第二百八十八話 3秒前
目が覚めた時にはもうそろそろ年を越しそうだった
ユ「心臓の鼓動が一瞬でめっちゃ強くなると吐血するんだ。初めて知った」
シ「俺も初めて他人の恋を見守る人で吐血した人を見たよ」
頭の上に氷のうが乗っけられていて
今も近くで立っている、シューゴの魔法によってより冷やされている
ユ「冷たいな」
0度より冷たそうな感じがする
シ「お前の体温が高いから、ずっと冷やしてないと溶ける」
ユ「基礎代謝が高いからな」
いつも暑いときに頭とかに氷のうを乗っけると数分で溶けるから困ってたんだよな
ユ「氷漬けとかにされても抜けれる説あるな」
シ「そもそもならない気がするけど」
凍らない気がするな
ユ「俺の吐いた血ってどうした?」
シ「俺が魔法で即片付けたよ」
血が出てるとグロいからな
まぁ、皆戦場を生きてるような人たちだから慣れてるんだろうけど
ユ「恋って良いね」
見てるだけで叫びそうになるからな
だけど、ちょっと違和感が…
ユ「性欲なしのダンジョンのボスでも恋はするんだな」
シ「それは思った」
思ったのなら言ってくれよ
テ『ダンジョンのボスと言えど、不老なのはあなた達だけで、普通のダンジョンボスにも寿命はありますよ』
ユ『そうだったのか』
だからちょっとアタックしてるように見えるのか
テ『ですが普通の人よりは何倍も寿命が長いですよ』
シ『なるほど』
ユ『ということはつまり…』
寿命が長いってことは…
ユ『その分、恋を見守れるってことじゃないか!最高じゃん!』
シ『…確かにそうだが…』
多分こんな考え方をするのはこいつだけだろう
ユ『あ、もちろん恋だけじゃないよ』
シ『それは知ってるよ、お前だからな』
ユートは前の世界で皆が結婚する時、式には行かないで
個人で二人のことをめっちゃ祝いたいとか言っていた事があった
ユ「そんな事言うのは俺だけだよな」
シ「他にも居たら驚くわ」
ユ「俺もびっくりする」
流石にそんな人は他には居なかった
会ってないだけかもしれないが
ユ「皆は?」
俺がぶっ倒れてからちょっと違うところに移動させられていて、誰も近くに居なかった
シ「起きたときに、あるものを作ってもらおうと思って。外に来たんだ」
起きた時に、すでに俺は外に居た
上には月があって結構眩しい
ユ「もう元気だから良いんだけど、何を作るんだ?」
シ「除夜の鐘を頼む」
確かに大晦日と言ったら、除夜の鐘だな
ユ「ああ、それなら去年作ったよ」
シ「…作った?」
思い出せないみたいで首を傾げていた
ユ「去年除夜の鐘なったじゃん。あれは俺が作ったやつで、天使の人に時間になったら叩くのを頼んだんだよ」
敵を倒したからお礼としてこれを頼んだんだよな
「お礼をさせてください」って一部の人が言ってきてうるさかったからな
ユ「だから、出すだけで終わるよ」
シ「じゃあ、出してくれ」
ユ「おうよ」
アイテムバックの中から除夜の鐘を取り出した
普通サイズでもかなりでかいからちょっと持ちにくかった
ユ「ここらへんに置いておくか」
ドスン!
シ「あぶな…ちゃんと置くところは考えろよ」
ユ「あっ、悪い」
地面があまり平らじゃないので
倒れてきたりとかしたら少し危なかったかもしれない
いや、めんどくさかったかもしれない
ユ「どうせ倒れてきたとしても耐えれるし、どっちかというと鐘が壊れる可能性があるからな」
シ「あとその鐘を引っ掛ければ…」
ユ「よし…できた」
丸太とかを使って、鐘を引っ掛けるようなところを作った
ユ「これで後は、鐘をこの長い棒みたいなので叩けばいいはずだ」
シ「撞木な」
ユ「そうそれ」
語彙がない時たまに補ってくれるからありがたい
ユ「あと何秒だ?」
シ「あと…」
俺の作った時計で時間を見ている
シ「三、二…」
ユ「えっちょっとまって早くね?」
シ「一」
ユ「おらっ!」
焦り気味で、俺は撞木を使って、鐘を叩いて、鳴らした
ゴーン!
