゃれていないで、護衛に集中してください。出発しますよ」
ハック騎士隊長に注意されてしまった。寝ていても、襲って来る者の気配くらいわかるのに。そうじゃないと、森で狩りなんてできないよ。
ルッツが抜けたので、隊列は先頭がハック騎士隊長とロイド、次に馬車と荷馬車、最後尾はジェイクとわたし達になっている。お互いの力量を考えた上での配置だと言っていたっけ。ドノバンは、当然、馬車の中にラウル少年といる。
そして領都ヘランスカへの帰り道は順調に進み、予定通り到着した。
ヘレンスカ家の領主屋敷に到着すると、ヘレンスカ伯爵と、彼にぴったりと寄り添う若い女性がひとり、そしてまだ5歳くらいの幼い男の子が出迎えてくれた。
ヘレンスカ伯爵に寄り添っているということは、あの女性は伯爵の妻か妾ということなるよね。まだ若く、とてもラウル少年の母親には見えない。………後妻さんかな?それと、あの男の子はラウル少年の弟?
「ラウル。無事に帰って来れてなによりだ。ロゼリア嬢は、プレゼントを喜んでいたかね」
「はい。ロゼリアもレイノルズ伯爵も、父上によろしく伝えてほしいとおっしゃっていました」
ヘレンスカ伯爵は、ラウル少年の答えに満足そうに頷いた。
「ラウル、ご苦労様。あちらでは、ご迷惑をおかけしなかったでしょうね」
「もちろんです。お義母さま。騎士達も、うまくやってくれました」
ふむ。お義母さま、ね。やっぱり後妻さんか。
「お兄さま。おかえりなさい」
「ディエゴ、ただいま。いい子にしていたかい?いい子には、お土産があるぞ」
「うん!ぼく、いい子だよ!」
兄弟仲はいいみたい。
となると、冷たい目でラウル少年を見つめている義母が問題か。
「さあ。旅の泥を落しておいで。話は食事をしながら聞こうじゃないか」
ヘレンスカ伯爵がそう声をかけ、婦人とディエゴ君を連れだって屋敷の中へ入って行った。そのあとをラウル少年やドノバン、騎士達がついて行く。
護衛は無事済んだし、わたし達はここまでかな。そう思って屋敷を後にしようとすると、ドノバンに掴まった。
「どこへ行く気だ。もう少し付き合えよ」
「でも、屋敷に帰って来たわけですし、わたし達はもう必要じゃ………」
「まだ伯爵様への説明が残ってるだろうがよ。それに、依頼票にサインだってもらってねえんじゃねえか?それだと、まだギルドで報酬はもらえねえぞ」
「あっ………」
というわけで、わたし達はドノバンに連れられて客室に放り込まれた。
「とりあえず。風呂に入って身綺麗にしとけ。あとで迎えに来る」
言われたとおりお風呂に入って、衣類は清浄魔法をディルにかけてもらった。これで、綺麗になったはずだ。
だけど、待てど暮らせど、迎えは一向に来ない。
ヘレンスカ伯爵は、家族揃って食事かな?食事が終わったら呼びに来るのかな?
まあ、ただ待っているのも退屈だし、お腹が空いていたので食事にすることにした。空間収納からパンや調理された料理………寸胴に入ったシチューなど………果物を出して食べて行く。
「ディル。鍋ごと料理を買ったのは正解だったね」
「そうだな」
部屋の時計が7時を指した頃、ようやくドノバンが顔を覗かせた。
「わりい。待たせちまったな。って、なんだこの匂い。飯食ってたのか?」
「そうですよ。お腹が空いたので、自分達で用意して食べてました」
「そうか。悪いな」
「食事くらい出してほしかったです」
「まあ、あとでな。それより、伯爵様がお呼びだ。ついて来い」
ドノバンのあとをついて行くと、ひとつの扉にたどり着いた。
ドノバンがノックする。
「ドノバンです。リアとディルを連れて参りました。入ってよろしいでしょうか」
「入れ」
「失礼します」
扉が開き、中に入ると思ったより広かった。会議室、というのかな。長いテーブルが部屋の中央にあり、そのテーブルの中央にヘレンスカ伯爵がついている。右側のテーブルにヘレンスカ夫人、そしてラウルが座っていて、反対側のテーブルにはハック騎士隊長とジェイク、ロイドが座っている。
わたしとディルは、ドノバンに促されてロイドの隣に座った。ドノバンは、ラウル少年と隣の席を開けて、その隣に座った。
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