第二百五十八話 最適の先生
ユ「できたか?」
フィ「まだ」
現在、森の中でフィルの弓矢の練習に付き合っている
ユ「的は一応動いてないんだが…」
この前のたんぽぽよりは簡単だと思う
ユ「今何発目だ?」
フィ「わからない。今までだったら一万以上」
ユ「すごいな」
この短い期間でそんなに撃つことができているのがすごい
俺だったら途中でやめてると思う
ユ「まぁ、眺めてるだけだと時間の無駄だから剣でも振るか。あっ、今日は違うのにしよう」
適当になんか武器を考えた結果
今日は鎌を使うことにした
ユ「二刀流とかかっこよさそう」
テ『鎌の時点で二“刀”じゃないですけどね』
ユ『細かいことは気にしない』
ということでまずは扱いに慣れるために
お手玉を扱うように、ジャグリングを開始した
ちなみに投げている内の一個は普通の鎌で、もう片方は俺専用の武器で作った鎌だ
ユ「取られる心配たまにするけど大丈夫だな」
そもそも、俺以外が使えないからな
取られたところで、もう一個作ればいいし
ユ『そういや、最近鋭さが上がったんだよな』
テ『想像する力が上がったということでしょうか?』
ユ『そうなんじゃない?』
知らんけどな
ユ「あっ、ミスった」
ちゃんと掴むことができず、俺専用武器が俺の腕を斬って落ちて地面に刺さった
腕はすぐに回復して取れること無く、くっついた
ユ『これくらい上がったな』
テ『上がり過ぎじゃないですか?』
正直前と比べるとめっちゃ上がった気がする
それでも、キクチには及ばないけどな
ユ「あいつ鋭さおかしいなやっぱり」
フィ「?」
弓矢を持ちながら
俺の方を向いてきたけども、本人からしたら独り言のようなものだから
どういう脈略で言ったのかがわからず、首を傾げていた
キン!
ユ「ん?」
突然、普通の鎌が何かを弾いたような音がした
ユ「…ノエルさん」
そういった瞬間、上から葉っぱが風によって吹かれているような音がして、それを深く聞いていたら
目の前にはノエルさんがもう居た
ユ「またか」
ノ「…はい」
また俺を何かしらの猛獣と勘違いしたんだろう
ユ「今回は刺さらなかったし、フィルには何も無かったから良いんだけどさ」
生徒に怒ってる先生感あるな、今やってること
テ『それは、経験談…』
ユ『…どうだと思う?』
テ『黒ですね』
ちょっと嘘を言おうとして
言葉が出てこなくて、溜めがあったからバレてしまった
ユ『やっぱり嘘つくの苦手な気がする』
ちょっと言葉に詰まってしまうから
苦手だな
ユ「あっ、ノエル」
ノ「なんでしょうか?」
三回も俺に向かって矢を撃ってきたから
ちょっと落ち込み気味の返事だった
ユ「今、お前の弓を見て思ったんだけど。弓って得意?」
いつも弓で攻撃してるし
外してるイメージがない
今回は武器に当たっただけだし
ノ「はい。得意ですが」
なんで聞いたんだろうとちょっと疑問に思っているだろうけど
正直丁度いい
ユ「じゃあさ、今そこで弓の練習してるフィルに教えてくれないか?」
ノ「あの子でしょうか?」
今撃って外したフィルのことを指差して聞いた
ユ「そう」
ノ「わかりました」
そう言ったら早速、フィルのところに行こうとしたけど
ちょっと手を掴んで止めた
ユ「ちょっとまってくれ」
ノ「何でしょうか?」
あっちから聞いてこなかったから
自分から聞くことにした
ユ「報酬は何にしたら良い?」
ノ「いえ、報酬はもらわなくても大丈夫です。助けてもらったのですから」
ユ「…わかった」
人の親切心はありがたくもらわせていただこう
…人?エルフだったな
ユ「俺は遠くで待ってるから指導頼む」
ノ「わかりました」
そう言ってからフィルのもとに向かい
弓のことを教えて居た
