アルバイトを完遂せよ-4
「ここにしましょう」
ウェルバクレスの西の外れ。1軒の冒険者の店があった。ドアの上の看板には“聡明なる同行者”の看板が掛かっていた。
店内に入った4人。人間の女とドワーフの男がテーブルに向かい、大男と細身の男が、ピンで壁に貼られた依頼書を見に行った。
「たくさんあるな」
大男が興味津々という様子で依頼書を眺めている。灰色の瞳に好奇心があふれていた。庭の草むしりから、ペットの捜索。薬草の収集から商隊の護衛まで、ありとあらゆる依頼が掲示されていた。ここは冒険者の店。街の住人が冒険者に依頼を出し、冒険者がそれを受諾することにより、問題が解決する。そんな店なのだ。
「雑務系はとりあえず却下です。討伐系か収集系で探して下さい」
細身の男が大男に注意を促した。その間も、依頼書を確認する作業を進めている。彼の目つきは鋭く、獲物を狙う猛禽類をほうふつとさせていた。
「雑務系っていうのが、ペットの捜索とか、力仕事とかだろ? 討伐系っていうのは……」
大男はのんびりした様子で依頼書を眺めている。
「こっちの列か。盗賊の討伐に……害獣退治か……」
ためしに、1枚取ってみた。達成条件と報酬を確認し、肩をすくめた。無言で依頼書を壁に貼りなおす。
「危険の割りに、報酬が少ないな」
細身の男は大男が壁に貼りなおした依頼書を一瞬で確認し、こう答えた。
「これぐらいが相場ですよ。あの街の相場が、高すぎるんです」
「へー」
大男はこう思った。
“冒険者の命の値段なんて、スズメの涙みたいなもんだな”
大男の名前は、レイブン。傭兵団出身の冒険者だ。身長:180cm。体重:85kg。大柄な筋肉質の身体の上に、純朴な田舎の青年の顔が乗っている。そんな感じの青年である。年齢は20歳は過ぎているが、25歳にはなっていないようだ。肌の色は茶色で、髪の毛はボサボサの灰色。大きめな灰色の眼球が、優しい雰囲気をかもし出していた。
旅用マントの下には金属鎧を装備し、腰には片刃の曲刀を佩いており、マントの右肩からもう一本の剣の柄がのぞいている。
細身の男の名前は、バルナス。賢者の学院の魔術師である。身長:175cm。体重:63kg。年齢はレイブンよりは少し下のようだ。肌の色は白色で、髪の毛は黒色の癖毛。切れ長の眼の中に光る金色の眼が、神秘的な雰囲気を見せていた。
賢者の学院とは、この世界では一番の権威を誇る教育機関であり、魔術師と賢者の育成を行っている。もともとは、とかく世間から嫌われる存在である魔術師の保護とお互いの学問の振興のために造られた組織である。本部はサロストという東方一の大都市にあり、世界中の各都市に支部が設けられている世界的な組織なのだ。
バルナスは、研究室にこもるよりも現場に出て知識を得るほうが性にあっているという、インドア派が多い魔術師のなかでは、ある意味での変わり者だ。