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玖・物語を終わらせよう

※この話はフィクションです。

現実に起こった事件・事故は一切関係がありません。

「たぶん、カズラの死因は水死じゃない。

 彼は儀式で呼び戻す条件である、『海で死んだ者』に当てはまらない。へその緒と合わせて条件を満たしていないんだから、手順とか方法が正しい正しくない以前の問題だった」


 お堂から今時お寺に限らずどこにでもあるんだろうけど、イメージ的にあってほしくなかった事務室にみんなして移動して、同じくあって当たり前だけどあって欲しくなかったパソコンを起動させながら、羽柴は言う。

 パソコンはかなり古いものらしく、めちゃくちゃ重くてなかなかネットに繋がらない。

 ネットに繋がるまでの時間つぶしも兼ねて、羽柴は語る。


 俺にお手柄と言った訳。

 カズラとその母親が、救えるかもしれない可能性を語る。


 それは、今の希望であったけど同時に過去の絶望の話だった。



 * * *



「え? どっからその発想が出てきたの?」

 馬鹿な俺は自分が発端なのに羽柴の言ってること、羽柴がその結論に至った経緯を全く想像できず、ただ訊いた。


「ソーキさんが聞いた声と、釣り道具が落ちてた場所の不自然さ。

 儀式の影響か、ここの水死した霊はほとんどが水死体の姿をしてたのと、声が水の中でしゃべるような発音だった。そうじゃないのなら、儀式に関係ない、死因が水死じゃない可能性が高い。

 そう考えたら、釣り道具が落ちてた場所が不自然だってよくわかる。釣り道具が落ちてたのは、港の船着き場とか防波堤じゃなくて、浜辺よ。しかも、夏には海水浴場として開放するような、遠浅の。

 ……そんなところで、どうやって釣りの最中に事故で溺れるの?」


「あ」

 間抜けな声がとっさに上がる。

 住職や坊さんたち、カズラの伯父も似たような声を各々あげた。


 うわぁ、何で誰も気づかなかったんだ。

 そうだ。船着き場とか入江ならともかく、浜辺で溺れるってことは自分からある程度深いところまで行かなくちゃ無理だろ。

 そもそも何で釣りに来てるのに、浜辺で海に浸かって釣りなんかすんだよ。


 坊さんから、「防波堤かどこかで海で落ちて、釣り道具だけ浜辺に流れ着いたんじゃないか?」っていう反論が上がったけど、それも羽柴は即答で「カズラが船着き場とかで海に落ちたのなら、釣り道具がフルセットで浜辺に流されてきたのに、カズラの遺体が流れつかないのはおかしい」と否定する。