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数分前
カ「ユート、何で吐血したんだろうね〜」
ゲームしてたカンタは気づいていない
ア「だ、大丈夫かなぁ?」
ヒ「シューゴが除夜の鐘を設置するために連れて行ったけどね」
知っている二人は少々心配しているけど
大丈夫だと思っている
魔「もしや戦いの後だったのか?」
サ「だとしても転移を使えるだなんて…」
引き気味だ
キ「転移魔法はそんなにすごい魔法だったりするのか?」
いつもユートやシューゴがガンガン使っているから
どんなものなのかはわかっていない
サ「ああ、転移魔法は限られた人は知っているところにのみ移動ことはできるが。普通は転移すらできない。しかも魔力がだいぶ余ってる状態のみでだ」
その説明を聞くとキクチは魔王の方を振り向いた
魔「そもそもの消費量が多いからな!」
誇らしそうにしているけど
確かにそうなのかもしれない
キ(それを聞くとユートやシューゴがいかにおかしいかがわかる)
シューゴは何回でも転移ができるし
ユートは場所の光景さえ思いつけば、どこでも行けるからな
ちなみに今まで転移魔法を使ったことあるのはこの二人と魔王と帝国の勇者だけだ
ゴーン!
ユートたちが叩いた除夜の鐘の音が聞こえてきた
キ「おっ、年越しだ」
皆は、響いてくる除夜の鐘の音を静かに聞いていた
ベコッ!
ヒ「!」
キ「音が変わったな」
ア「な、何があったんだろう…」
アユムは不安そうにしているけど
それ以外の男子は予想がついている
他の皆は除夜の鐘をあまり知らないからか違和感を感じていない
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ユ「あちゃー、壊れた」
予想通りである
シ「やりすぎだ」
ユートが壊れた鐘を持ちながら言っている
ユ「すぐに直すしか無いな」
力加減を少し間違えて壊れてしまった鐘をすぐに直し、また鳴らし始めた
ユ「…なぁ、二年経ったけどさ。俺達って帰れるのか?」
シ「わからない。ほとんど手がかりがないんだ」
シューゴたちがよく冒険とかで色んな所に行ったりしてるけども結局何も手がかりがない
ユ「ここで永遠と過ごすのかなぁ…」
シ「帰りたいとは言ったけど、方法がわからないからな」
ちょっと暗い雰囲気になって、ため息が出てきた
シ「あっ、そうだ」
ユ「なにかいい案でもあったか?」
なにか思いついたのだろうか
シ「神とかこの世界ならいるんじゃないか?」
ユ「ああ、そうかもな」
元の世界にも居たって言うし
こっちの世界にもいるのかもしれない
ユ「王都の方から聞いてみる?」
シ「聖女信仰の場所だろあれは」
確かにそうだったな
ユ「じゃあ、有名そうな街でも聞くか」
シ「明日からだな」
明日からちょっと移動することになりそうだな
数分後
ユ「105、106、107…108!」
シ「終わったな」
ユ「これで煩悩が消えるはずだな」
人仕事を終えたように撞木を手から離して
アイテムバックの中に全部しまった
シ「思ったんだが、ユートの考えてるキューピットみたいなのは煩悩なのか?」
煩悩の基準がちょっとよくわからない
後でカンタかヒラノに聞くとしよう
ユ「もしそうだったとしても消えないくらいの思いがあるってことだな!」
シ「子供っぽい」(ポジティブだな)
ユ「同い年だろ!」
シ「あ、つい本音が」
ユ「それは冗談か?」
シ「本当に本音」
本音かぁ…
ユ「豆腐以上に脆い、オランダの涙メンタルを舐めんなよ!」
オランダの涙(※めっちゃ硬いガラス)
シ「ガラスだけどめちゃくちゃ硬いじゃん。それだと、破壊する場所によっては爆発するけど?」
ユ「吐血するじゃん」
さっきあったし
テ『それは違うと思います』
そうなのか?
シ「するなよ…それにお前、吐血したことなんて殆どないじゃん」
ユ「やろうと思えば今も多分できるよ?」
シ「…ほんとに?」
信用してないのか?
