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アーウィナは悩ましい日々を過ごしていた。


もうすぐヴァーノンの誕生日会がデスモント家で開かれる。


ヴァーノンの所属する騎士団のメンバーも集まるとあって、アーウィナは緊張していた。


あれからローレライに何度か聞いてみても、笑顔ではぐらかされてしまう。

苛々と不安は募るばかりだ。


このままではいけない。


そう思ったアーウィナは、思いきってヴァーノンに聞いてみることにしたのだ。


(‥‥‥私らしく行こう)


くよくよと悩んでいても仕方ないとアーウィナは顔を上げた。

ドレスに着替えてから、鼻息荒くデスモント公爵家へと向かった。











ゼラニウムと共にデスモント家の屋敷の門の前で、ヴァーノンを待たせてもらっていた。

暫くすると騎士団の制服姿のヴァーノンが馬に乗ってやってくる。

ヴァーノンのいつもとは違う凛々しい姿にアーウィナは感動していた。

しかし、今日の目的を思い出して首を振る。



「おかえりなさい、ヴァーノン様」


「アーウィナ、こんな所でどうしたんだ‥‥?」


「今日帰ってくるとゼラニウム様にお聞きして‥‥お疲れのところ申し訳ないですが、聞きたいことがあるのです‥!私の質問に正直に答えてください」



アーウィナは腹を括っていた。

酒場に行って発散することは、もう出来ない。

だったら真っ向勝負である。


悩んでいたって何も変わらない。


惨めでも愚かでも何でもいい。

どんな結果でも受け入れてみせると。



「この間‥‥ローレライと何を話したのですか!?」


「‥‥!!」


「大切な話をしたと聞きました」


「‥‥そ、れは」



ヴァーノンの気不味そうな表情を見て、アーウィナは固く拳を握る。



「私は‥‥っ!!」


「‥‥」


「ヴァーノン様が、もしローレライが好きだとしても、私はヴァーノン様が好きですから!!」



アーウィナはヴァーノンの胸元に掴みかかる。

その目には涙が浮かんでいる。



「は‥‥?」



ヴァーノンはアーウィナの言葉に目を見開いた。



「確かに出会いはあんなだったかもしれませんが、絶対に私の方がヴァーノン様を幸せに出来ますっ」


「お、おい‥!!」


「だから私との婚約を破棄しないでくださいッ!今回ばかりは絶対に‥っ「‥‥おい、アーウィナ!」


「っ、何でも頑張りますから!!」


「アーウィナ、落ち着け‥!!」



ヴァーノンがアーウィナを優しく抱きしめる。

それだけで我慢していた涙と不安が滝のように流れてくる。


ヴァーノンはアーウィナの涙を指で拭う。

きっと鼻水と涙で酷い顔をしているだろう。

涙でぼやけて何も見えないが、ヴァーノンに呆れられていることだろう。



「ぐすっ‥」


「‥‥一体、どうしたんだ」


「どうしても2人の関係が、気になってしまうのです」


「2人の、関係‥‥?」


「それにヴァーノン様のお気持ちがっ、私にないことは分かっております」


「‥‥何故そう思う?」


「あの日から積極的には触れて下さらないし、愛を囁かれた事もありません‥‥!」


「!!」


「私に女としての可愛らしさや魅力が欠如しているのは認めますっ!でも私は‥っ」





「待て!そうじゃない‥ッ!!」





ヴァーノンの必死に訴えるような声にアーウィナは目を見開いた。



「あんな関係だったからこそ、結婚までは手を出してはいけないと必死に我慢を‥‥っ」


「‥!!」


「‥‥」


「ほ、んとうですか?」



ヴァーノンはアーウィナの言葉に顔を赤くしてから咳払いをする。



「‥‥‥あぁ、本当だ」



まるで子供のようにヴァーノンに気持ちを当たり散らしてしまったアーウィナは顔を覆い隠した。

恥ずかし過ぎて居た堪れない。



「‥‥‥‥‥今のを聞いて、めんどくさい女だと、思っていませんか?」


「思っていない。ただ初めてアーウィナの気持ちを聞いて驚いている」


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