アルバイトを完遂せよ-8
「酒場で酒を飲まないのは、酒場と酒に対する冒涜にあたるでな」
ドワーフのガロンはそう言うと、ジョッキに口をつけた。ゴクゴクと喉をならし、全て飲みきる。
「見せてもらおうかの?」
戦士レイブンは無言で依頼書をガロンに渡した。ガロンの小さな目が、依頼書を食い入るように見つめ始めた。
「賢者殿」
ガロンは魔術師バルナスに尋ねた。河の向こうでは“魔術師殿”と呼んでいたのだが、エフタルに入国する際、呼び方を変えるようバルナスに厳命されたのだ。
「ここには10人以上での受諾を推奨と書かれているが、この店で助っ人を探すのかの?」
バルナスはこう答えた。
「否、です。僕たちだけで受諾します」
ガロンはそんなバルナスの様子を面白そうに眺めている。
「勝算はあると?」
「当然です」
自信たっぷりに答えるバルナスに、ガロンは目を細めた。
“魔術師にしておくのは惜しいのぉ。こやつが戦士なら、間違いなく勇者候補じゃ”
「分かった。お主も異存は無いかの?」
ガロンは何も言わずにニコニコ笑っていた人間の女に尋ねた。
「バルナス様が決めたことですから」
女の名前は、ジュール。大地母神・ニスシャ神殿内の、孤児院出身の女性である。身長:155cm。体重:50kg。癒し系のおっとり美人であり、年齢はバルナスより少し下のようだ。肌の色は白色で、茶色の髪は首の辺りで一つに括られていた。長さは背中の真ん中ぐらいまであるだろう。茶色の大きな瞳には慈愛の光が宿っていた。七部袖の白色の神官衣の胸には、大地母神・ニスシャの紋章が刺繍されており、神官であることを示していた。
孤児だったジュールは、子供の頃のバルナスに一目ぼれされ、メイドとして引き取られたのだ。彼女がバルナスに引き取られた経緯は、ここでは割愛する。
ジュールはもともと神の声を聞くことが出来たが、彼女に神官の資格があるということは彼女以外にはバルナスしか知らなかった故、バルナスのメイドに簡単になれたのだ。(神殿にとって重要な働き手である神官は、普通は神殿が手放さない)
神官の資格はバルナスがフィールドワークに出るようになってから賜った。神聖魔法が使えることを神殿で示し、神官の証の神官衣と聖印を賜ったのだ。神殿からは当然のように神殿に戻ることを提示されたが、これを固辞。バルナスのメイド兼直衛として、常に隣に控えている。
「そうと決まれば、この依頼を受諾しようかの?」
ガロンの言葉に席を立つ4人。連れ立ってカウンターに向かい、冒険者の店の親父に依頼を受諾することを伝えた。
「この依頼、あんたたち4人だけじゃあ、辛いぞ」
冒険者の店の親父はレイブンたちを見て言った。
「腕の立つ助っ人を紹介してやろうか?」
「僕たちだけで十分です」
自信たっぷりに答えるバルナス。そんな彼らに、他の冒険者たちが口を挟んできた