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2 マーダの予言


 それから数日後、俺たちはマーダの住む王都シルヴィエへとやってきていた。

 どうやらザックは俺たちを勇者パーティーから追放したことはまだ発表していないようで、マーダに謁見することはすんなりと受け入れられた。


「マーダさん!」


 俺たちがやってきたのは予言の間と呼ばれる場所で、マーダが未来を見る際に用いられる部屋だ。

 というかマーダはこの予言の間を私物化しており、ここで生活をしている。いわゆる、引きこもりというやつだ。


「あらあら皆さん……あら?ザック君はいないのですね?」

「そうなんです!ザックが一人で魔王を倒すーなんて言って出て言っちゃって、それで、今どうなっているのか予言して欲しいんです!」


 リリアがまくし立てるようにそう言ったが、マーダは随分と落ち着いた様子だった。


「それはまあ……ですが、予言の調べは降りてきていないのよねえ」


 予言の調べ。それはマーダに降りてくる神託のようなものだ。

 この天からの調べがあった時は勇者あるいは魔王に関する重要な未来を見ることができて、逆に天からの調べがない時には何も見えないらしい。

 つまり、マーダは今見ても何も見えない、と言いたいわけだ。


「でもっ!ザックは魔王を倒すって……!」

「あいつは、しょうもない嘘をつくような奴じゃないんです」

「……私も、見るべきだと思う」


 俺たちがそろって訴えると、マーダは困ったように微笑んだ。


「……もう、仕方ないわねえ。見るだけ見てみるけど……期待はしないでね?」

「ありがとうございます、マーダさん!」


 マーダはリリアの声に頷いてから、大きな水晶に向かって手をかざした。

 すると、水晶から青白い光が漏れ出してくる。マーダは光る水晶をじっと見つめて、やがて目を閉じた。

 そしてマーダが小声で呪文を唱え始めた時、ローザが俺の袖を引っ張ってきた。


「……ケイン」

「なんだよ」

「……もし未来が見えなくても、ザックはきっと魔王に挑むと思う。だから、私たちも魔王城を目指すべき」

「……そうだな」


 ローザはそれだけ耳打ちすると、真剣な目でマーダの様子を観察し始めた。

 昔からローザはマイペースだったが、なんだってこんな時に、と思わずにはいられないのだった。




 それから数秒の沈黙が流れた後、マーダは目を開けてかざしていた手を降ろした。


「マーダさん!結果は……」


 リリアの言葉に、マーダは考え込むように俯いた。


「……見えたわ」

「見えたんですか!?」

「ええ。でも、なんで……」


 マーダはそう言って少し黙り込んだ後、小さく首を振った。


「……考えても仕方ないわね。とにかく、見えたのはラーザの街で大きな衝突があるって未来よ」

「ラーザの街?」

「ええ」

「……いや、ありがとうございました。急に押しかけてしまってすみません」

「いえいえ、構わないわ。こうして未来を見ることもできたのだもの」

「では、失礼します」


 マーダに礼を言って、俺たちは予言の間を後にした。

 何にせよ、次の目的地はラーザの街に決まったわけだ。

 そのラーザの街とは、この王都シルヴィエと魔王城の間に位置する、鍛冶の栄えた街だった。


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