表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死神と呼ばれた悪魔使いは追放された異世界で生贄少女と生きていく  作者: 真名瀬こゆ
第1部 第2章 世間知らず、世に放たれる

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/193

第20話 世間話は思わぬ事実を知らす

「荊君とアイリスちゃんだね。改めてよろしくー!」


 アイリスの手元にある書類から名前を確認し、蘇芳はにこにこと楽しげに改まって挨拶をした。荊とアイリスもよろしくと返す。先ほどのひと悶着などなかったことである。

 記入漏れがないかを確認していた蘇芳は、書類に空欄を見つけてこてんと首を傾げた。


「荊君、苗字は?」

「え?」

「あ! 私、荊さんの苗字を知らなくて」

「ああ、そういえば言ってなかったかも。式上しきがみだよ。式上荊」


 荊はさもないように今更の自己紹介をする。そういえば、アイリスの苗字も知らないな、と書類を覗き見たが彼には当然に読めなかった。

 ふと、視線を感じて顔を向ければ、蘇芳が丸い目をさらに丸くして荊を見つめている。驚愕と歓喜。


「何ですか?」

「もしかして、荊君って大日本帝国の生まれ?」


 ――大日本帝国?


 荊の目も丸くなる。聞き覚えのある名称だ。前時代のものであるのは気になるところだが。

 この異界にも日本、もしくはそれに類似した国があるというのか。荊は驚きを押し殺して「どうでしょう。小さい頃から転々としてるから、生まれなんて気にしたことなかった」と嘘をついた。


「そうなの? なんだあ、同郷かと思ったのに」


 蘇芳が大日本帝国生まれだ知ると、アイリスは「ひゃあ、遠くの国の生まれなんですね」とのんびりと驚いていた。彼女だけはのんきである。


「荊君の仕事はそれとして、アイリスちゃんのお仕事どうする?」


 そういえば、と切り出した蘇芳に、荊とアイリスは顔を見合わせた。荊は少しだけ食い気味で「一番危険度が低いのはなんですか?」と尋ねる。

 アイリスが無謀なことを言い出したり、自分と同じ仕事をすると言い出す前に制してしまいたかった。


「うーん、それなら薬草集めかな。子どもたちにも請けられる安全な仕事だし」

「じゃあそれで。明日からお願いします」

「おっけー。じゃあ、荊君はさっき説明したとおりだから明日はよろしくね。アイリスちゃんも!」

「ええ、また明日」

「え? え?」


 アイリスがきょろきょろとしているうちに、とんとん拍子で話が進んでいく。口を挟む隙がない。

 蘇芳は「ちょっと待ってね」とその場から離れると、すぐに戻ってきて膨らんだ麻袋を二人へと突き出した。じゃらり、と重量のある音がする。


「これ、届け出てくれた拾得物の支払いだよ。ありがとうございました。あなたちの善意に感謝します」

「いえ、こちらこそ。ありがとうございます。それでは今日はこれで失礼しますね」

「はいはーい。またねー!」


 荊は呆然としたアイリスの背中を押して出口へ急かす。明日の仕事について知られると面倒だった。きっと、彼女は荊が危険なことをするのを良しとしない。

 たむろするギルドメンバーから変わらずにもの言いたげな視線を受け、二人と一匹はギルドを後にした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