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「しかし。メイドも知らないとは。どこに住んでいたんだ?」
「ええと………ナーラ村の辺りです」
「ナーラ村というと………トリムの森の近くか。たしかにあそこは辺境だが、領都にも近い。ナーラ村から領都に働きに出ている者もいるだろうし、メイドを知らないというのは不思議なものだ」
「リアは村人から避けられていたからな。知識は両親や本から得たものしかない」
「村人から避けられていた?………はっ!まさか、乞食のような恰好をしていたのはそのためか!?」
鋭い。
「いやしかし、こんな少女を村全体でいじめる理由がわからない。リア、なにか心当たりはあるのか?」
「えーと………わたしの家は、代々魔女なんです。だから、村人から嫌われていて」
「魔女?それが、どうして嫌われる理由になるんだ?領都にも魔女はいるぞ」
「え?」
だって、魔女っていうのは人から忌み嫌われる存在じゃないの?
うちの家系は女系家族で、代々、子供は女の子しか生まれなかった。だから、冒険者や旅人などの外から来た人を夫として迎え入れてきたの。ナーラ村の村人たちはわたし達を嫌っていたから、ナーラ村から婿に来てくれる人なんていなかった。
お父さんは、たまたまトリムの森に狩りに来て、お母さんと出会って結婚したんだって。腕のいい冒険者だったお父さんは、ナーラ村の人に重宝されたけど、うまく利用されたとも言える。
お母さんは占いや薬づくりに長けていて、ナーラ村の人はなにかあるとお母さんを頼った。
でもね、お母さんが倒れたとき、助けてくれた村人はひとりもいなかった。
だから、ナーラ村なんて大嫌い。
「リアも魔女なのか?」
ラウル少年の声に、考え事から現実に引き戻された。
「わたしは才能がなくて、占いも、薬作りもだめなんです。でも、魔法は使えるから、魔女じゃなくて魔法使いです」
「それじゃあ、特に嫌われる理由はないじゃないか。じゃあ………見た目がいいから、やっかみかもしれないな。人間、自分にないものを欲しがるからな」
自分にないものを欲しがる、か。それはあるかも。ナーラ村の人々は、総じて欲深くて、人が持っているものを欲しがるところがある。でも基本的には怠け者だから、なんとか楽していいものを手に入れようとするの。だから、バートンさんのように、わたしが手に入れた獲物や薬草を巻き上げようとする人は後を絶たなかった。
まあ、村から離れたところに住んでいたおかげで、そう頻繁に来られるわけじゃなかったけど。いい迷惑だよね。
そのとき、可愛らしい制服に身を包んだ女性がやって来た。メイドだ。
「ラウル様、お食事の用意ができました」
「わかった。ディル、リア、行こうか」
「うむ」
「はい」
そのあと、メイドに案内されながら屋敷の中を歩き、広い食堂に着いた。長テーブルが部屋の中央にどんと据えてあり、その上に湯気を立てる料理とお皿が並んでいる。どれも、初めて見る料理ばかりだ。
「遠慮せず食べてくれ。これは、僕の詫びの気持ちだ」
そう言われて、ディルは料理をバクバクと食べ始めた。少し食べて、嬉しそうに顔をほころばせた。そして、料理を飲み込むように次々平らげていくスピードは尋常ではない。あっという間にテーブルの上の料理を片付けてしまった。
わたし、まだ一口も食べてないのに。
呆然のその様子を眺めていたラウル少年が、はっと我に返って、傍に控えていたメイドに料理をもっと持ってくるように指示をした。
「ディル、だめじゃないの。人の分まで食べないで」
「その少年が、遠慮するなと言ったではないか」
「でも、全部食べることないでしょ」
「手が止まらなかったのだ。しかたがないだろう」
「それでもだめ」
「ぷはっ」
笑い声が聞こえて振り向くと、向かいの席に座っているラウル少年が笑っていた。
「仲がいいんだね」
「はい。ディルは友達ですから」
「リアは特別だ」
「特別だなんて大げさな。他に友達がいないだけでしょ」
「友人なら他にもいる。友人がいないのはリアだろう」
「ぶふっ」
また笑われた………。
「そういえば。これからどうする予定なんだ?」
「え、どういうことですか?」
「冒険者として、どんな仕事を受けて行く予定かと聞いている」
「冒険者ギルドで仕事を受けようと思ってます」
「そうじゃなくて………あ、そっか。リア、ランクはなんだ?」
「わたしとディルはEランクです」
「それなら、薬草の採取だけじゃなくて、狩りもできるな。うん。高ランクと一緒なら、護衛もできるし、いいだろう」
え?なにがいいの?
「僕は、もう少しリア達と話しがしたい。だけど、明日は王都ディートヘルムへ行かなきゃいけないんだ。護衛にねじ込むから、一緒に来てくれないか?もちろん、報酬は払うぞ」
「いいぞ」
あっさりと了解したディルに驚いた。
「ディル!?そんな簡単に引き受けていいの!?」
「特に目的があるわけでもないしな。いいんじゃないか」
「でも………」
「王都までは、マグナ馬車で片道3日だ。用事を済ませるのに1週間かかる予定だ。それから、また3日かけて戻って来る。王都に滞在中はヘレンスカ家のタウンハウスに泊まってくれ。報酬は、ひとり小金貨3枚だ」
これまでお金を使ったことがなかったから、その報酬が適正なのかわからない。ただ、宿屋の料金が1泊銀貨3枚だったことを考えると、高額なのはわかる。わかるけど、13日も拘束されるのに銀貨3枚って妥当なの?うう~っ、わからない。
それに、護衛なんてやったことがないのに、護衛の仕事を引き受けて大丈夫かな?ちゃんと役に立てるかな?




