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ヲタッキーズ60 ジャドー襲撃

作者: ヘンリィ

ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!

異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!


秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。

彼女が率いる"ヲタッキーズ"がヲタクの平和を護り抜く。


ヲトナのジュブナイル第60話"ジャドー襲撃"。さて、今回は秋葉原とヲタクを護る秘密防衛組織の司令部でシングルマザーが音波銃を乱射w


背後に防衛網の弱点を売る裏切者をめぐる軍事法廷の存在が浮上、重要証人の保護に向かうヲタッキーズですが、既に一足先に証人の家族は…


お楽しみいただければ幸いです。

第1章 戦場


ジャドー、朝の出勤風景。


ジャドーは、アキバに開いた"リアルの裂け目"からヲタクを護る首相官邸直轄の秘密防衛組織だ。

その司令部は、パーツ通りの、とあるゲーセンの地下深く秘密裡に作られ日夜敢然と挑戦している…


何に?笑


「おはよう」「おはよう」

「あ。おはようございます、レイカ司令官」

「おはよう、大佐。"リアルの裂け目"は騒いでない?」


ゲーセン地下のトイレは秘密エレベーターNo.3だ。

ドアが開きコーヒー片手の司令部要員が出勤スル。


「俺は何も知らない!」

「嘘をつかないで、マコル。貴方のPCハードディスクを全て復元したわ。歯の浮くようなセリフも全部ょ。貴方は、10代の異次元美少女ばかりを狙う性犯罪者ょ」

「ネットの晒しツイートを信じるな」


司令部の横の透明なドアの部屋では異次元人の捕虜尋問が行われている。

ヤタラ耳が尖った捕虜を尋問スルのはエアリ。ヲタッキーズの妖精担当。


あ、ヲタッキーズは僕の推しミユリさん率いるスーパーヒロイン集団で、ジャドー傘下の民間軍事会社(PMC)だ。


「貴方はビョーキなの。助けが必要なのょ」

「へぇ。メイドさんが御主人様を助けてくれるのか?」

「ヲタクになるの。私達に対しても、自分に対しても(意味不w)」


諭すエアリはメイド服で、その下の背中には羽根がたたまれている。

手にしたロリコン写真を捕虜に見せ、巧みに情報を引き出して逝く。


彼女は図書館カフェのメイド長で平時はメイド服だ←


「お隣でエアリが全方向から攻めてるけど、マコルは半落ちのママだょ。どースル?ルイナ」

「でも、テリィたん!方程式だけじゃ幅広い可能性は導き出せても、ソレは答えじゃないわ」

「被害者の美少女達は証言を拒否してるし、押収したPCデータだけじゃ勾留立証は困難だ。物的証拠が出ないと厳しいな」


尋問室?のお隣はルイナのラボになってて、ココで僕は官邸最年少アドバイザーの天才ルイナと話してるw


「いつだかルイナが口走ってた有界化ナンチャラって方程式で何とかならないかな」

「え。何なのソレ?美味しいの?」

「あ。レイカ司令官、おはようございます…庭先に2匹の犬が繋がれているとして、犬は鎖の長さしか動けないでしょ?だから、2匹の接触範囲って限られますょね?」


ラボに顔を出したレイカ司令官は、ゲーセン店員のコスプレで華麗なるコスモルック(銀ラメのボディスーツ)だ。アラサーなのに…


「あら?マコルと被害者の関係みたいね」

「だから、犯行現場と時間をかけ合わせれば、捜査対象も絞れるンじゃナイのか?」

「YES。でもね…」


ルイナは、ラボのホワイトボードに何か描き出そうとしたが、その瞬間、ボードが木っ端微塵に砕け散る!


「銃撃だっ!音波銃?」

「ルイナ、伏せて!立たないで!」

「非常事態発生!司令部を閉鎖!海兵隊!…あ、テリィたんも伏せる?」←


棒立ちになってるルイナをフロアに引き倒したレイカ司令官は、既に腰の衝撃銃を抜いている。

見るとボードを粉砕した音波はドアを貫通してるが、そのドアの向こうは阿鼻叫喚の大混乱だw


「キャハハハ!音波銃ってサイコー!」

「包囲したぞ!おとなしく武器を捨てて投降しろ!」

「嫌ょ!コイツがどーなっても良いの?」


嬌声の主は原色水着を連想させるSFスーツ女子で左腕で屈強な海兵隊員の首を締めながら音波銃を乱射中w

コンピューターが火を噴き司令官要員が逃げ惑う。海兵隊員としめし合わせ、レイカが犯人を追い詰める。


隣のエアリもデスクの影から音波銃で反撃してる…


「キャハハハ!萌えろ!全て萌えてしまえ!」

「3で飛び出すわょ!援護射撃を!」

了解(ROG)です。1, 2…」


水着風SFスーツ女子の目の前に飛び出したレイカ司令官が衝撃銃を発射、吹っ飛ぶSFスーツ女子。

壁に叩きつけられ崩れ落ちた女子をさらに殴り倒し、うつ伏せにして背中を踏みつける海兵隊員w


「負傷者を地上へ搬出!神田消防(アキバファイア)に救急車を要請!」

「ルイナ!ルイナ、大丈夫?…あ、テリィたんも」

「私は…生きてます」


自分のPCをシッカリと胸に抱き、ルイナがデスクの下からヨロヨロと這い出て来る。

彼女に何かあったら国家的な損失となり、ジャドーは、その責任を問われかねない。


「大丈夫なの?音波銃はハズれた?…その血は?」

「違います、司令官。平気です」

「ヲレも平気だ。誰も気にしてナイけど」←


警備の海兵隊員が敬礼して報告。


万世橋(アキバポリス)のSWATが出動。救急車も来ます。司令部要員の被弾は2名で他に軽傷数名」

「ソレだけ?司令部が襲撃された割には損害軽微ね」

「ココにもう1人います。多分、彼がターゲットだったのでは?」


恐らく音波銃に直撃されたのだろう、額に渦巻き状にエグられたような穴。

驚いたような顔のママ、フロアに大の字に転がる死体はロリコンのマコルw


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ゲーセンのVIPルーム。


「襲撃犯は、アレス・シャラ。ロリコン事件の情報提供と偽って入り込み、秘密エレベーターNo.6で司令部へ降下中、海兵隊員の音波銃を奪った」

「海兵隊員の音波銃を?良く出来たわね、何者?」

「ヤタラ俊敏で腕力もあったそうです。海兵隊員を撃ち、さらに司令部で25発を乱射」

「ソレで死亡は1名のみ?」

「YES, ma'am。ロリコンのマコル1名です。襲撃犯のシャラ自身も死んでない。司令官が急所をハズして撃たれたので…万世橋(アキバポリス)の鑑識から中に入る許可が出ました。証拠回収班は未だ作業中ですが」