「加えて、彼が死んだのは5月の早朝。そんな時期に、あの遠浅の海で溺れるぐらい深くまで自分から泳ぐなんてあり得ると思う?」

 さらに羽柴が追い打ちの言葉をかける。

 うん。羽柴の言う通り、まずありえない。

 5月の昼間なら真夏近い気温になることもたまにあるから、ちょっと泳ぎたくなることもあるかもしれないけど、早朝ならまず泳ぎたいと思える気温でも泳げる水温でもない。


「何らかの事情、例えば被ってた帽子が風で飛んだとか、何か気になるものが浮かんでたとかで海に入ったとしても、せいぜいひざ下くらいの深さまでしか行かないはず。

 10歳くらいの子が浜辺やそれくらいの深さの海の中で波や潮の流れで浚われるのは、台風レベルの悪天候じゃないとまず無理。

 その日は、そんな天気でした?」


 羽柴の問いかけに、カズラの伯父が即行で首を横に振る。

 その反応を横で見ながら、羽柴は吐き捨てるように言う。

「あそこで、カズラが溺れ死ぬのはまずありえない話だったんだ」


 羽柴は、イライラした様子で机を指でトントン叩く。

そのいらつきの原因は、まだまだネットに繋がらないパソコンか、それともこんな簡単な事実に誰も今まで気付かなかったことかはわからない。


「……じゃあ、どうして……どうしてカズラは死んだんだ!?」

 カズラの伯父は、羽柴のいら立ちの原因よりもわからない疑問を叫ぶ。

 そう。カズラの死が海でおぼれた水死である可能性の低さはわかったけど、それならなぜ彼は死んだのか、そしてその死体は何故、海に浮かんでいたのか。

 一番肝心なことは、まだ何もわかっていない。


「……これはあくまで私の推測であり、事件として立証するのは不可能です」

 羽柴はそんな前置きをしながら、答える。


「おそらく、カズラの死は他殺。彼は、殺されました」

 ようやくネットに繋がり、開いたグーグルの画面。

 そこに、検索ワードを打ち込みながら。


 検索ワードは、この町の名前、3年前の西暦。

 そして「誘拐事件」。


「カズラは、この事件の『二人目』の被害者だったんでしょう」

 ネットに繋がるのはやたらと遅かったくせに、検索結果が出るのはやけに早かった。



 * * *



「二人目?」

 俺以外にも、坊さんたちが異口同音で呟いた。


 それは3年前、この町で起こった誘拐事件。

 まだ最近といえる事件で、しかもいろんな意味で話題になったから悪趣味なくらいに細かい情報が載ってるサイトが検索結果のトップに上がってた。


 事件は3年前の11月。小学4年生の男児が塾帰りに、中年の女にスタンガンを体に押し付けられて気を失って、そのまま車に連れ込まれそうなところを通行人が発見。

 女は男児を置いて逃亡したけど車の型や最近、付近の小学校や学習塾の周りで目撃されていた怪しい女と被害者が証言した女の特徴が一致したことで、1週間足らずで犯人は特定されて逮捕された。


 ここまでなら、全国ニュースどころかウィキに載るかどうかも怪しい、小さな事件だ。

 被害は未遂だし、比較的早く解決してるんだから。

 問題だったのは、女の家にはその女の子供どころか親戚でも友人の子でもない、正真正銘赤の他人である、……8歳くらいの男の子がいたこと。


 誘拐事件はとっくの昔、9か月前に既に1回起こり、そしてそのまま被害者は女の家で監禁されていた。


 そして何故、男の子の居場所や犯人どころか、「誘拐事件」そのものが誰も起こっていることに気付かなかった原因は、被害者の子供の家庭環境にあった。


 被害者の家は母子家庭で、彼はネグレクトを受けていた。

 彼が誘拐されたと思われるのは、9か月前の2月。正確な日付はわかっていない。

 母親が数千円だけお金を置いて、子供を放置して自分の恋人と10日間も海外旅行に行ってたからだ。


 母親は旅行から帰ってきて、息子が家にいない、帰ってこないことに気付いても、捜索願を出さなかった。

 海外旅行に出てて、子供がいつからいないのかわからないと馬鹿正直に警察で言えば、自分が逮捕されるのはさすがに目に見えていたし、元々あまり学校に行かない子供だったので、不登校を学校側も疑問に思わなかった。

 母親は子供の世話を一切しなくてすんで、恋人も何の気兼ねもなく家に連れ込めて、さらに母子手当を全額自分の為に使えるその状況が美味しかったのだろう。

 ……子供は、母親に見捨てられたんだ。


 そのことを、誘拐される前から子供は理解していたのかもしれない。

 犯人の供述によると、被害者はほとんど自分から犯人について行って、一度も「家に帰りたい」とは言わなかったらしい。

 それがどこまで本当かは怪しいところだけど、まるっきり嘘だとは思えない。


 母親において行かれた空っぽの寒い家に戻るくらいなら、ご飯もほとんど食べさせてもらえてない生活をこれからも続けるくらいなら、たとえ何されても誘拐犯の家の方がマシだと思っていたのかもしれない。


