いきなりの出会い
突如現れた俺にビックリした少女は「キャッ!」っと可愛らしい声を発した。深くローブを被っているが絶対に可愛いと、俺の中の野獣が叫んでいる。
まさか異世界に来ていきなり能力が発動したのか?
俺の能力は女の子と出会う能力。ただそれだけだ。
女の子が俺の事を好きになる事も、ハーレム状態になる事もない。ただ女の子と出会うだけ。
しょうもないと笑う奴も居るだろう……だが俺にとっては十分すぎる。母親以外の女性と話したのは、
もう2年も前の事だ。今思うと、とても懐かしい。
その日、俺は初回限定版のゲームを買いに出掛けたのだが、天気はあまり良くなく、念のため傘を持って家を出た。無事ゲームを購入し、テンションが上がり軽くスキップしていると、突然雨が降り出してきた。
傘を持って来ていて正解だった。1時間程前の自分を褒めながら家の近くまで帰ってきた俺は、店の前で困っている女性を見かけた。普段ならイモって話しかける事すら出来ないが、今日の俺は一味違うと自分に言い聞かせ、勇気を出して話しかけた。
「あの?何かお困りですか?」どっからどう見ても突然の雨に困っている様にしか見えなかったので、
女性が話すよりも先に「もし宜しければ、この傘使って下さい」
と出来るだけ紳士に振る舞った。
彼女は即答で「結構です」とだけ言い立ち去った。
突然話しかけられて恥ずかしかったのかな?などと考えながら家に帰った淡い記憶を思い出した。
そして、今まさに、目の前には女の子がいる。
これはもう、話しかけるしか無いのでは
なかろうか?
いけ、今だ!話かけろ!お前なら出来る!
自分自身に言い聞かせ、勇気を振り絞った。
「あっ、あの?」緊張のせいで声が上ずってしまっ
た。「ここで何してるんだすか?」またやってしまった。上ずったうえに、変なところで噛んでしまうとは我ながら情けない。
「……あなたは、どこから来たの?
私の名前はティナ」
「俺の名前は、悠人……日本って所から魔王を倒す為に来たんだ」
「……にほん?聞いた事ないとこだね。名前もちょっと変わってるみたいだし…………魔王を倒しに来たんだ……そっか」
「そんなに名前変かな?」俺からしてみればティナって名前の方が変わってると思うんだが、外国のお姫様に居そうな名前だし。魔王を倒しに来たって
言った時、少し寂しそうにしたのは気のせい
だろうか……。
「なぁ、ティナ? もし迷惑じゃなかったら、こっちの世界の事、教えて欲しいんだけど?ダメかな?」
「いい……ですよ?」
「そうか、ありがとう。まず魔王を倒す為には何をしたら良いのかな?
職業?のつき方とか分かるかな?」