プロローグ 天才悪魔使い、勇者になる
おれは殺された。
嘘じゃなくて。ホントに。マジで。
愛した女とその飼い狗によって。
俺の愛した女は、血で染められた薔薇みたいな女だった。凛々しくて、美しくて、賢くて、強くて、勇ましくて、なんの非の打ち所もない完璧な女。
おれの人生が彼女の手で終わるなら本望――――んなわけねぇだろ!
うう、なんでだよぉ……! 付き合って、デートして、結婚して、キスして、エッチして、子供作って、世界で一番素敵な家庭を作りたかったのに! おれのことを殺すなんて!! 酷すぎる!!
「楓、愛してるよ」
これがおれの最期の言葉。
そして、死んだはずのおれは、何故か真夏のジャングルで目が覚めた。
蒸し暑くて、緑が生い茂ってて、虫がたくさんいそうで、原始的な感じ。ティラノサウルスとか、サーベルタイガーとかいそうな、人類未踏の地感満載の大森林。
野性味があふれている光景に愕然とした。
こんなん絶対に天国じゃねぇじゃん。
こんな森に神様も天使もいるわけねぇ。
おれは悲しかった。
なんで好きな女に殺されたあげく、こんな仕打ちをうけなきゃいけねぇんだよ。
身体はそこらじゅう痛ぇし、自分から変なにおいがするし。うう……。
「×××××××××!!」
「うォ、わ――!!」
「××××!! ××××!!」
「え、え!? んだよ!?」
怖。ビビった。
本当に心臓止まるかと思った。
神父服? みたいなのを着たジジイがにゅっと茂みから出てきて、意味分からん言語で話しかけてきた。早口だし、声でけぇし。
まさか、こいつがおれを迎えに来た天使なの……? ジジイじゃん!
絶対ヤダ!!!!
おれ、もしかして死んだんじゃなくて、変なところに捨てられた? 売られた?
そう思い始めたら、本当に悲しくて悲しくて、涙が溢れてきた。
「でっ、デスト・パージぃ!!」
おれの契約する悪魔、デスト・パージ。
喚び声に応える声が聞こえる。よかった。すぐきてくれそう。
…………あ? 悪魔が喚べるってことは、おれ、死んでなくね? おれの魂、まだおれのものじゃんか。
その後、俺は神父服の変なジジイに保護され、カルト映画で出てくるような神殿に連れてこられた。秘密結社のアジトみたいな。
羽の生えたミロのヴィーナスみたいな金ピカの女の像がそこかしこに立っていて、太陽のマークみたいなのも一緒に飾られてる。趣味悪。
開けた場所に連れてこられたかと思えば、いかにも宗教家ですぅって、ゴテゴテのカッコしたやつがわらわらと出てきて俺を取り囲んだ。
何、おれは生贄にでもされるのか?
とにかく怖くて、もう何も考えられなくて、デスト・パージだけがおれの心の拠り所だった。
おっさんとおばさんがわーわー何かを言ってくるけど、おれの耳には意味の分かんねぇ言葉だった。でも、デスト・パージには分かるみたいで、聖徳太子ばりに聞き取っては次々に翻訳してくれた。悪魔が翻訳って……。つうか、こいつら全員悪魔じゃねぇか。
そして、あれよあれよという間におれは勇者になった。意味は分からんかったが、ユウシャって響きがカッコよくて、俺にお似合いで、まんざらでもなかった。
ここまでが三年前の話。
今は魔王を討伐すべく、世界中を旅しながら魔物――っていうか、悪魔を殺してまわっている。
いや、デスト・パージがいれば絶対魔王とかひとひねりだけど、同行してる女司教がクソ真面目で、まずは戦力を削ぐとかなんとか。退屈で長ーい話をしてたけど何も覚えてねぇや。
メンツは天才悪魔使いで勇者のおれ、おれが勇者になってからずっと行動を一緒にしてる聖女、真面目で堅物の女司教、変な喋り方するオリエンタルな魔法使い、血の気の多い蛮族みたいな聖騎士。
おれ以外、全員女。剣に魔法に、まじでRPGみたい。
さっき寄った街で、ナヨナヨした魔術師の男がしつこく「仲間にしてくれ」って頼み込んできたから、今は六人パーティだ。こいつは使い物になんねぇから次の国に置いてこ。
そういえば、次に訪れる国ではデカい祭があるらしい。楽しみだなァ。
お読みいただきありがとうございました。
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