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第三百六十六話 霊会

ユ「時間的にはこんばんはだろ」

「ですね」


真っ暗な夜に王都の中で話し声が二種類聞こえてくる

片方は声が低く中年のおっさんのような無気力さを感じるが、張りから少年のような好奇心とやる気も感じる

もう片方は少女のような高い声だが、人間では無い


ユ「メリーさん」

「はい、今日は。何の用ですか?」


たまに、こうやって夜話していたりする

だけど、今回は違う


ユ「今日はあるやつに会ってもらう」

「あるやつ?」

ユ「この前、お前と約束しただろ。他の幽霊に会いたいって」


小指を上げながらゆびきりげんまんのポーズをした

すると、幽霊だから生きてはいないけどもメリーさんの目は生き生きしたものになった


「もしかして、見つかりました!?」

ユ「ああ、すぐ行こう」


転移で、すぐに飛んでいった


ユ「ここだ。最近来たところなんだけどさ」


神社の鳥居のところに来た


ユ「さて、山の上に行くか」


ちょうど真ん中くらいだったので、ゆっくりと歩いて上がろうと思う


「上なのに。なぜ、ここに転移したのでしょうか?」

ユ「まぁ…一番印象に残っていたからかな」


戦ったところだし


ユ「雰囲気を味わってもらおうじゃないか」

「ここはあなたの場所ではないのに」

ユ「ぐっ…」


確かに、そうだけど

と考えながら、少し会話もして、登っていた


ユ「はい、着いたよ」


頂上へと到着した


ユ「まぁ、俺だけだと見えないから…“第三サードアイ・霊視”」


今の自分の目では見えなくとも、見える目を作れば問題ない


ユ「うわっ、居た」

「あの子が居なくても見えるのですね」


すでに自分が一歩出たらぶつかるくらいの距離に立っていたのだった


ユ「うーん…まぁ、やろうと思えば」

「今日はなぜいらっしゃったのですか?船で帰ったときは、幽霊総出でお見送りをしたのに…」

ユ「えっ?マジで?」


なにそれ知らないんだけど


ユ「そもそも見送りされてたこと知らないんだけど...」


完全に初耳の情報だった

自分が船で船酔いで寝ていたということもあるけど


ユ「それは見えてなかったな」

「この人が紹介したかった人?」

ユ「ああ、そうだ。えーっとな。こいつ厄病がはっ!」


大幣で喉を突かれた


「それを祓う者なので、変な誤解は遠慮していただきたいです」

ユ「悪い」


ちょっと痛い


ユ「そっちこそ誤解を与えそうな大幣の使い方をしていると思うが」

「大丈夫です。一応、これは武器なので。相手を殺すためのものだったりします」


確かに武器はそういう使い方はするけども

俺の知っているところでは、違うはずなんだがな


ユ「あっ、うん。だけど、魂は奪わないでくれよ」

「さぁ、どうしましょうか」


なんか、こいつの雰囲気あのどっかのスライムに似ているな


ユ「今日さ、お前みたいな幽霊に会いたいって言ってたやつが居たから、紹介していいか?」

「それが、そこの可愛らしいお人形さんですよね?」

「よろしくおねがいします」

「お願いします」

ユ「まぁ、慣れるようになるまでは時間がかかりそうだな」


巫女の後ろに数十匹のおばけがいる


「どういうことです?」


簡単にわかりやすく説明した


「だから後ろに大量の幽霊がいるのですか」


同じおばけの類だから見えているらしい


ユ「そゆこと」

「はじめまして、私メリーさんといいます」

「こんばんは。そして、はじめまして。私は死霊人族の…」


緊張で言葉が詰まったのか?

