第二百八十九話 字が下手な人からする、最悪の行事
ユ「おきろー、ご飯だぞー」
ドス!ドス!
朝聞こえてきたのはフライパンのようなうるさい音ではなく
かなり重たい音が鳴っていた
そして、俺が皆のことを起こす声も聞こえてくる
シ「起きろ」(“水球”)
シューゴが魔法で少量の水を顔にかけて、皆を起こしている
カ「う、うーん」
目をこすりながら一番最初に起きたのはカンタだった
カ「な、何してるのー?」
俺達が今やっていることを見て
聞いてきた
ユ「そりゃあ、餅つき」
去年できなかった餅つきを今、シューゴと一緒にやっている
俺が餅をついて、シューゴが水を入れている
ユ「どっこいしょ!どっこいしょ!」
シ「ほぼ一日中起きてるのにやる気しか無いな」
ユ「徹夜なんてあってないものだから!」
シ「いやあるから。あと俺眠い」
深夜…いや、徹夜テンションでちょっといつもより気分が上がってる気がする
もちろん徹夜なので隈がすごいことになっている
シ「寝たほうがいいんじゃないか?」
と言いつつもシューゴも寝ていない
ユ「二秒だけ寝てくる」
と言って二秒後起きた
ユ「おはよう」
シ「おはよう」
そしてテンションはもとに戻った
ユ「前まではずっと起きてても平気だったんだけど、最近良く寝るようになったから一日中起きるとかの機会が少なくなったな」
前の世界ではよく遅くまで起きたもんだ
シ「だから、いつもよりハイになってたのか?」
ユ「そうかもしれん」
わからないけどな
シ「よくラブコメ読んでる時も同じ顔とテンションだけどな」
ユ「マジで?」
シ「自覚なし…だと…?」
めっちゃ驚いてるから、多分本当に気持ち悪いような反応をしているのだろう
ユ「今度お面とかしたほうがいいだろうか?」
シ「流石にやめてほしい」
家の中でもお面はやめてほしいらしい
キ「お、餅つきしてる」
ユ「お餅つきしてるよー」
シ「なぜ丁寧語?」
ユ「だってキクチが」
キ「丁寧語じゃないよ!」
いつも通りふざけながら会話を繰り広げていった
そして、餅もついていった
もうそろそろ完成する、といったときにもうほぼ皆は起きていた
ユ「餅だぞー!」
魔「何だこの白いネバネバしたものは!」
反応が初々しい
初めてなんだろうな
鬼「これは餅というものです。おいらの故郷のものです」
シ「故郷?」
サ「魔王軍幹部というのは推薦されてきたもの、もしくは長い間努めていたものなどがなっている。そこの鬼は推薦できたんだ」
ユ「なるほど〜」
ということは実はあの鬼、強いのかもな
などと考えていたので、強いとは思っていなかったようだ
シ「その故郷に興味があるな」
鬼「え?」
シ「今度詳しく教えてくれないか?」
鬼「わ、わかった」
日本発祥である鬼の故郷が気になったみたいだな
いい情報を得たいな
ユ「だが、今は餅を食べよう」
リ「もっちもちー!」
フィ「硬い…」
リーファは楽しそうだが
フィルは食べるのに苦労をしている
ヒ「歯がとがってて、中々噛み砕けないのだろう。あと顎の力が足りないのかもね」
ユ「なるほど。じゃあ、フィルだけちょっと子供でも食べやすい餅にするか」
餅を新しく作って渡した
ユ「というか犬歯(尖ってる歯)って噛み砕くものじゃなかったっけ?」
ヒ「餅には通用しなかったみたい」
そういうことか
役割果たせてないじゃん
ユ「この後正月っぽいこと何する?」
シ「書き初m…」
ユ「断る!」
ア「速い!」
反応したのがシューゴじゃなくてアユムだった
アユムのほうが速く反応するってことか
シ「うまく書けないからって即否定しなくてもいいでしょ」
遅れてシューゴが言ってきた
ユ「でもできないからなぁ…」
カ「やってみよーよ〜」
皆から言われたので、とりあえずやってみることにした
ユ「何だこの記号は」
書いてみたものの記号の羅列が出来上がった
シ「下手だな」
ユ「…」
何も言えねぇ…
ほんとに赤ちゃんが筆を持って適当に絵を書いたみたいな文字が出来上がった
青スラ「ユートさん…」
哀れな目をしないでほしんだが
イ「と、とてもうまい絵ですね!」
ユ「…」
絵じゃないんだけど…
と思いつつも、頑張って励ましてくれるイリヤに何も言えなかった
魔「できたぞ!」
鬼「おいらも」
サ「全く、簡単だな」
魔王は子供っぽさを感じるけど、かなり豪快な書き方だった
鬼は見た目に合わないけども、性格が出ている
サタンは普通にうまい
ユ「魔王は俺と同じくらいか?」
サ「魔王様とお前を一緒にするな!」
怒られちゃった…
リ「できた〜」
フィ「うん」
二人ともうまい
カ「うまいな〜」
ユ「…」
凄い激しい劣等感を感じる
キ「字だけは絶対に勝てる自信がある」
多分勝負挑むことないと思う
ヒ「俺もあまり上手くないから」
ア「ぼ、僕もだから」
絵はうまくないけど字はうまい二人組みがフォローしてくれた
ありがたいけど、あんまり嬉しくない
ユ「後で餅つきをして怒りを収めてくるとするか」
シ「どんな方法?」
確かに方法は謎だけど怒ったエネルギーを全部餅に変えるから悪くないと思う
イ「餅料理が多くなりそうですね!」
青スラ「とうぶんは餅でしょうね」
イリヤは楽しみそうだけど
青スラさんはちょっと嫌なのか?