「今回は、ジャドー主導で捜査本部を設置しましょう。先ず場所を確保して。襲撃犯のシャラとターゲットとなったマコルの関係から調べましょう。ルイナ?大丈夫?」


ルイナは…怯えたような目をしているw


「平気ょ…みんなは大丈夫なの?」

「lucky なコトにね」

「lucky?コレが?よくコンな日常に耐えられるわね」

「毎日あるワケじゃないわ…コーヒーでも飲む?」

「あ、もう行かなくちゃ。今宵は御屋敷(ミユリさんのバー)のシフトだから」


ルイナはミユリさんの御屋敷(メイドバー)でヘルプのメイドさんをやってるのだ。首相官邸のアドバイザーではアルがw


「待って。ルイナには護衛をつけるわ」

「いや。レイカ、ルイナは僕が送って逝くから」

「ますます護衛をつけるわ。海兵隊!」


何でだw


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


"外神田ER"のシャラの病室。

表には武装警官が立っている。


「シャラ、聞こえる?マコルを撃った理由は?私達は警察じゃない。どんな薬も使えるけど、その前に一応聞いとくわ」


ICレコーダー片手に答えを迫るレイカが振り向くとドアの外からローティーンの娘が心配そうに見ているw


「お嬢さんがロリコンの被害に遭ったとか?」


回答は筆談で高速リターン。


「弁護士を」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


病室を出たレイカ司令官は、実は銀ラメのボディスーツでウルトラ場違いだけどシャラの娘に話しかける。


「この人、ママのお友達ナンだけど見覚えは?」

「ナイわ。ねぇママはなぜあんな目に?」

「コッチが聞きたいわ」


溜め息をつくレイカは、プロマイドみたいに爽やかに笑うマコルの写真を持ってる。実はロリコンだけどw


「ねぇママは貴女に何と言ったの?」

「弁護士をって」


フト黙り込むローティーンの娘。


「…ソレなら、私もデーハーなコスプレおばさんに話すコトは何もナイわ」

「デーハー?!あのね。コスモルックは超ミニにもなるスグレモノなの!こんなの未だ地味だわ!ってか、アンタのママもデーハーなコスプレじゃない!」

「とにかく。何も知らないわ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


潜り酒場(スピークイージー)"。


御屋敷(メイドバー)のバックヤードを改装したらヤタラ居心地良くなり、常連の溜まり場と化し、実は困っている。

なお、メイド長であるミユリさんの流儀に従い、御帰宅スル女子は、全員がメイド服を着用するルールだ。


「テリィたんとガイアとの共鳴に伴う天才の発現について話をしてた。そしたら、突然ガラスが砕ける音がして、殺人音波が頭をかすめたの。大きな音がして血飛沫が飛んで…」

「カオスだったょな」

「テリィたん!カオスってね、あくまで予測可能な秩序を前提としているの。初期条件で大きく変化する決定論的な方程式に過ぎない」

「ルイナ。テリィ様は一般論をおっしゃっただけょ。でも、思いがけズ高尚な議論に達したわね。人間の暴力は、人としての根本的な要素ょ。素粒子同士がぶつかり合うのと同じ。銀河と銀河の衝突とか」

「ミユリ姉様!あの襲撃は自然の摂理だと?」

「だから、ルイナ!マクロな視点ではそうだって話だろ?でも、時空を超越した神の視座を持てば違うカモ…」


ルイナがフト黙り、小声でつぶやく。


「レイカ司令官が…笑い飛ばしていたのょ」

「ソレは、対処メカニズムの問題だ。レイカは、暴力が日常の世界で生きてるから、笑いで乗り切ろうとしてるだけだょ。彼女も必死ナンだ」

「じゃテリィたんはどうなの?同じ現場にいて、同じ経験をして、テリィたんは乗り切れるの?」

「モチロン外傷性ストレスは感じてるょ。しばらく、推しゴトは休もうかな…なんちゃって」

「やめて!もう良いわ。襲撃事件を方程式に落とす作業に集中させて。悪いけど…OK?」

「モチロンOKだ」

「ありがとう、テリィたん」

「いつでも話を聞くわ」

「ミユリ姉様。お気遣いには感謝しますが、今は方程式の世界に没入させて。プリーズ」


そして…


カウンター席に座ったママ、タブレットに何かを打ち込んでいたが、ヤタラと長い溜め息をついて遠い目w


そして…頭を掻きむしる←


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


結局ジャドーの捜査本部はゲーセンの地下にあるVIPルームとなる。

ジャドー主導に反発した万世橋(アキバポリス)が司令部の使用許可を制限したのだ。


アキバでも官庁の縦割り弊害は目を覆うばかりw


「司令官、シャラとマコルに接点はありません」

「シャラの娘はどーなの?」

「面識ありません。真面目な娘で出会い系サイトの類とも無縁です」


そーは見えなかったわ、とレイカの独り言←


「ヤハリ狙いはジャドーそのものなのかしら」

「シャラは地元ではPTAの会長も務める、ごく普通のシングルマザーのようです」

「抑鬱との医療記録もないし、職場でのストレスチェックにも問題ありません。ただ、あの動きとコスプレは…」


画像の中のシャラは、水着風SFスーツで完全武装の海兵隊員を次々と殴って、蹴って、投げ飛ばしているw


「確かなコトは、シャラは本格的な格闘技の使い手ってコトね。まるで、アメコミのスーパーヒロインじゃないの。ウチの特殊部隊にスカウトしたいくらいだわ」

「…うーん司令官。でもコレ、プロレスのマニュアル通りの動きですょ?ソレも、典型的な"SMプロレス"の動きだな」

「"SMプロレス"?」


その方面が大好物の司令部要員が指摘スル。

全く疎いレイカのトンチンカンな突っ込みw


「"SM"って…あの、サドとマゾ?」


第2章 シングルマザープロレス


違う!シングルマザー(SM)だw


何と外神田(千代田区立)カルチャーセンターでは"SMプロレス教室"が開講中で、レイカ司令官が例のコスプレのママで件の司令部要員を連れて訪れたら…何と大歓待だw


「素晴らしい!貴女のソレ、月面基地の女司令官ょね?80年代のレトロフューチャーなリンコス(リングコスチューム)は大人気ナンです!狙ってルわねぇ!ワン!ツー!」


何がワンツー?