 その後、子供は母親の元に戻らず施設に引き取られたらしい。

 当たり前だ。母親も逮捕されたし、執行猶予が付いたってこの母親の元に子供を戻すのは、子供に対する死刑宣告だ。

 なんせこの母親は、戻ってきた子どもを保身のために「自分の子供じゃない!」と言い張ったり、「私は悪くない! だって私は何もしてないもん!!」と主張したそうだ。

 ……何もしなかったからこそ、下手したら誘拐した奴より悪質だという事に何で気づかないんだ。

 当時は誘拐事件が起こったってこと以外、ほとんど知らなかった。こんなにも後味が悪いどころの話だったなんて、知らなかった。


 そして、これ以上に後味が悪くなることも。



 * * *



「……事件当時、お父さんが言ってた。『本当に被害者は二人だけか?』って」

 羽柴は事件の概要をじっくり読みながら、呟いた。

 この事件が、カズラの死に関わっていると思ったきっかけと根拠を。


「この手の犯罪者……というか、ぶっちゃけ性犯罪者の再犯率はかなり高い。我慢というものがまったくできなくて、最悪な意味でポジティブかつ勤勉。

 ……現に、犯人は未成年に対するストーカー行為で執行猶予の前科があるのに、第一の被害者を誘拐したのはその判決が出てから4か月後。性犯罪は男が女にするものという固定観念を利用して好き勝手やってる、最低の犯罪者。生まれてこなければよかった人種ね」


 きつすぎて問題視されそうな発言だけど、俺の全面的に同意する。

 仮になんか精神的な病気だったとしても、その病気を治そうとか悪化しないように抑えようと努力してる人なら、少なくとも執行猶予中にこんな犯罪犯すわけがない。

 こいつは羽柴の言う通り、そもそも生まれてこなければよかった生き物だ。人種と、人扱いなだけ羽柴は優しい。


「そんな奴が、第一の事件と第二の事件との間が9か月もあるのは不自然。

 1回目の誘拐成功は相手がネグレクトを受けてた子という幸運を自覚して、第二の事件は計画を練って実行したものだとしたら妥当な期間かもしれないけど、その割には第二の事件はあまりにお粗末。

 ……ねぇ、ソーキさん。人間が物事に飽きるまでの期間って法則があるらしいけど、それどれくらいか知ってる?」


 パソコン画面から目を離さず、誰かに説明しているというより自分の考えを整理するための独り言が、急に俺に向けた問いになる。

 けど、それは本気で俺に問いかけたわけじゃなかった。

 俺が答える前に、羽柴は自分で答えを言った。


「3日、3か月、3年。だいたいこれくらいで、人は物事に飽きるそうよ」


 どういう根拠かはわからないけど、その日数や年月には確かに心当たりがあった。

 日記や早朝ジョギングも、だいたい3日も続けばいい方だ。寝る間も惜しんでやっていたゲームの熱が、急に醒めるのは確かに3か月ぐらい。好きなアーティストの新曲に、興味がわかなくなって来るのは、その歌手を知ってからそれぐらいの年月が経ってから。

 嫌になるほど、納得する。


 そうか、飽きたのか。

 だから、お前は新しい獲物を探しにまたこの町をうろついていたのか。

 第一の被害者が誘拐されたのは、2月。


 カズラが死んだのは、5月。


 期間としては、妥当だろう。



 * * *



「犯人は、最低な意味でポジティブだった。

 1回目が計画もろくに立てなかったのに、家に連れ込めたどころか捜索願も出されず、事件として成立しなかった。だから、1回目が上手くいったんだから次だってうまくいくと信じて疑わなかった。

 早朝、浜辺をうろつくカズラを見て、彼を第一の被害者と同じように朝早くから家を追い出された虐待児童と思ったのかもしれない。

 よく見れば不健康に痩せても太ってもいない、服はサイズが合ってて綺麗に洗濯された物、持ってる釣り道具は新しい、どこからどう見てもきちんと愛されて育った家の子だって分かるはずなのに、そいつは自分にとって都合のいいところしか見ていなかった」


 それはただの推測、羽柴の想像にしか過ぎない話。

 散らばった事実のかけらを、それらしい妄想でつなぎ合わせただけの根拠なんてない話。

 けれど彼女は、見てきたかのように語る。

 どこか遠くを見るような目で。

 深い水底までも、見透かすように。


「さっきも言ったけど、性犯罪は男が女にするものって基本的にたいていの人が思い込んでいる。男が幼い女の子に話しかけたら即行で怪しまれるけど、女と男の子なら周りもその子供自身も警戒することは少ないし、気にしないでしょうね。

