プロローグ なんと不幸でなんと醜悪な人生
結局、人生なんて金持ちだけが得をする。
お金のない人間にはチャンスも与えられない。お金を手にするにはその分、差し出すものがなければならない。
チャンスを得るために、危険を冒す。
でも、金にくらんだ目は節穴でしかない。
差し出したものが、結局は自分の首を絞めるものだと、取り返しのつかないことになってから気づく。
後戻りができない場所に立ってから後悔しても遅い。
使用人の制服は、奴隷の制服。
内緒の頼み事は、秘密の命令。
可愛いは、逆らうな。
花を用意しろは、女を連れてこい。
「お茶の準備をしてくれるかの?」
これは、部屋に来い。
「はい、ご主人様」
アイリス・オーブシアリー。
あの女が逃げなければ、この苦痛と恥辱から解放されていたはずなのに。
死んでいればまだ溜飲も下がるけれど、あの女は今も生きている。死神の生贄なんて悲劇のヒロインの皮をかぶって、のうのうと生きている。
幸せそうに笑っているのだ……!
「どうした?」
「いえ、すぐに向かいます」
息苦しい。
身に絡んだ鎖は刻々と重くなっていく。このままじゃ陸の上で溺れて死んでしまう。
なんでこんなことになってしまったんだろう。
「可愛いのう、お前は本当に可愛いのう」
「ありがとうございます」
「わしにしか触らせてはいけないよ」
「……はい、ご主人様。貴方様のおっしゃる通りに」
この変態が。
肉欲に塗れた意地汚い男の癖に、金で買える女には興味がないなんてふざけたこだわり見せやがって。仕事のない娼婦だってどんなに金を積まれても、お前みたいなしゃがれたジジイの相手なんかしたくねえよ。
「今の間はなんだ」
「何のことでしょうか」
「返事をするのに間があったのう。何を考えた」
「いいえ、何も考えておりません」
「なら、その忠誠を見せておくれ」
汚らわしい、汚らわしい、汚らわしい。
「しゃぶれ」
死ね、クソジジイが。
「はい、ご主人様。貴方様のおっしゃる通りに」
代わりに用意した女も駄目になった、それならもう、残されているのは――いる。そうだ。まだいるじゃないか。
アイリス・オーブシアリーが。
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