確かにリングの上や下で取っ組み合う受講生?は、ほとんど往年の戦隊ヒロインのコスプレをしている。

そもそも、講師?も"雅楽忍者隊ガッチャウーマン"のピンクのレオタードだ。ヒロピン(ヒロインピンチ)AVの練習場?


「いいえ!あくまでコレは、首相官邸主導のwithコロナ経済政策"1億大活躍"の1丁目1番地"シングルマザー小活躍"の一環で、国からも交付金が出てる事業です。私もエアロビインストラクターからの転身組で…」

「あのね。ヲタク、じゃなかった、お宅の受講生アレス・シャラの件で来たのょ」

「シャラ?彼女なら私のクラスだわ」

「そう?で、その、えっと、あれ?ねぇ!お願い」


ココで"SMプロレス"ヲタクの司令部要員にタッチ。


「先週の"聖地SMトーナメント"のファイナルなんだけど、垂直落下式パワーボムからコード・オブ・サイレンスでギブアップを奪う流れって、この教室でしか教えてナイょね?」

「見てくれたの?全世界で3億回ダウンロードのベストコンテンツだモノ。文科省の"クールジャパン"からもお金を引っ張って来た政策(ポリシー)パッケージの勝利よっ!」

「こんな街のプロレス教室まで世界を相手に儲けちゃうナンてヲタク経済ってスゴいな」

「シャラも3ヶ月足らずでチャンピオンベルトを取って今や世界中にヲタク(ファン)がいるわ。で、彼女が何か?」

「実は、場所は言えないけど音波銃を乱射して2人が負傷、1人が死亡。ココで覚えた連続技を使用」

「え。確かに熱心な性格で、トレーニングにも前向きだったけど…」

「最近変わった様子は?」

「うーんミョンと揉めてたかな」

「ミョン?」

「同じ半島系のシングルマザーで、直ぐ退会したの。最初はシャラとも意気投合してタッグとか組んでたのに、1週間後シャラが距離を置きだして…」

「2人とも、この連続技のトレーニングを?」

「えぇ。コスプレプロレスの連続技は、今や世界に通用スル数少ないコンテンツょ」

「ミョンの領収書か何か、彼女のアドレスがわかるモノはありませんか?」

「書類を確認してみるけど」


雅楽忍者コスプレのインストラクターはオフィスへ。


「貴方、地下プロレスに詳しいのね。助かったわ」

「司令官。"SMプロレス"は地下じゃありません。今や、彼女達が落ち目の"クールジャパン"を支えてイル」

「そ、そーなの?しかし、2人が襲撃の予行演習をしてたと言うコトは…襲撃事件を起こせる女子がもう1人、秋葉原の地下に潜んでるワケね」

「YES。次はもっと大規模かもしれませんょ司令官」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


パーツ通りゲーセン地下のVIPルーム。

ジャドーの捜査本部は夜も眠らないw


「コレが"SMプロレス教室"のインストラクターの証言を基に描いたミョンの似顔絵。念のため"喜び組"系工作員のデータベースにも顔認証をかけてるわ」

「やれやれ。"平壌ヒルトン"の従業員か。年増になったハニートラップ要員のナレの果てだwどーりでミョン・ウィラは偽名。住所もデタラメでした」

「シャラは回復しましたが、コスプレは着替えて黙秘してます。釣られて娘も完黙」

「どうやら、性的被害を受けた娘の敵討ちでは無さそうね。やはりターゲットはジャドー司令部だったのかしら。マコルは、タマタマ流れ弾に当たっただけ?あ、流れ音波ね。ソレから…エアリ!」


メイド服のエアリが顔を上げる。


「マコルを仕留めた殺人音波を万世橋(アキバポリス)の鑑識が周波数分析したら、貴女の音波銃だったわ。ジャドーの規定により、調査が済むまで貴女の任務を制限する必要があるの」


瞬間、驚いたエアリだが、黙って音波銃を差し出す。

ところが、ソレを聞いたジャドーメンバーが大憤慨w


「ソ、ソンな!司令官!何かの間違いだ!」

「事故ですよ。ヲタッキーズのメイド姐さんがソンなコトをするハズがナイ!」

「きっと音波が乱反射したンだ。万世橋(アキバポリス)の鑑識めwウチの科学班に再調査させましょう!」


慌てるエアリとレイカのコスプレコンビw


「みなさん、ありがとうございます!でも私、任務制限をお受けしますので。ヲタッキーズは傭兵ですから」

「ゴメンね、エアリ。実は、ごく一般的な措置だけど心理分析もあるの。済むまでは司令部(今はゲーセン)の中にいて。好きなだけゲームやってて良いから」

ROG(了解)。司令官」


ジャドーメンバーからも次々声がかかる。


「みんなが経験する通過儀礼だ。姐さん、気にするなょ」

「休暇でも取ってリモートで乙女ロードでもぶらついて来いょ」

「タマには秋葉原を忘れてさ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


一方、悩めるルイナは"潜り酒場(スピークイージー)"にいる。


「次の襲撃がアルらしいけど、私の方程式ナンて、どーせ役に立たナイわ!」

「襲撃犯の動機がわかればヒントになるけどな。確か経路を探す方程式とかあったょね?」

「組み合わせ最適化のコト?巡回セールスマン問題って言うのょ。でも、今回は当てはまらないわ…脅威分析を逆順にトライしてみようかしら。ターゲットになり得る人物がヒットするカモ」

「うーん逆にターゲットがいなかったりして。全員、その場その場の気まぐれで動いただけ」

「となると、ブラウン運動だわ。でも…確率論は当てハマるけど、ブラウン運動はどうかしらwん?でも、待って。わかったカモ」

「何が?」

「ビリヤードを考えて。手球は転がり続けるわ。この玉が襲撃犯だとスルと、一直線に転がる。他のボールやレールなどの障害物に当たると進行方向を変えて、再び一直線に転がる。次の障害物に当たるまで」

