アルバイトを完遂せよ-10
2.採集依頼
翌日。朝食を済ませた一行は“ウェルバクレス”の西門から町の外に出た。日帰りの予定ではあるが、3日分の食料と野営の準備はしていた。なにが起こるか分からないのが冒険者稼業の常なのだ。備えあれば憂いなしである。
一行の目の前には密林が広がっている。“ソイトエル”と呼ばれる大樹海だ。
「すごい森だな」
思わずといった様子で戦士レイブンが呟きをもらした。隣ではドワーフのガロンも口を大きく上げて上方を見上げていた。
「“ソイトエル”大樹海です。内部には古代魔法王国時代の遺跡が点在しています。場所柄、未盗掘の遺跡が多くあると言われていますが、詳細は不明です」
魔術師バルナスの説明は、講義をしている教師のようだった。受講者(他の3人)は真剣に耳を傾けている。
「今回の収集場所までは、道が出来ているとのことなので、迷う心配はほぼありませんね」
「それは重畳」
ガロンが古風な言い回しをしてみせた。
「不測の事態が発生して、道を外れてしまった場合は、どうすればよいんじゃ?」
レイブンが答えた。
「道を外れたら、慌てず騒がず、来たとおりに戻ること。下手に踏み込むと、出られなくなるぞ」
レイブンのレンジャーとしての能力をもってしても、この樹海からの脱出は、困難だと思われた。手付かずの密林というのは、方向感覚を狂わせるものなのだ。
レンジャーとは? 野外活動のエキスパートである。レンジャー技能の中には、シーフ技能と同様、着用できる防具に制限のあるものもある。
以下、レンジャー技能の能力。
・足跡追跡
・罠感知/罠発見
・罠解除/罠設置
・危険感知
・忍び足 ← 金属鎧を身に着けていては、不可能。
・カモフラージュ
・生存術
・聞き耳 ← 金属鎧を身に着けていては、不可能。
・地図製作
・尾行 ← 金属鎧を身に着けていては、不可能。
・動植物鑑定
・応急手当
・不意打ち
・飛び道具の使用
「はぐれなければ、問題ありません。行きますよ」
バルナスのセリフはなかなか男前だった。苦笑した一行は樹海の中に進軍を開始した。