その間、ちょっとなんかお礼を渡さないとだめな気がして何を渡すかを考えた
ユ「ノエルさん。酒って好き?」
ノ「はい!大好きです!」
これは本当に好きそうだな
ユ「意外だな」
ノ「エルフとして長く生きていると楽しみなものがお酒くらいしかありませんでしたので…」
そんなにか
俺たちはずっとトランプでも平気だけど
テ『絶対途中で飽きますね』
ユ『それは思った』
娯楽がないのは可愛そうだな
ユ「お酒か…」
あんまりお酒に関しては詳しくないからなぁ…
嗅ぐだけでも吐きそうになるし
でも、作るか
ユ「“樽”“ワイン”」
お酒はなるべく前の世界でも高いやつで
それを樽の中に入れた
ボジョレーヌーボーとか
ユ「“時間加速”」
魔法で中身だけ時を進める事のできる小さい結界を作って
そこに樽を入れて、放置するだけだ
確か…前の世界の社会見学でお酒の工場に行った時は1947年に作られたお酒があったから…五十年くらい熟成しても大丈夫だな
ユ『確か発行させすぎるとお酢になるんだっけ?』
テ『一定の温度を下回るか、気化したものにワインを触れさせなければ確か大丈夫だった気がします』
たまに知識がない時
スマホとかで調べられない時に聞けてありがたい
ユ「じゃあ、気化した空気が抜けるようにして…」
穴を開けて、空気が出るようにした
ユ「これで百年くらい良いかな」
メ『飛ばして一万年くらいにしようぜ!一杯くらい飲んでみてぇよ!』
ユ『お酒飲めるのか?』
メ『飲めるぞ』
お酒飲める…のか…
もしかして、ダンジョンに居る皆も飲める?
ユ「だったら、絶対俺飲めないな」
とりあえず、結界の中に樽を放置して
訓練の方を見ていた
ノ「ユートさん!」
ユ「ん?」
ノ「これでどうでしょうか?」
ノエルさんが
フィルの方を見るように誘導して来たので
フィルの方を見てみると
フィ「ん!」
俺の作った的のど真ん中に当たった
しかも、的をぶっ壊した
ユ「お〜…何した?」
ノ「教えただけです」
教えるのが最強の先生が居た…
ユ「あ、ありがとう」
成長ぶりに驚きながら
お礼のものを渡しに行った
ユ「はい。これどう?」
ノ「これは…?」
お酒の樽を渡されても何なのかわかってないみたいなので説明した
ユ「お酒だよ。何百年単位で熟成したやつだけどな」
ノ「えっ!?本当ですか!?」
ユ「嘘言ってどうする?」
ノ「ありがとうございます!」
泣きながら感謝された
ユ「なんか、言動と行動が違うけど…」
ノ「あっ…もらえるのが嬉しいのと…これ以上助けてもらって良いのかと思ってしまいまして…」
そんなにかよ
毎回オーバーだなぁ…
ノ「あの!いつ予定開いていますか?」
ユ「大体いつでも暇」
ノ「えーっと、明日ここに来てくれませんか!?」
お辞儀しながら頼まれた
ユ『明日ってなんかあったっけ?』
テ『そもそも裏ボスに予定の概念はないと思いますが…一応学校は休みなので無いですよ』
予定がないなら良いけど
ユ「なんで?」
ノ「お、お礼がしたくて…私達のとこまで来てほしいのです」
つまり里か村かわからないけど
自分たちのところに行ってお礼をしたいってことか
ユ「うーん…フィルに弓を教えてくれたからお礼はもうされたようなもんだから大丈夫」
優しく断っておいた
ユ「俺はもう満足してるから大丈夫だよ」
ノ「わ、わかりました」
フィルの弓矢の技術が上がって
嬉しいまま、帰った
ユ「明日休みだな」
フィ「動く的に撃ちたい」
ユ「ん?わかった」
ということで明日は動く的に当てる練習をすることになった
もし誤字、変なとこ、質問などがあったら言ってください
この話へ一言 ノエルから
ノ「少し重いですね...」