「手球以外のボールは…現場にいた人間ってコト?僕やルイナも?」

「YES。ブラウン運動では、不規則な運動が不規則に方向転換するの。襲撃犯は、特定のターゲットに向かって動かナイ」

「つまり、特定のターゲットを追ってナイ?じゃ何しにジャドー司令部に来たンだょ?何か精神疾患でもあるのか?」

「もう少し襲撃当時の動きのデータ分布を検証して、動機を探ってみる必要がありそうね」

「ジャドーの捜査本部は、今ゲーセンに移動してるらしいょ。逝ってみる?」

「…やっぱり行けない。だって…官邸回りの雑事や認識理論の研究が忙しいの」

「ルイナ。次の襲撃があるカモなんだ」

「襲撃事件の調査はします。でも、ジャドー司令部には行かない。だから、必要なデータは送って。資料も」


肩を落とし"潜り酒場(スピークイージー)"を出て逝くルイナ。


「調子悪そうだな、ルイナ」

「テリィ様。きっと昨日の出来事が大きく影響してるのでしょう」

「何しろ殺人音波が頭をかすめたンだからな」

「回復するには、彼女自身が受けたショックを先ず認めるコトです」

「そっか…ルイナ、立ち直れるょね?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ルイナはわからないが、出禁?を食ったエアリの方は全く大丈夫だ。

外出禁止を良いコトに真夜中まで捜査本部で襲撃画像をチェック中。


襲撃前後の画像を繰り返しチェック。何度も巻戻す。


「レイカ司令官。襲撃の朝、シャラをジャドー司令部に送り届けたのはミョンだとわかりました。カルチャーセンターのインストラクターにも確認し、本人だと認めてます」

「え。その画像、拡大してくれる?」

「因みに、ミョンがシャラの送迎に使った車は、レンタカーで衝撃の2時間前、盗難に遭ってます」

「盗難がバレる前に襲撃したのね?じゃレンタカー会社を当たるわょ!エアリ、デスクワークでジャドー1のお手柄ね。さすがはヲタッキーズ」


フフンと鼻で笑うエアリ。


「ミョンですけど、ジャドーの顔認証プログラムでは該当なし。身元について、他の公安組織のデータベースも確認してみます」


そのママ、会話アプリを切って作業に没頭スル。


「音波銃の件、ヤッパリこたえてるのね。スーパーヒロインは、罪には問われないのに」

「とにかく、最悪のパターンですょ」

「ソレにしちゃ…良く頑張ってるじゃナイの!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


一方"潜り酒場(スピークイージー)"を飛び出したルイナは…


「あれ?ルイナ。コッチで呑んでるの?ソレ、何?ドールハウス?」

「テリィたん、静かにして!やっとルイナが前向きになってくれたのに」

「あぁヤッパリ経路がわからないわ。ジャドー司令部を模型化すればデータが取れると思ったのに!」


"潜り酒場"は元々バックヤードで、ルイナは表?の御屋敷(メイドバー)のカウンター席でドールハウス?で遊んでる?


「遊んでません!このドールハウスをジャドー司令部に見立ててデータを採取してるのっ!」

「ホントかょ?もしかして、このリカちゃんパパは僕かな?死んでるけど」←

「テリィたんは、あの時どーだったの?動転なさいました?」

「なさいましたょ」

「襲撃犯も見たの?」

「うん。正直な話、確かに今まで恐怖が何なのか、僕にはわかってなかったな。でも、同時に恐怖はとても役に立つ感情だとも思った。だって、分別の基準にナルだろ?」

「テリィたん。私、また起きる可能性は低いと分かっていても、ジャドーに行くと思うだけで胸が苦しくなるの」

「初恋かょ…で、覚えてる?地下アイドル通りのサエラ」

「有名な番長メイドよね?実は私、カツアゲされたコトがアル。通りで突然、スカートを寄越せって言われて…」

「スケバンの定石(セオリー)だw…あの時、実は僕達はシドレからの衛星画像で一部始終を観てた。でも、レイカ司令官は、大事なルイナがカツアゲされても、海兵隊を助けに出さなかった」


シドレは、アキバ上空3万6000kmの軌道に浮かぶジャドーの量子コンピューター衛星だ。

このシドレが"リアルの裂け目"を発見スルと、直ちにジャドー全ステーションに急報。


「でも、テリィたんが偶然通りかかって…仲裁してくれたょね?」

「仲裁?囮になってボコられてる間にルイナが逃げるコトか?笑…とにかく!ルイナは、いつでも誰かに守られて来た。でも、恐らくレイカは、人生が安全とは限らないってコトを教えたかったンだ」

「ソンな…じゃテリィたんは?」

「僕は、ルイナがサエラに立ち向かったから、助けに出た。アキバで何が起ころうと、ルイナには、立ち向かう勇気がアルと知ったから」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


その頃、レイカ司令官は、例の地下プロレスヲタクの司令部要員とレンタカーで仲良く夜のドライブ中だw


「事情を聞くハズが…流れでレンタカーまで借りるハメになってしまったわwねぇ池袋と秋葉原の違いって何だと思う?」

「そぉですね。秋葉原の方がホットドッグがウマいかな。あ、GPSに拠れば、もうすぐミョンが借りてたレンタカーが見えて来るハズです。司令官ならレンタカーを盗む時、店まではどー行きますか?」

「自分の車で来て…店の近くに止めるカナ」

「バスだと顔を見られますからね。で、盗難車を何処で乗り捨てますか?」

「あ。自分の車の近くね」


ソコへ衛星軌道のシドレから緊急連絡が入る。


「こちら量子コンピューター衛星"シドレ"。メイド通りに炎上中の車アリ。ブルーのレッドの3」

「司令官、あそこ!」

「萌えてる?」


路上駐車中の車が焔を噴いてるw


「あぁ!コレでミョンの指紋やら何やら痕跡が全部灰になったわ。どーやら、彼女は"待つタイプ"じゃなさそうね」

「いつも俺達の2歩先を行く、か。ちくしょう、ナメやがって」

「仕方ないわ。最終ターゲットを知っているのは彼女だけだモノ」


第3章 正八胞体の謎


ゲーセンVIPルーム改めジャドーの捜査本部w


「司令官。炎上したレンタカーの検査報告です」

「何か手がかりは?」

「ありません。何とかしないと、次にミョンが現れた時は即、大惨事ですょ」


一同タメ息。しかしgood newsも…


「ウチの科学班が殺人音波の反射モデルで確認しました。メイド姐さんの撃った音波は、襲撃犯の肩を射抜き、フロアに反射してマコルへ飛んだ。現場の血痕もミョンと一致しました」