ユ「やってやるよ!ゴフッ!」
有言実行だ
ということで喉当たりに、赤い液体を作り出した
シ「えっ、まじでやった」
俺が喉に引っかかる痰を出すような声を出して、口から赤い液体を出した
ユ「あ、一応血糊だから大丈夫だよ」
シ「吐血しながら話してるようにしか見えないから片付けてくれ」
ユ「おうよ」
体についたいる大量の血糊を魔法で片付けて
アイテムバックの中にしまった
ユ「ふぅー、片付いた」
シ「そういえば、性欲とまでは言わないけど、興味は持つんだな」
突然そんな話を振ってきた
ユ「何の話?」
シ「ユートはさっきの状況で興奮したからこそ、血を吐いたんだろ?」
ユ「興奮って言われるとなんか賛成したくないが、そうなのかもな」
漫画みたいにラッキースケベで鼻血を出した…のか?
違うと願いたい
ユ「それで?」
シ「数値が0なのになぜ鼻血が出たんだろうかと思って」
シューゴにそれを言われて真面目に考えてみた
シ『数値は0なのに、なぜなんだ?』
だが考えている間にシューゴは即テキストさんに聞いていた
テ『おそらく、興味の部分が変化したんじゃないんですか?』
シ『そうか』
思い出したかのように何かひらめいたようだ
シ『数値がこの前変わったってユートが言ってたな』
そこで数値が変化したのかもしれない
テ『本能的な部分は変わりませんけど、考え方によって変わるところはありますよ』
シ『つまり?』
それでも理解できなかったからもっと簡単な説明を、首を傾げて求めた
テ『興味が湧くことはあっても、性欲はわきませんよ』
シ『なるほど』
人がペットとかに可愛いとか考えたとしても、生物的には好きにはならないあれか
ユ「どゆこと?」
シ「相手のことを可愛いとか、いい匂いするとか、思っても女として好きになることはないよってこと。だと思う」
ユ「なるほど」
テ『いえ、少し違いますね。性欲があろうが、無かろうが。恋することはしますよ。ただ、子供を生むことに興味があるかどうかですね』
シューゴ達からの説明を聞いて俺の頭の中にある翻訳機のようなものが働いた
ユ「つまり、幼馴染とかでいつもずっと過ごしすぎて恋愛対象として見れないって言われるあれと同じか」
シ「ちょっと違うと思う」
テ『それは違いますね』
即否定された
だが、こんなところで終わる俺ではなかった
ユ「親が自分の子供に対して恋愛対象としてみないのと同じでしょ?」
シ「説明求む」
ユ「ずっと過ごしてる者には恋をしないようになってるんだよ。人間の体の仕組み的に…」
シューゴが説明を求めてからずっと話し続けて
ついでに皆のいるダンジョンへと歩いていった
ユ「だから、俺のさっきの例えがこうなるんだよ」
シ「そ、そうか…よくそんなに語れるな」
ちょっとびっくりしているように見える
ユ「好きなものは専門にしたら結構楽しいぞ」
シ「なるほど」
納得しているけど
違和感を感じた
ユ「いやお前だって専門に頑張ってることあるだろ。模写とか」
シューゴの模写技術は異常に高いからな
ユ「特に授業でやったモアイ像の模写が一番うまかった。あと目を描くのもうまかった」
しかも授業中に描いてたからな
テ『描いてるもの独特すぎませんか?』
シ『今度実際に見せるよ』
見れるかどうかはわからんけど
多分見えてるでしょ
ユ「ダンジョンについたからもうこの話は終わるか」
話を終えてダンジョン内に入っていったら
こたつの中でぐっすり寝ている皆の姿があった
精霊達の姿はなかったのでおそらく体の中に入ったのだろう
メラ、エアルは気絶したときに入ったのかな?
ユ「…」
それを見て俺は心のなかで何かを感じた
ユ「これが子供を見守る親の気分なんだろうね」
シ「可愛いとでも思ったのか?」
ユ「おう」
この光景を脳裏に焼き付けた
そして、朝日が上ってきたので俺は正月の準備をした
ユ「あけましておめでとうだな」
シ「あけましておめでとう」
俺達はお互いにそう言った
もし誤字、変なとこ、質問などがあったら言ってください
この話へ一言 カンタから
カ「定義を調べた感じ、テキストさんがあってるね〜」
ユ「へぇ〜。性欲なし=恋しないわけではないんだな」




