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「俺は‥‥どうすればいい?」


「‥‥」



アーウィナは真っ赤になる頬を隠すように俯いた。

ヴァーノンはアーウィナの言葉を待っていた。

そんなヴァーノンの見えない優しさがアーウィナの胸を熱くさせるのだ。



「‥‥‥ヴァーノン様のご迷惑でなければ、少しだけ此処に居ていただけませんか?」


「!!」



今まで他人に甘えた事がなかったアーウィナにとって、ヴァーノンは初めて自分を受け入れてくれた人だ。

少しだけ勇気を振り絞ってみたが、ヴァーノンはどう思うだろうか。



「‥‥勿論だ」


「!」


「俺もゆっくり話がしたかった」



アーウィナが顔を上げると、そこには嬉しそうな笑みを浮かべるヴァーノンの姿があった。

今までの不安や体の中に巣食う真っ黒な雲が、晴れていくような気がした。


アーウィナはヴァーノンの手を握りながら穏やかな時間を過ごしていた。

今までで1番の幸せを感じながら、アーウィナはヴァーノンの話に耳を傾けていた。













アーウィナがゼラニウムから護身術を習い、デスモント家から帰宅した時だった。


順調なヴァーノンとの関係を崩すような、ある噂がアーウィナの耳に入る。


それは『ヴァーノンがローレライに手を出している』『ヴァーノンはローレライに乗り換えようとしている』『密会している』そんな噂だった。

始めは深く気にすることはなかった。

しかし、ヴァーノンとローレライの噂は瞬く間に広がっていく。


全く信じていなかったアーウィナも、なかなか消えない噂に徐々に不安に煽られていく。


まさかまたローレライに‥‥。

そう思うとアーウィナは居ても立っても居られなくなった。


(もし‥ヴァーノン様がローレライと)


そう考えるだけでアーウィナの心は沈んでいってしまうような気がした。




ーーーそんなある日




もうすぐヴァーノンの誕生日だからとプレゼントを買いに、街に侍女と共に買い物に出かけた時だった。

無事にプレゼントを買い終えて、馬車でユリサルート家へ戻る途中、デスモント家の馬車とすれ違った。


(今日、ヴァーノン様はユリサルート家に来る予定では無かったはずだけど‥)


程なくして、馬車は門の前へと着く。

アーウィナが馬車から降りると、何故か門の前にローレライが居る。

アーウィナは驚き目を見開いた。



「あら‥‥おかえりなさい、お姉様」


「ローレライ‥?貴女一体何していたの?」


「‥‥‥」



そんなアーウィナの言葉に、ローレライは考え込むような素振りを見せてから、こう答えた。



「‥‥どうしてですか?」


「さっき、デスモント公爵家の馬車とすれ違ったの」


「あぁ‥‥お姉様に渡したいものがあると訪ねて来たので、わたくしが代わりに預かりました」


「それは申し訳ない事をしたわ」


「大丈夫ですよ?お姉様の代わりに、わたくしがヴァーノン様のお相手をずっとしていましたから」


「!!」



ローレライは機嫌が良さそうに笑みを浮かべていた。

気になるのはヴァーノンと何を話したか。



「そうそう、お姉様‥‥これ、ヴァーノン様からです」



ローレライから渡されたのは一枚の手紙だった。

そこには仕事があり、暫くは会えないと書いてあった。

アーウィナはヴァーノンから渡された手紙をぎゅっと抱きしめた。



「ヴァーノン様、お忙しいみたいですね」


「‥‥。えぇ」


「明日からは、暫くは会えないと書いてあるのでしょう?」


「!!」



何故、ローレライが手紙の内容を知っているのか‥そんな些細な事ですら、アーウィナにとっては不安要素になってしまう。



「お姉様に伝言で、"またゆっくり話そう"だそうです」


「そう‥‥‥ありがとう、ローレライ」



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