「やった!メイド姐さんは無罪だっ!」


歓声が沸き、大きくうなずくレイカ司令官。


「司令官!メイド姐さんが現場に復帰出来るのは?」

「残念だけど1〜2週間先ょ」

「えええええー?!」


その場の全員が(ゲーセン地下のw)天を仰ぎ見る。


「good newsだけど微妙だなw」

「ロリコンだけど人が死んでる。仕方がないわ」

「音波はシャラをヒットした。ただ、ソレが運悪く反射しただけっスょ?」


しかし、当のエアリは屈託ナイ。


「みなさん、ありがと!でも、私が撃った音波であるコトに変わりはありませんから」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


夜明けの御屋敷(メイドバー)


実は、色々あってタワマンの最上階にあるンだけど、今日も遠く地平線の彼方から朝日が飛び込んで来る。


「ルイナ!徹夜したのか?」

「あ、テリィたん…ブラウン運動だと確信してたの。ランダムな変数からミョンの動機が透けて来ると思ってた。でも、何かがおかしい。無閉路乱歩をランジュバン方程式で試したわ。でも、しっくり来ない。ブラウン運動ではナイのか、それともデータに不備があるのか…」

「データに不備があっても、なくても…太陽も、月も、変わらズに運航して"日はまた登る"の」


ギャレーから出て来たメイド姿のミユリさんも…付き合って徹夜したのかw

手にしたお盆には、朝のお茶のセットと、見慣れない四角い…何だょソレ?


「ヘミングウェイかょ…ってか、その立方体の中に立方体が入ってるソレは確か…」

正八胞体(テセラクト)です。時間の捉え方を変えたらどうかなって思って」

「1歩引いて、新しい視点で考えろってコト?」


俄然ルイナが食いつくwあの血走った目でw

ミユリさんは、微笑んで朝のお茶を淹れる。


「テセラクトか。そーだったわ!」

「4次元超立方体だっけ?何に使うのかな」

「ホワイトボードに描かれた四角形は2次元。X軸とY軸で現せる。コレに高さを現すZ軸を加えると3次元。立体になるの」

「その間に2.5次元もアルね」←

「YES。同様に、3次元の物体は4次元の空間にも同時に存在してる。4つ目の軸は時間軸ょ。立方体に4つ目の次元を加えてテセラクトの完成。でも、コレは単なる模型に過ぎないわ。ホワイトボードに描いた立方体がタダの2次元の図面でアルのと同じ。あぁ!そぅだわ!私、2次元のデータを3次元に持ち込んだ時点で、既に間違ってた。ジャドー襲撃の調査には、もう1次元が必要だったのょ!」

「時間軸か。でも、4つ目の次元イコール時間って余りに陳腐だょ。あの古典的SF"タイムマシン"でH.G.…」

「ラモン?最近見ないけど」

「ウェルズだよっ!彼は時間軸は第4軸ではなく…」

「いいえ。やはり時間ょ。襲撃犯の動きを時系列で追う必要があるんだわ」


既にルイナは走り出しているw


「ミユリ姉様、ありがとう。私、ジャドー司令部に戻らなきゃ!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


秘密エレベーターNo.4のドアが開く。中には、メイド服のルイナ、ムーンライトセレナーダー、そして僕。

あ、ムーンライトセレナーダーは、ミユリさんがスーパーヒロインに変身した姿で黒のヘソ出しコスプレ。


「さぁルイナ」


ムーンライトセレナーダーに背中を押され、司令部へと歩み出すルイナ。司令部要員は全員見て見ぬフリ。

まるでスローモーションのような足取りで司令部に入るルイナ。脳裏には襲撃シーンがフラッシュバック。


悲鳴が上がり、銃声が聞こえ、殺人音波が…


「どうしたの?ルイナ」

「私のボードが…私のボードは何処?描きかけの方程式が…」

万世橋(アキバポリス)の鑑識が動かしたんだわ。直ぐに別のを用意するから」


完全に無視するフリして、実は全員、ルイナが心配で耳をダンボにしていた司令部要員は一斉に動き出す!


「おい!パツキン姐さん(ルイナ)に新しい黒板だ!」

「え?黒板って何処で売ってンの?黒板屋?」

「馬鹿野郎!姐さんはいつもホワイトボードだぞ!」


完全武装の海兵隊1コ分隊が文房具屋?へ走る中、とりあえず前のボードが…

大部分、木っ端微塵に吹っ飛んでるが、描き殴った数式の一部が辛うじて…


ルイナが叫ぶ!


「司令官。ジャドー司令部の監視カメラ映像と三脚にレーザーポインター。あと…紐をたくさん!」


ひも?何が始まるの?宇宙の謎の解明?


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


1時間もしない内にジャドー司令部には、縦横無尽に"ひも"が張り巡らされる。

ルイナに命令されて大のオトナが嬉々として"ひも"を持って走りメモを貼る。


「No.2 犯人 音波」

「No.6 海兵隊 電波」

「No.9 エアリ 音波」

     ∬

「No.25 司令官 音波」


色とりどりの付箋に描かれたメモが"弾道"に沿い張られた"ひも"のアチコチに張られ七夕状態だ。

司令部的に恐ろしく邪魔なのだが、全員がルイナ最優先で嬉々として手伝ってるwだが!コレは一体…


「襲撃犯の動きを単に3次元に留めズ、時間軸を補った4次元プログラムで再整理した。気候変動や地質学調査で応用されてる手法ょ。そしたら、襲撃犯シャラの動きにパターンがあるコトがわかった」

「襲撃行動にパターンが?」

「YES。実測データを基に、彼女の行動パターンを4次元モデルに投影してから解析したの」

「何だwひもを使うから、てっきり10次元かと思ったょ」

「ソレは超ひも理論wシャラだけど、周囲の動きに反応しながら乱射を続けてるけど、13発目を撃った辺りから異なる行動パターンが出るの」

「ターゲットのロリコンを見つけたのかな?」

「ブッブー、その反対ょ。テリィたん、ビリヤードでブラウン運動を説明したのを覚えてる?あの例で行くと手球が8番ボールに当たらないように、勝手に向きを変えてる感じ。シャラは、この時だけムダに180度反転して引き返してるの」

「な、何で?」

「この先にあるコラボルームを避けたのね。厳密に言うと、コラボルームで作業中の2人か…どちらか1人を避けたンだと思う。誤射を恐れて、シャラは意図的に回れ右をしたのょ」

