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死神と呼ばれた悪魔使いは追放された異世界で生贄少女と生きていく  作者: 真名瀬こゆ
第1部 第2章 世間知らず、世に放たれる

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第27話 付き従える者

 荊は静かに鎌を引き戻した。


「殺さないよ」


 ――俺は、ね。

 仕事を任せてくれた蘇芳は、襲撃者を生きたまま騎士団へ引き渡すことをご所望だ。その意向は尊重するつもりである。

 しかし、ここを生き永らえたところで、結局はスレイヴに呼ばれて来た魔物。きっといい未来は待っていないだろう。


「おとなしくついて来てくれる?」


 魔物はずりずりと額を地面にこすりつけている。怯えきった態度。関係性の上下が確立していた。

 荊は瞳に宿っていた殺意を消し、大鎌も手放した。これ以上は不要な威嚇だ。


 逃げるために先を行っていた馬車が戻ってくる。

 ヘクターは驚愕に染まった顔だった。荊とひれ伏す魔物を見て、ぽっかりと大口を開いている。


「魔物を手懐けるなんて芸当……、まるで魔王の……」


 荊は苦虫を噛み潰したように顔を歪めた。どうにも勇者と魔王の話は体に合わないらしい。


「変なこと言わないでください。俺は人間ですからね」


 きつめの口調でそう注意するとセクターは「え、ええ」と腰の抜けた返事をした。どうやら、荊の威圧は魔物意外にも効いているようだ。

 馬車を牽く二頭の馬たちも心なしかおとなしい。


「この彼も騎士団に引き渡す、でいいんですよね?」

「そう、なりますとも。ただ、どうやって運ぶか……」


 馬車より大きな身体だ。馬車で運ぶには物理的に無理がある。

 荊の契約する悪魔を使えばたやすいが、ここで悪魔を出すと魔物扱いされることは避けられない。荊は頭を振った。


「悪いけど君は馬車には乗らないから、並走してくれる?」


 酷な提案だ。死にゆく道を自らの足で歩けと言うのだから。

 しかし、鶴の一声でもあった。魔物はのそのそと歩き出し、馬車の隣に並ぶとぴたりと止まる。


「……一体、どういう御業をお持ちで?」

「内緒です」

「スカーレットとは? どこからか手にしていた大鎌は何なのです?」


 セクターは目の前の青年が何者なのか分からなくなった。

 最初は“同僚の蘇芳が推薦してきた腕の立つ謎の男”だったが、今は“未知の力を使い魔物を飼いならす神秘の男”である。その力はにわかには信じられない。しかし、自分の目で確認をしてしまっている。


 横を向けば未曾有の青年。逆を向けば躾のなっている魔物。

 セクターの頭は混迷を極めていた。


 荊はセクターの動揺に見向きもせず、御者席に座って半身で後ろに振り返る。するりとほろをめくった。


 囚われの女は感情の分からない顔でこちらを見やった。脱走に失敗した悔しさは浮かんでいない。ただ真っ黒の瞳に荊を映している。


「次に魔物を呼び寄せるようなら、魔物同士で殺し合わせるし、その口を焼き塞ぐ。よく考えてから行動してね」


 返事はない。

 しかし、もう魔物を呼び寄せることもしないだろう。今は彼女を見張るための監視員がいる。


 荊はスレイヴの女の目の前に浮かぶ小さな赤い光に目を向けた。手のひらに乗るくらいの大きさのそれは、透明の六枚羽をつけた女の小人――悪魔、スカーレットである。

 淡い光をまとう姿は妖精という方がしっくりくる。

 赤い髪はツインテールに結われ、同じく赤い目は荊と目が合うと嬉しそうに細められた。

 荊が手を上げれば、妖精少女はぴっと美しい角度で敬礼をする。


 荊は罪人の女とスカーレットを隠すと、未だに頭を抱えるセクターに声をかけた。


「どうしてスレイヴの口を拘束していないんですか?」

「スレイヴは言葉を扱わんのです」

「……セクターさんには聞こえなかったかもしれませんが、魔物を呼んでいたのは彼女の声です。次からは口を塞ぐことをおすすめします」


 セクターは何の反論もせずに「ご忠告、感謝致します」と素直に受け入れた。

 検証もしなければと思いつつも、彼が言うのだからそうなのだろうという信頼があった。

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