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「なにを迷うことがある。実際の護衛は、熟練の者に任せるから大丈夫だ。彼らから、よく学ぶといい。いい経験になるぞ」
なるほど。それもそっか。ちゃんとした護衛がいるんだよね。わたし達はおまけみたいなものか。それならいいかな。
「どうだ?一緒に来てくれないか?」
「………わかりました。やってみます」
「よしっ!」
ラウル少年が嬉しそうにガッツポーズした。
「じゃあ、追加の料理を食べ終わったら、一緒に冒険者ギルドへ行こう。護衛の手続きをしないとな」
ラウル少年の話では、冒険者が仕事を受けるには冒険者ギルドを通す必要があるんだって。冒険者ギルドを通さないでも仕事はできるけれど、それをするとなにか問題が起きたときにギルドが仲裁に入ってくれないし、ギルドから評価もされずランクの昇格に繋がらないんだとか。
せっかく仕事しても評価されないのは寂しいよね。
食事のあと、わたし達は冒険者ギルドに向かった。
まずラウル少年がカウンターへ行き、仕事の依頼手続きをする。ラウル少年はギルドに払う手数料を含めた依頼料を払った。そして、わたしとディルが依頼を引き受けることで手続きが完了した。
「依頼が完了したら、この用紙にラウル様のサインをいただいてください。それからこの用紙を冒険者ギルドに提出していただくと、ギルドでお預かりしている依頼料をお支払いすることができます」
「わかりました」
手のひらサイズの用紙を受け取った。そこには、依頼内容が書かれている。領都ヘレンスカと王都ディートヘルムの往復の護衛だ。
「なんだ、依頼票なんかじろじろ見て。冒険者になったばかりってのは、本当だったんだな」
ラウル少年の護衛、ドノバンが話しかけて来た。
ドノバンは屋敷に着いてから、姿を見ていなかったけれど。どうやら、領主様へ報告に行っていたらしい。
「俺も元冒険者だからな。聞きたいことがあれば、色々と教えてやれるぞ」
そう言うドノバンは、自分の胸をどんっと叩いた。
ドノバンは中肉中背といった感じで、黒髪を短く刈っている。どこかお調子者の雰囲気が漂っていて、軽武装をしている姿からは、あまり頼りになる感じがしない。彼が護衛で、ラウル少年は大丈夫なのかな。
「旅に必要な物を、色々と書いておいたぜ。これを見ながら、準備をしておくんだな」
「え、ありがとうございます」
ドノバンからメモを受け取りながらお礼を言った。
前言撤回。いい人みたいだ。
それから屋敷へ戻って行くラウル少年達と別れ、わたしとディルは少ない時間で旅支度をすることになった。
ディルが大食いだから、特に食料は多めに買った。買いすぎて、お店の人に驚かれたくらいだ。これまで調味料と言えば塩だけだったから、お店に並ぶ様々な調味料に興味を引かれて買いもした。これで、美味しいご飯が作れるといいのだけど。
買った品物が両手いっぱいになると、路地に入って空間収納に収めることにした。それを繰り返しながら買い物を済ませ、屋敷に戻った時には日が暮れていた。
「遅いから心配したぞ」
ラウル少年が待ってくれていた。
「買い物が楽しくて、つい遅くなってしまいました。すみません」
「そうか。そのわりに、荷物はないようだが。どうしたんだ?」
「えっと………」
空間収納があるって、言っていいのかな?お母さんから、珍しい能力は狙われるから隠すように言われてる。でも、どうやって誤魔化したらいいのかわかんないよ!
ディルを見ると、「任せておけ」と言いたげな視線を向けて来た。ディルがそう言うなら、と思って頷く。
「俺は、空間収納が使えるのだ」
はあっ!?それ、言っちゃうの??
「なるほど。それで手ぶらなのか。納得したぞ」
ラウル少年は、特に驚いた様子もなく頷いた。
え、え、驚かないの?この能力は、隠さなくてもいいの?
「だが、その能力は隠したほうがいいぞ。欲しがる連中は多いからな。せめて水筒を持つとか、荷物を背負うとかして誤魔化さないと目立つぞ」
あ、やっぱり隠したほうがいいんだ。おまけに、アドバイスまで貰ってしまった。
「部屋はふたり部屋を用意してある。案内するからついて来い」
ラウル少年自ら客室に案内してくれた。
案内されたのはこじんまりした部屋で、ベッドが2つに、テーブルと椅子、チェストがあった。そのチェストの上には鏡があって、わたしは驚いた。
「どうした。鏡が珍しいのか?」
鏡を凝視しているわたしに気づくと、ラウル少年がそう問いかけて来た。
「はい!初めて見ます!」
鏡の中の少女は、青い目を大きくしてこちらを見つめていた。金色の髪を後ろでひとつ結びにし背中に垂らしている。わたしが顔に手を伸ばすと、鏡の中の少女も同じように顔を手を触れた。わたしが笑えば、鏡の中の少女も嬉しそうな表情をした。
だけど、これがわたしだなんて信じられない。だって、鏡の中の少女はとっても可愛らしいのだ。散々、ナーラ村でブスだの醜いだの言われてきたわたしのはずがない。




