アルバイトを完遂せよ-6
ここで、この世界の成り立ちについて説明せねばならないだろう。
1.神話の時代
世界には最初、巨人がただ独りで存在していた。“偉大なるひとつ”もしくは“万物の始祖”と呼ばれた巨人が死に、この世界が始まった。
その肉体は大地となり、最後に吐いた息は風となり、そして全身から流れ出た血は海となった。そして巨人が孤独を悲しみ、憤る心は炎となって世界 に熱と生命をもたらした。
この炎の中から神々が生まれ、巨人の体毛からは植物が、鱗からはドラゴンたちが生まれ出た。
神々は世界を3つに分けた。世界にあふれていた力を分化して創った“精霊界”。肉体を持つ者たちが住む“物質界”。2つの異質な世界を結ぶ“妖精界”。
そして、精霊、妖精、動物、植物といった生命体をそれぞれの世界に創造し、これらの助けを借りてそれぞれの世界を完成させていった。
神の手によって生み出されたものたちを古代種族と呼び、現在の世界に存在している種族よりも、遥かに優れた能力を持っていた。古代種族の殆どは現在では滅んでいる。
創世の時代の後に訪れたのは、争いの時代。
些細な相違に端を発した争いの火種が大きく燃え上がり、ついには光と闇の勢力に別れて、すべての古代種族が参加した最終戦争が起こった。神々の大戦と呼ばれる最終戦争により、神々は肉体を失った。物質界に直接介入する手段を失い、精神的な存在と成り果てたのだ。
かくして、神々の時代は幕を下ろした。
2.古代魔法王国時代
神々の大戦の後に続いたのは暗黒時代。暗黒時代は数百年とも数千年とも言われている。
暗黒時代を生き抜いた人間が作り上げた王国の名前は、ソリストメイン王国。現在は滅び去っているため、古代魔法王国と呼ばれている。
この王国は、各種の魔法語に通じた偉大なる魔術師たちによって治められていた。魔法の能力が高いものほど地位が高く、魔法の能力の低い、もしくはまったく欠如した人間は、奴隷として扱われたり、蛮族として蔑まれていた。
魔術師たちは魔力の塔と呼ばれる魔法装置から供給される無限の魔力を背景に、地上の支配者となった。華やかな文化を作り上げ、都市を空に浮かべ、そして成長した竜さえも隷属させたという。
しかし、魔力の塔が崩壊し、ソリストメイン王国は滅びた。