「誰か!この2人は誰?知らない顔だわ」

「司令官!彼等は、デブスとタガドです。情報解析のスペシャリストで官邸からの招聘。ジャドー最高機密の閲覧が可能です」

「デブスはいますが、タガドはオミクロン株の濃厚接触者と判明、午後から早退で自宅療養中」

「感染者激減の中でどーやったら濃厚接触者になれるのょ!フザケないで!ブースター接種してココへ連れて来て!今スグ!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


レイカ司令官の逆鱗に触れた海兵隊は東秋葉原のタガド宅へジープを飛ばす。

後席に僕とムーンライトセレナーダーと…何故かホワイトボードw狭いょお←


「エアリに過失は無かったらしいね」

「えぇ聞きました…みんな喜んでるのに本人は落ち込んでwあんなに落ち込むのを初めて見ました…あ、お尻が大きくてスミマセン」

「意外と安産型?」←


ジープの後席でピタリとカラダを押しつけて来るムーンライトセレナーダー、と逝うかミユリさんw

なんなんだ、と思いながらもアキバをもう一回りしても良いのでは、とか貧困ながら妄想は膨らむ←


「着きました」


ビルの谷間の一軒家。こんな物件、良く見つけたなw


「あら。コーヒーカップが落ちてるわ」

「まだ湯気が立ってる」

「我々が来るのを見て、かなり慌てたみたいですね」


海兵隊は、玄関と裏口を固めて突入準備。

だが、僕達は路上駐車中の車の下を覗く。


「見ーつけた」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


同時刻。ジャドー司令部。


「司令官。デブスは事件とは無関係でした。一方、タガドは…大急ぎで逃げ出す理由がテンコ盛りです」

「お金の流れから教えて」

「香港オフショアにあったタガドの口座を調べたトコロ、この数ヶ月の内に1万、2万、5万ユーロの入金がありました」

「賄賂ね?合計8万ユーロの行方は?」

「大半がSMレスラーのデリヘルに消えてます。ソレよりコレ。タガドはマイナンバーのデータベースから、シャラの家族の情報を調べてます。シングルマザーの苦しい台所から娘の学校の予定、特に万世橋(アキバポリス)の防犯カメラ画像をハッキングして娘の通学路の様子も抑えてる。恐らくシャラは、何か娘のコトで脅迫されてジャドーを襲撃したのでしょう」

「なるほど。そして、シャラが乱射中にイキナリ回れ右をしたのは、うっかりタガドを撃てば娘を殺されるからね?しかし、ジャドーを襲撃したのはナゼかしら」


ココでドンドン顔色が悪くなるレイカ司令官が告白。


「ビクタ・ミュラのせいだわ」

「誰ソレ?」

「裏切り者ょ。実は、ジャドーの防衛網には脆弱性がある。彼は、防衛ネットワークのメインフレームに開けたセキュリティホールからコンピューターウィルスを送り込む秘密工作を行って逮捕された。軍事法廷に起訴され、目下、公判中」

「裁判は、いつからヤッてるの?」

「2週間前。秘密法廷ょ。あと3ヶ月続くわ」

「司令官。タガドはミュラのファイルに3度、不正アクセスしてます。3度目は司令部襲撃の朝で、不正コピーを終えた直後にシャラが襲撃してる。うーん今、調べなかったら、この不正アクセスには数ヶ月、気がつかなかったでしょうね」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


引き続き"裏切り者"タガドの尋問。


「ビクタ・ミュラは、蔵前橋の重刑務所で一生暮らすかどうかの瀬戸際で、どーしても自分にとって不都合な証人の名前と住所を調べる必要があった。そんな奴に、お前はデリヘルで遊ぶ金欲しさから、国家の機密情報を売った。そうだな?」

「概ねYES」

「ミュラは、SMプロレスのファンサイトを介して協力者となるお前と知り合った。問題は、事件のファイルを持ち出す方法だった。どーやっても、システムに記録が残る。ただし、狂人が音波銃を乱射しながら暴れまくり、施設全体に緊急避難命令が出る非常事態となれば、話は別だ」

非公然組織(ジャドー)の質問に答える義務は無い」

「なら聞けょ。そもそも、お前のPCの履歴だけでも証拠は充分過ぎルンだ。だが、もしその気があって俺達に協力すれば、ホンの少しだけ罪は軽くなるがな」

「…え。マジすか?何でも歌います」←

「ミョンって誰だ?」

「…ミョンは、ミュラが異次元から連れて来た凄腕の殺し屋です」

「その凄腕が何で襲撃をシャラにやらせた?」

「ミョンが、区のカルチャーセンターで自分と無関係なシングルマザーをスカウトしてきたンです。シャラは、俊敏なレスラーだったから、海兵隊の音波銃も奪える。今回の任務に最適だった。所詮は捨て駒だけど」

「ソレでシャラに娘を殺すと脅してジャドーを襲撃させたのか」

「概ねYES。ただし、実際に脅したのはミュラです。奴は異次元人としても最低です!」


激しく同意スル尋問官。


「次はどの証人を狙う?ミュラは何処にいる?」

「知りませんが、知ってても言えない。俺にだって、家族がいるンです」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


引き続きジャドーの捜査本部。


「"リアルの裂け目"の向こう側に確認がとれた。ウソみたいだけど、ミュラは本名だった。ミュラ・デロマ。南アフリカ軍団の特殊部隊第451落下傘大隊。アパルトヘイト時代に秘密警察の殺人命令を数多く実行し"リアルの裂け目"のアチラとコチラで次元手配されてる」

「秘密軍事法廷の警備を強化しましょう。関係する証人2人をセイフティハウスに保護します」

「ソレじゃ守りに入り過ぎだわ。ミュラの手を先読みして攻めなきゃ!」

「その通り。刑事裁判は自己組織化臨界現象の可能性をハラむわ。つまり、多体システムが複雑系のイベントを起こし得る可能性を示唆スル。例えば山火事、地震、金融市場などね」


その瞬間、ジャドー司令部の喧騒が瞬時に消え去るw


「…ル、ルイナ!頭脳フル回転モードに復活ね?うれしいわ!…でも、お陰で何を言ってるのかサッパリわからナイけどw」

「え。ダメ?」

「全然ダメ」

「OK、司令官。砂山を想像して。砂山に直に砂粒を落とすと砂粒は着地点付近に溜まりだす。そして、砂山の勾配が増すほど、砂山は臨界状態へと近づく。この時1粒の砂が決定的な1点に落ちるだけで、雪崩が起きる。"BTW砂山模型"と呼ばれる現象ね」

