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短編怪談  作者: ライラ
5/6

中古物件

 最近一人暮らしを始めた。


 その部屋はなぜか、毎日決まった時間にトイレの水が勝手に流れる。

 朝の7時と夜の8時。

 立ち上がると自動で水が流れるトイレなので、おそらく誤作動だろう。


 しかし、綺麗なトイレなので、おそらく最近取り付けられたものだ。故障は考えづらい。


 正直、別に幽霊でも構わない。それ以外は特に害が無いのだから。

 家賃も安めだし、建物自体は古いがトイレなどは新しめで、少しづつ古い部分を改築して修理しているのが分かる。

 害のないトイレにいるだけの幽霊? に怯えて、出ていくのはもったいない。


 しかし、幽霊も人も同じ時間きっかりにトイレに行くなんてことあるのだろうか?


 ーーそんなことを考えていたら思い出した。


 昔、祖父の足が悪くなってしまった時のこと。

 これを機に、と、祖父に紙おむつを履かせ始めた。しかし、祖父は羞恥心があるのかトイレに行きたがった。祖母が近くにいない時は、僕が祖父のトイレに付き添っていた。

 しかし、上手く動かない足では当然トイレに間に合うはずもなく……。オムツに出してしまっていたのは祖父も祖母もみんな分かっていた。


 それでも祖父は結局、寝たきりになり、自力で起き上がることが出来なくなるまでトイレに行きたがった。祖母もわかっていたから、朝起きた時と、寝る前に尿意がある無いかかわらず、トイレに連れて行っていた。

 トイレをした訳でもないのに、トイレの水を流す祖父の背中や音を思い出す。


 実家のことを思い出して、なんとなく切なくなった。




 それからも毎日トイレの水は流れ続けている。




「兄ちゃん。それは多分、時間によって自動で流れる設定なんだよ。最近のトイレは臭い防止とか何とかで、そういう設定がされてるらしいよ」


 弟が苦笑いしながらそう答える。


 ……何となくわかっていた。しかし、改めてきちんと説明されると少し恥ずかしい。


「まあ、何となくそうだろうなとは思ってた」

「あはは、まあ、よかったよ」


弟はほっとした顔でそう言う。


「どうかしたのか?」

「え? だって、あそこ有名な事故物件じゃん」


 ……知らなかった。たしかに相場より安めの家賃ではあった。しかし、それは全体的に作りが古いからだと思っていた。


「誰かあの部屋で死んでるのか?」

「……ほんとに知らなかったんだ。まあ、いくら安くても借りないよね」


弟は一息ついて話す。


「そのトイレで自殺してたらしいよ。

しかも、しばらく見つけられないまま放置。


生ものが長時間常温に放置されてたらどうなるか、兄ちゃんもわかるでしょ?





ほら、だから。





トイレだけ新しくて綺麗でしょ?」

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