突然止まったけど…


「私は…私は…私…は?」

ユ「名前、思い出せないのか?」

「意外ですね」


自分の名前を思い出せないなんて、メリーさんやメリーさんを無くしたメイドですらそんなことなかったのに


ユ「リーファは名前を知ってるんだが…年齢か…っ!」

「そうかも知れないですね。長い間自分のことを名乗らなかった弊害かもしれませんね」

ユ「…大幣で喉を突き刺さないのか?」


女の人が気にしそうなことを言ってしまったのに気づいて、なんか攻撃されると考えたけど

何も起きなくて少しびっくりしている


「なぜそんな物騒なことをしなければいけないのですか。汚れますよ。それにあなたが死にますよ」

ユ「そんなんでは死なないと思うがな」


その首を貫かれた状態に適応すれば生きられそうだ

あと生命力的に

だが、やるとは言っていない


「生命力がすごいのですね」

「確かに、あなたがそんなのでは死ぬ気がしませんね」

「私が、ゴミ箱に居た頃のあの黒く光る虫を思い出しますね」

ユ「えっ…」


黒光りする汚いところにいる虫といえば

一つしか出てこない…


ユ「逃げていいか?」

「そう言えば、私の持ち主もその虫を見た瞬間腰を抜かしていましたね。人間にとっては恐怖の対象なのですか?」

ユ「ああ、病気のもとでもあるし。汚いものは苦手だからな」


万病の元といえば、別のものもあるが


ユ「ネズミとかもだな」

「そうなのですか?」

ユ「変な菌を持ったネズミが現れて、世界中に広がって、人口が3分の1になるかもしれんしな」


この例はペストだな。恐ろしい感染症だ

ネズミから感染するものだから例えとして出した


「恐ろしいですね」

「あなたの来たところはそんな事もあったのね」

ユ「あー、うん」


そういや、俺達はこことは違う超遠い場所から来たことになってるんだよな

青スラさんたちの中でもな


「その菌というのは、駆除されたのでしょうか?」

ユ「一応されてる」(はず。そこまでは詳しくない。もしかしたら、まだ残っているかもしれんし)


ちょっと確証はなかったから、自分の心の中で保険をかけ続けた


ユ「知らない病気が来たら、俺でも治せない可能性があるからな。予防してもらいたいものだ」


俺の知らない物質が必要な薬とかだったら

治すことが出来ないからな


ユ「まぁ、そんな事は今はいい。女子会でも楽しんだらどうだ?テーブルとかは出すぞ?」


女子会をするために、メリーさんをここに呼んだからな


「女子会ですか…では、他にも数人…数霊呼んできていいですか?」

「いいですよ。待っています」


女子会という言葉を聞いて、メリーさんが楽しみにしている感じがする


ユ「じゃあ、お菓子とかお茶とか用意すっか」

「それは大丈夫です」

ユ「あっ、そう?」

「神社の中にあるので」


巫女はこっちの文化のものを一緒に食べるつもりか?

異文化交流としては良いのかもな


ユ「まぁ、新しく欲しくなったら言えよ」

「わかりました」


そして、巫女は飛んでいった


ユ「幽霊だからか、当たり前のように飛べるんだよな」

「私もですよ」

ユ「いや、あいつは半分くらい人間だから」

「そうなのですか?」

ユ「…まぁ、帰ってくるまでの間に説明するか」


簡単に説明した


「それが、先程言っていた。死霊人族というものですか」

ユ「ああ、そうだ」


説明し終わったあと

ちょうど巫女が女のおばけを数体連れて帰ってきた


「連れてきました。自己紹介お願いします」

「ちわ〜。あたし口裂け女って言いま〜す」


印象としては結構軽い感じのおばけだ

手にはさみを持っている


「少し前に来た冒険者の集団にいた少し軽薄そうな男に憧れてこうなりました」

テ『ユートさんみたいな理由ですね』

ユ『うっせ』


憧れるという点はそうだけど

流石にこんな感じにはならないと思う


ちまたでは八尺様と言われています。小さい女の子が大好きです。ふひひ...」


危ない匂いしかしない八尺様も居た


「そこの口裂け女によく絡まれる貞子です」


意外と普通そうな

少し暗めの貞子が居た

テレビとか出てきそう


「普段は井戸に住んでいるけど、今さっき口裂け女に引っ張り出されました」

ユ「…おつかれ」


大変なんだな、こいつも


ユ「じゃあ、俺はそこらへんで待ってるよ。終わったら言ってくれ」


メリーさんは素数歩が使えるとはいえ、それでも船で一週間かかる距離だ

だいぶ遠いので、俺が転移で戻すことにした


「わかりました。では、こちらへどうぞ」


巫女が神社の中へと案内していった


「お邪魔しま~す」

「お邪魔します」

「…」


皆、恐ろしそうな顔をしながら入っていった


ユ(よくよく考えたら、メリーさんって消化器官どうなってるんだろう…)