ユ「嫌なのか?」
青スラ「消化しにくいので…」
ヒ「餅は大体がお米だから消化しやすいと思う…」
なのに何で消化しにくいんだろう
シ「デンプンの消化酵素が無いとか」
ユ「アミラーゼか。そうかもな、よだれとか無さそうだし」
そもそもが液体だもんな、こいつ
青スラ「美味しいから気になりませんけどね!」
ユ「ならいいじゃんよ」
問題無さそうだ
キ「シューゴ、今年も羽根つきしようぜ」
シ「おっけ。いいよ」
シューゴは立ち上がった
そして、二人は去年の羽つきの板を俺からもらった
ユ「おらよ」
シ「ありがと」
キ「ありがとう」
受け取ってからすぐに試合を始めた
ユ「さぁ、よってらっしゃいみてらっしゃい!キクチ対シューゴの勝負どちらが勝つと思うか!賭けてもてもいいぞ!」
魔「魔王城にお金なんて無いんだが…」
ユ「えっ、まじ?」
どうやら魔王城にはお金がない
なぜなら、お金なんて必要ないからって言っていた
ヒ「ご飯は自分で狩れるからね」
ア「ね、寝るところも準備できるし」
カ「俺達みたいな過ごし方してるからいらないよね〜」
俺達と同じような理由でお金がないみたいだな
ユ「じゃあ、ハイ。これなら楽しめるだろ」
とりあえず白金貨めっちゃ渡した
魔「な、何だこれは!」
ユ「うーん」
言葉が出てこなかった
ヒ「投資?」
ユ「そうだな」
言葉が出てこなかったけどヒラノが言ってくれた
魔「お、大きいな」
そりゃあ、袋にめっちゃ詰めたやつだからな
多分国家予算のほうが多いと思う
こんなにお金を出せるんだから
だけど、結構圧倒されてるな
サ「お前!魔王様に何をするつもりだ!」
ユ「何もしてないだろうが!」
目の前に居たのに何を言っているんだこいつは
ユ「でも、そういえばこの前サキュバスはお金持ってたくない?」
サ「いや、給料としてお金をもらってはいるんだが。この前魔王様が煙突を作ったせいでかなりお金がなくなって…」
あのバカでかい煙突かよ
ユ「クリスマスのか?」
魔「それ以外にも色んなことに使ったらいつの間にかなくなってた!」
ユ「やっぱり渡すのやめようかな」
ヒ「それのほうがいいと思うよ」
何かやめたほうがいいがしてきたんだけど
ヒ「でもそれまで大丈夫だったのなら、いいんじゃない?」
ユ「そうか。じゃあ、渡すよ」
お金を渡して今度はちゃんと稼いでもらうことにした
ユ「そもそも必要かどうかは知らないけどな」
さっき話してたとおり、いらないかもしれない
だけど、渡した
ユ「そういや、賭けどうする?」
キクチとシューゴはまだ打ち合っている
カ「キクチに銀貨一まーい」
ア「シューゴに銀貨一枚」
皆順番陰誰に賭けたかを言った
魔「シューゴに白金貨一枚」
ユ「お金は大切に使えよ?」
早速不安になってきたけど大丈夫だろうか
サ「先に何かが壊れるに金貨一枚」
「わ、私も…」
ちょっと気になった
ユ「お前、お金持ってるの?」
こくっとうなずいてきた
キクチが居ないとあまり話してくれないな
「冒険者から…」
ユ「なるほど。とったのか」
ということはかなりの量のお金を持っているのでは?