「…パツキン姐さん。重要な証人を消せば裁判をブチ壊せるってコトか(そーならそー言えw)?」

「そうよ。激しくYES」

「じゃその1粒をどうやって探す?」

「先ず、証人の重要性や脆弱性など裁判に関わるコトを数値化してアルゴリズムにかけるの。そしたら、変数に有意な差異が生じる場合がアル」

「つまり、パツキン姐さんが方程式を解けば犯人ポイ野郎がわかるってか(そーなら早く計算しろw)?」

「概ねYES。つまり、今回の解は、インターポールのプラク捜査官ょ。ミュラの件でオトリ捜査をした人。今回の重要証人で、軍事法廷で証言スル予定らしいわ」

「大変だ!プラク捜査官の情報を!大至急!」

「本日、プラハから帰国の予定です。ロケット飛行艇で午後の便。現在、北極海上空」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


R(レインボー)L(ラッキー)bird 707 on final」

「KANDA river control 07 south by south 415」

「thank you」


神田リバー水上空港と交信しつつJASSのロケット飛行艇A-3000は川面に白い航跡を残し鮮やかに着水スル。

到着待合に暫し非英語圏の言葉が飛び交い、賑やかに混み合う。プラハからの直行便の時は特に賑やかだ。


「練塀町からパレス。ダルマさんが転んだ」

「パレス了解。ダルマ落としGO」

「練塀町からパレス。ダルマさんがトイレ」


空港で張っている民間人を装った司令官と地下プロヲタのカップルの目の前でプラクはトイレに入る。

レイカ司令官は中に入れない。地下プロヲタがトイレに飛び込むとプラクは洗面台で手を洗っている。


立ち竦む地下プロヲタに、プラクは顔も上げズ一言。


「君。いかにもジャドーだな」

「パレス!バレた!」

「その袖口に向かって喋るのもヤメたらどーだ?」


プラクは、自分のスマホを地下プロヲタに見せる。

家族の集合写真だが…全員猿ぐつわで縛られてる←


「私は、家族を人質に取られたw」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


"外神田ER"のシャラの病室。立哨中の警官にパスを見せてレイカ司令官以下のジャドーメンバーが訪問。


「私達は、タガドを逮捕し、今はミュラを追ってる。既に手配写真がネットに流出し、今じゃ秋葉原のヲタクは全員ミュラの顔を知ってるわ。ねぇ全て娘のためでしょ?脅迫されたと主張するなら、捜査に協力して。貴女達には、証人保護プログラムを適用スルわ。でも、ミュラを捕まえなければ、決して安心は出来ない」

「…アイツ、娘の写真を見せて、従わなければ危害を加えると脅かして来たの」

「やっぱり。今は他の家族を脅してる。奥さんと子供2人で今度はリアルで誘拐されたわ。救出するには、貴女の協力が必要ょ」

「ミュラは…神田川沿いの空き地にあるトレーラーハウスにいるハズ。私も何度か呼び出されたわ」

「くそ、万世橋(アキバポリス)のスグ裏じゃない」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


深夜のジャドー捜査本部。


地下ゲーセンのVIPルームで電話が鳴る。一斉にレシーバーをつけるジャドーメンバー。

追跡システムが起動し、担当官のサムアップサインを確認しプラク捜査官が電話に出る。


「プラクだ」

「軍事法廷での証言内容を変えろ。わかったな?ミュラに無罪判決が出たら家族は解放スル」

「声を聞かせろ」

「今から言う場所に来い」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


"今から言う場所"は、万世橋(アキバポリス)の真裏だ。


今回、事実上ジャドーの単独捜査となってる関係で万世橋(アキバポリス)からの協力は望めない。

神田川沿いの細長い空地に置かれたトレーラーハウスの情報は衛星軌道から届く。


「こちら量子コンピューター衛星シドレです。トレーラーハウス内の熱反応は3体。動きません」

「プラク捜査官の妻と娘と息子だ。ウチのオテンバ司令官殿は配置についたか?シドレ、ソコから見えるか?」

「こちら量子コンピューター衛星シドレです。司令官の識別信号を確認。ターゲットの東北東100mにスーパーヒロインと共に潜伏。チャンネルを開きますか?」

「頼む。司令官、こちらジャドー司令部。何か妙ですゼ。何でミュラは証言前にプラクを家族に会わせるのでしょう?」

「バカね!家族と一緒に始末するつもりょ!トレーラーの前に肥料袋が積んでアル。ガソリンを少し混ぜれば"貧者の核"の出来上がり。アレが爆発すれば一帯はクレーターだわ」

「くそ!2020年のベイルートの二の舞か。しかし、肥料爆弾とは意外に質素だな」

「倹約家ナンでしょ。ミュラの逆探知はどーなってるの?」

「やってます。基地局がヒット。司令官の直ぐそばです。あ、こら。座っててくれ、プラク捜査官!メイドの姐さん、止めてくれ!いや、パツキンじゃなくて妖精さんの方!」


ジャドー司令部では、ルイナ(パツキン)が渋々下がりエアリが現場へ出ようとするプラクを(拘束呪文でw)足止めw


「放せ!俺も家族のトコロへ行く!」

「とっくに放してる。呪文をかけただけwゴメンなさい。でもダメなの。御家族と一緒に吹っ飛ばされるだけだから」


見えない呪縛に暴れる捜査官に、上から目線で諭す。


「貴方は私と一緒にお留守番ょ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


一方、同じメイドのルイナも、おとなしく引っ込んではいない。上空3万6000kmから届く現場画像を凝視。


「ねぇ肝心の黒幕ミュラの居場所は誰か探してるの?レイカは何も考えズに現場に出たワケ?呆れちゃう…シドレ、スクリーンにリアルタイム画像を出して」

「YES ma'am」

「付近のスマホの基地局は何処?司令官の現在地もプロットして頂戴」

「YES ma'am」


直ちに画像に複数の輝点が現れる。


「なるほど。この辺か…約20kgの硝酸アンモニウム爆弾が爆発した場合の環境影響を評価スルと…この範囲かしら。となると、安全地帯はこのゾーンね」


何とCRT画面に直接赤丸を描くwさらに同じ赤ペンで画面に方程式を描き出し計算…ん?シドレより速い?