などと考えている間に

女子会は始まっていた


「…」

「…」


とは言え、中は沈黙に包まれていて

何一つ言葉を発しない

はっきり言って、地獄だった


「他のお菓子も持ってきますね」


巫女が一番最初に立ち上がって部屋を出た


「じょ…女子会とは、何を話せば…」

「それよ〜。私達今まで、こうやって集まって話したことが無いもんね〜」


その後、話題のなさによる沈黙に耐えきれず

貞子と口裂け女が声を発した


「おや、これが初めてなのですか」


メリーさんは、先程の自己紹介をしたときのやりとりから

意外と交流がありそうだと思っていたらしい


「いつも、離れて過ごしていたので」

「それは…なぜでしょうか?」


周りに他の幽霊があまりいないメリーさんからしたら

わからない感覚だった


「力の強い者には逆らえないので」

「…それで、理不尽な命令などを受けないように逃げていたということですか」

「そうですね」


察する力が強い模様


「あの巫女さんがでしょうか?」

「はい…」


かなり怖がられていたみたいだ


「そうですか...それは、過去に話したことがあるのですか?」

「…無いですね」


どうやら、感覚で力の差がわかるから

話したりしないのかもしれない


「今日、初めて会って会話してみましたけど。いい人だと思いますよ」

「…そう…なの?」


疑問形である


「とても優しい方だと思います」

「…今度から、話してみる」


説得が聞いたのか、会話を試みるみたいだ


「いえ、今回のこの女子会でやってみましょう」

「こ、今回!?ちょっと…それは、心の準備が…」


貞子の顔は髪で隠れているはずなのに、なぜか赤く見える


「それは怖いからですか?」

「うぅ…そうです…」


メリーさんは少し悩んだ

だが、一つ良いアイデアが出てきたみたいだ


「では、あの子の可愛い場面を少しお話しましょう」


そのひらめきをしたとき、顔が少し悪いことをしているときのユートやキクチに似ていた


「…なぜ、知っているのですか?」

「ここに来る途中にユー…知り合いから聞きました」

「あの巫女と戦っていた人ね」


名前の前半だけで理解したらしい


「では、まずひとつ目に…」


と、一つずつ巫女のかわいいエピソードを話していった


--------------------


ユ「あってすぐに女子会とは結構メリーさんもコミュ力があるもんだな」

「…」


神社の廊下に俺達は今いる


ユ「良かったな。戻ったら、楽しく会話が出来るぞ」

「…よく他の幽霊に避けられると思っていましたが…そういうことだったのですね…」


幽霊とすら、話していないから

話し方に違和感があったのかもしれない


「ありがとうございます…」


感謝されたが、それは俺へのものではないはずだ


ユ「それは、メリーさんに言ってくれないか?」

「…はい」


ちょっと涙目になっているのを、袖で拭いて

少しのお菓子を持って部屋に戻った


「おかえりなさい」

「巫女ちゃーん!もっと話そう!」


温かく迎えられて

また泣きそうだったが、それを悟られないように静かに嬉しそうに座った


ユ「これで楽しく過ごすだろ」


そして、転移で神社から抜けて鳥居の上に座った

大きいから俺が寝っ転がっても平気なレベルだ


ユ「さて、俺の会話相手は居ないだろうか。特に男の幽霊」

「俺らみたいな、ただの幽霊は結構いるぜ〜」


霊視を通して、さっきから俺の周りに幽霊がたくさん飛んでいることは見えていた


ユ「まぁ、そうだよな…」

「あういう名前のついた、この世にに干渉できる幽霊は数少ないんだぜ〜」

「俺らはただのモブだから〜」

「そーそー。一般の男の幽霊よ」


名無しのただの幽霊ってことか


ユ「まぁ元々、社会的立場が男のほうが強くて女の人を虐げていたりしたから、女性に関する恨み話が多いんだよな」(こっちの世界ではどうだったかは知らんが)


例を上げるなら、お岩さんとかだ


「一応、居なくはないんだが…その幽霊は…」

ユ「ん?」


なんかやばいやつなのだろうか


「一人だけだが、恐ろしく…」

ユ「怖いのか…」

「いや、良いやつだ」

ユ「えっ?」


良いやつなの?


「ああ〜、こいつこいつ」

ユ「っ!?」


気がついたら、俺の横に座っていた


ユ「お前は?」

「余?余はただの幽霊よ」


初めて会うタイプの幽霊だった

声は力強く、気品もあって貴族のような感じがした

だが、服装がかなりボロボロだった。なぜだ?


ユ「一人称が余の幽霊は初めて出会ったんだが」

「はっはっは!確かにそうかもしれぬな。余はかなり昔からおるからのぉ…」


幽霊基準のかなり昔というのは

本当に『昔』なのだろう


ユ「何年くらいだ?」

「おそらく1000年程度だろう」


大体、古龍とかプラタナさんと同じくらいか

まぁ、プラタナさんはそれ以上の可能性があるが


ユ「名前は…思い出せるのか?」

「うーん…幽霊になると名前は思い出せぬのだ。悪いな」

ユ「おお、そうか…」


あの巫女はそういうところも、共通しているのだろうか


ユ「なんか人生で覚えていることとかはあるか?」


もう聞いてしまって遅いが、聞いて大丈夫だっただろうか


「うーん…強い恨みを持って呪い言葉を吐きながら自殺したのは知っているぞ」

ユ「…お前…怨霊か?」

「ああ、そうじゃ」


それを聞くと突然体が震え始めた


「普通の幽霊よりも怨霊の方が強くなるのは当たり前のことよ」


まぁ、言われればそうだな


ユ『なぁ、テキストさん。霊には詳しいか?』

テ『ある程度はですが、この人は知っています』

ユ『有名な人なのか?』


この世界では有名な人なのかもしれない

よくよく考えたら一人称が『余』だし


テ『前の世界で例えるなら…崇徳天皇的な幽霊ですね』

ユ『えっ…』

読んでくださりありがとうございます

もし誤字、質問、変なとこなどがありましたら教えてください


この話へ一言 ユートから

ユ「冒険者ギルドでトイレ行っておいてよかったぁ...」

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