気になった正直そんな興味はないのでそこで会話が終わった
ヒ「俺はいいかな」
鬼「おいらも」
二人とも賭けに参加しないようだ
数時間後
ユ「結果、引き分け!」
疲れ果ててふたりとも同時に倒れたのだった
ユ「どっちも体力は本当に多いからな」
持久走1位と2位の二人だからな
すげぇ
ヒ「そろそろ帰ろう。迷惑になるよ」
ユ「ああ、そうだな」
カ「帰ろうぜ〜」
キクチとシューゴは回復させた
キ「あ~、生き返る〜!」
シ「疲れが殆どないな」
回復して帰る準備を済ませて
俺達は出口に向かった
キ「あっ、忘れてた!」
何か忘れていたようで振り返った
カ「忘れもんか〜?」
ユ「忘レモン?」
シ「…」
ユ「冷たい目をするのはやめてくれない?」
シ「…」
それでもやめてくれなかった
ずっとされるのはキツイので話題転換しようと思った
ユ「それで何忘れたの?」
キ「名前」
ユ「?」
キ「この子の名前。聞くの忘れてた」
ユ「あ〜、そういえばそうだったな」
俺も、楽しくて忘れてたな
ユ「俺が聞くより、お前が聞いたほうがいい」
俺達の声がまぁまぁ大きいからから
ちょっと女の子が期待してるように俺は見える
キ「行ってくる」
近づいてキクチが聞きに行った
キ「名前は何ていうの?」
「…無い」
ユ「えっ…」
期待しているように見えたのは幻覚だったのか
もしくは俺の目が腐ってたのか…
「ない。無いから、つけてほしい」
そっちか
俺達の声を聞いていた時から言うつもりだったな
キ「え、俺?」
困惑して俺達の方を見てきた
俺はそれに対して、今までにないくらいニッコリと笑い
親指を立てた
ユ「頑張れ」
シ「はたして嫌がらせができてるから悪い顔なのか、自分が楽しめてるからいい顔なのか」
ユ「どっちもに決まっているだろう」
ヒ「楽しそうだね」
皆も遠くから見ているが
ユートのような考えは持っていない
キ「えーっと…」
すぐに名前を考え始めた
キ「シャーリーとかどう?」
「わかった。シャーリーって名乗る」
ユ「なぁー!キクチー!なんか意味とかあるの〜!?」
反撃されないように遠くから聞いた(悪意・善意どっちもあり)
キ「…意味は特に無い!今思いついたからだよ!」
ユ「…そう?」
意味をつけないでつけられたと思うと悲しむと思うが?
キ「…」
罪悪感を感じたのかキクチが少し怖そうにしながらシャーリーの方を見ると
目を光らせためっちゃ嬉しそうな顔のシャーリーがいた
「ありがとうございます!意味がなくとも名前をつけてくれただけでも嬉しいです!」
そのまま感謝されて
俺達はダンジョンに戻った
魔王たちも城に帰っていった
ユ「それで〜?本当に意味無いの〜?」
キ「…無いよ」
ユ「ほんと〜?てっきり俺は意味をつけて名前を読んでみてけどやっぱり恥ずかしくなって、訂正しようと思ったら嬉しそうにしちゃってるから引けに引けなくなったキクチしか見えなかったけど〜!?」
キ(何でこういうところだけ鋭いんだよ)
怒ったのかそのままキクチはどっかに行ってしまった
ユ「あら、やりすぎたかもな」
俺はニヤニヤしながらも、ちょっと後悔して部屋に戻った
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キ「はぁ〜」
キクチは自分の部屋に居ながら深いため息をついた
キ「かわいいって意味でつけるんじゃなかったな…」
まさに図星だったから何も言い返せなかったのである
キ「でも、そう呼んじゃったし。呼ぶしか無いよな…」
後悔の念は一日中続いた
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ユ「気づいた人?」
シ「うん」
カ「何が〜?」
ヒ「何のこと?」
ア「えっ、何のこと!?」
気づいたのは約二人である
もし誤字、変なとこ、質問などがあったら言ってください
この話へ一言 ユートから
ユ「まさかキクチの得意な言語から引っ張ってくるなんてなぁ…」
キ「tais-toi」(訳:うるさい!)
 