「な、何してルンだ?パツキン姐さん」

「ターゲットをアフィン変換で球面に投影させ、開集合がないかを確認してる。だって、黒幕ミュラが今いるのは、レイカ司令官が見えず、トレーラーが監視出来る場所でしょ?」

「YES…だから?」

「レイカ司令官!南東へ800mの場所に廃ビルがある。ミュラはそのあたりにいるハズょ」

了解(ROG)ょ天才さん。ムーンライトセレナーダーと移動スルわ。トレーラーは海兵隊に任せる」

「YES, ma'am!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


朽ち果てた廃ビルの3Fから、トレーラーハウスを双眼鏡で見張るミュラ。

トレーラーハウスへと忍び寄る海兵隊は、ミュラの死角に入り見えない。


「パレンバンからパレス。起爆装置のスマホを確認。耐熱シールドで隠してあり衛星軌道からは探知不能だ。シドレ、画像を送る」

「こちら量子コンピューター衛星シドレです。画像確認。ブービートラップの可能性ゼロ。起爆装置の解体方法は…」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「こちらパレス。司令官、配置に着いたら教えて下さい」

「ムーンライトセレナーダーからパレス。司令官は配置に着きました」

了解(ROG)。3, 2…作戦開始」


ミュラの死角からトレーラーハウスに忍び寄った海兵隊が窓から室内へ突入。

同時にベテランの戦闘工兵が肥料爆弾に取りつき起爆装置を瞬時に解体スル。


「誰?貴方達は誰なの?」

「秋葉原のヲタクです。伏せて!声を出さないで!」

「助けてくれるの?」


だが、トレーラーハウスを双眼鏡で監視していたミュラは窓に動く人影に気づき…その瞬間スマホが鳴動w


「私、レイカ。ジャドーの司令官」


振り向くとスマホを耳に当てたゲーセン店員のようなコスプレのハデ女。その横に…

ムーンライトセレナーダー!ヲタクの女神がキメたポーズは必殺技の雷キネシスだw


遠くサイレンが聞こえ明滅スル赤いランプが近づく。

フト気づくと、心臓の辺りで赤い点が複数動いてるw


「トレーラーを爆破させるぞ」

「その前に貴方は蜂の巣ょ」

「デッドマンスイッチだ」

「起爆装置はバラした」


その瞬間、遠い目をしてスマホを放り投げるミュラ。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「聖ヨハネ騎士団にいた頃、クレッソン泉で7000人のサラディン軍に対して我が方は150騎。軍務長官の命じるママに突撃を繰り返し、生存者3名という大敗を喫して騎士団は殲滅された。私は最後まで戦ったと言えば聞こえは良いけど、総長と共に逃げ延びた卑怯者に過ぎないわ」


人通りの絶えた真夜中の駐車場で、メイド服で瓶ビールをラッパ飲みするのは…


「エアリ。貴女は悪くないわ。あのテンプル騎士団も全滅した戦いでしょ?」

「ありがと、マリレ。結局、私は二本足の歴史に名が残らぬよう騎士団の任を解かれ、東方の最果てにある秋葉原に流れ着いてミユリ姉様に拾われた。でも、騎士団が殲滅された日の記憶は消えない。ふとした拍子に、また蘇るのょ」

「エアリは、地球が冷え固まって以来、ズッと生きてルンだもの。色々アルわょね」


ヲタッキーズの相棒、ロケットガールのマリレが答える。彼女もまた、平時はメイド服だ。


「で、どうするの?」

「ソレは…あとホットドックが何本残ってるかによるわ」

「まぁタイヘン。まだまだたくさんアルわ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


同時刻。ジャドーのエスプレッソマシンの前。


「テリィたん。シュガー知らない?」

「エスプレッソにシュガー?万世橋(アキバポリス)の鑑識が何処かに隠したンじゃナイか」

「ひどい1週間だったわ。いつもだけど、ジャドーのお仕事は、解決した夜にドッと疲れが出るの…テリィたん知ってる?スパゲティ1本を曲げると、必ず3本以上に折れるのょ?」

「何ソレ?」

「ファインマンとヒリスが徹夜で実験したの。でも、その理由が解明されたのはなんと20年後ょ」

「何で3本?」

「分裂の連鎖ね。コレも数式の産物」

「だから?」

「え。別に意味は無いわ。タマにはテリィたんとスパゲティを折るのも良いかなって」


ヤタラ古そうなパスタを数本渡される。

砂糖を探してたら期限切れのパスタかw


「あ。ホントだ、何でだろう?」


その時、ムーンライトセレナーダーではなくメイド服のミユリさんが入って来たけど、僕達は気づかない。


「ミユリ」

「あ。レイカ司令官。司令部、かなり片付いたのね」

「お探しはテリィたん?それともルイナ?」

「パーツ通りに来たから寄っただけょ」


ドアのトコロでレイカと井戸端だ。


「ルイナ!真っ二つだ!」

「テリィたん、曲げてナイでしょ?ズルしたわね!」

「え。そーかな」


仲良く?喧嘩スル僕達を見てミユリさんは溜め息だw


「ところで、レイカ。夕食は食べた?ヘルプのつぼみんを誘おうと思ってたらデートらしくて」

「素敵。今夜は残り物かなと考えてたのょ」

「それならキマリね」

「テリィたんとルイナは?」

「ううん。あのままで良さそうょ今宵は」


腕を組んで出て逝くミユリさんとレイカ。

ソレにも気づかズに禅問答を続ける僕達w


「フェットチーネだと?」

「理論は、種類に関係なく適用出来るわ」

「マジか?リングイネでも?」

「もちろんイケるわ」


最終兵器だw


「サト吉の乾麺でも?」



おしまい

今回は、海外ドラマでよくテーマとなる"軍事法廷"を題材に秘密組織の司令部で音波銃を乱射するシングルマザー、彼女を操る異次元人の殺し屋、殺し屋を雇う秘密組織の裏切者、裏切者を追う天才や濡れ衣を着せられた妖精担当、最後まで部下を信じる司令官などが登場しました。


さらに、襲撃に居合せ外傷性ストレスを負う天才の心象、濡れ衣の妖精担当の心理や過去、彼女達を暖かく見守る防衛組織員などもサイドストーリー的に描いてみました。


海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みを、オミクロン型への警戒感を強める秋葉原に当てはめて展開してみました。


秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。

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