 さらに言えば、ネグレクトされてる子は愛や優しさに飢えてるし、躾もろくにされてないという事は、何が危険かも教えてもらってないってこと。『お菓子あげるからついておいで』なんて怪しすぎる常套句でも、悪い意味で世間知らずな子なら十分。母性に飢えていたのなら、それこそ自分から本当についてくるかもね。

 ……けど、ごく普通の家庭で育った子、カズラには通用しなかった」


 当たり前だ。

 確かにおっさんに話しかけられるより、おばさんの方が俺も警戒はしないけど、このご時世じゃ幼稚園児でもそんなこと言われたらドン引きで警戒するだろうに、10歳前後ならそんなんでホイホイついて行くわけない。逆に、即行逃げるわ。


「近づくことには成功しても、車などに連れ込むことが出来なかったんでしょう。

 抵抗されたのか、大声をあげられそうになったのか、とにかく犯人には予想外で不都合なことをされた。されて、当たり前なのに。

 カズラがパニックになったのと同じく、なる資格もないのに犯人もパニックに陥った。

 その結果は……殴ったか、突き飛ばしたか、それとも首を絞めたか」


 何をしたかはわからない。でも、おそらくそのあたりだろう。

 少なくとも、死因は頭か首かどちらかを良く調べたら、……もしかしたら調べるまでもなくわかった事かもしれない。

 見るだけで、わかるような傷や痕があったかもしれない。


 けれど、それは失われた。

 カズラの頭部はいまだ見つからず、きっと海を漂っている。


「動かなくなった彼を、そのままパニックを引きずって奴は海に捨てた。浜辺からわざわざ深いところまで運んで流したのか、入江かどこかまで運んで海に落としたのかは知らないけど、証拠隠滅というより臭いものに蓋、ただ単に見たくなかったから現実逃避に捨てたんでしょうね。釣竿とかはすべて浜辺に残っていたのが、いい証拠。

 ……本来なら、彼の遺体が見つかったらすぐに他殺であることはわかったでしょう。死因によっては、警察や検視官というプロじゃなくても」


 そう。カズラの遺体は、死んでから長くて半日で見つかったんだ。

 水死か死んでから海に捨てられたくらい、解剖したら一目瞭然だっただろう。……本来なら。


「スクリューでバラバラになったせいで、内臓もズタズタになったから、胃や肺に水が溜まってるのか溜まってないのかもわからなくなった。

 死因が頭なら、もう見つからなかった時点でアウト」


 海外ドラマの検視ミステリぐらいに綿密に調べまくったら、水死じゃないことくらいわかったかもしれないけど、現実の警察、それも日本じゃ無理だろうな。

 そもそも、この時すでにこの町で誘拐と監禁事件が発生していることを犯人と被害者以外の誰かが知っていれば、カズラが見つからない時点でその事件との関係性を疑えた。

 遺体が見つかった時も、たとえバラバラになっていても詳しく調べただろう。


 誰も知らなかった。誰もわからなかった。

 カズラは事故死してもおかしくないことをやらかす性格の子だった。事故死が自然に思えた。

 こんなにも不自然だらけなのに、誰も気付いてやれなかった。


「……さすがに人を殺して、またすぐに新しい獲物を探すほどの度胸はなかった。だから、今度は長めに大人しくしてた。

 でも、最悪なことに奴の犯行はまたしても表ざたにはならなかった。

 誘拐も殺人すらも露見しなかった奴は、またポジティブになった。そしてさすがに第二の誘拐の失敗を最低な学習をして、今度はある程度事前に下調べをして、獲物を狙って犯行に及んだ。

 けど、さすがに悪運も尽きて奴の悪事は露見した。……一番罪深いものを除いて」


 誘拐事件が露見しても、誰もカズラの死とそれを結び付けられなかった。

 誘拐事件そのものより第一被害者の家庭環境がショッキングすぎて、第一と第二の事件発生のスパンの長さを気にする人がいなかった。

 第二の誘拐が、9か月も間をあけたにしてはあまりにずさんでお粗末な計画であった事なんて、誰も疑問に思わなかった。

 誰も誘拐とカズラの死を結び付けられなかったから、犯人は答えなかった。隠し通した。


 間にもう一つ事件があった事、第二の事件以上にずさんでお粗末で、そして最低最悪の結末を迎えた事件があったことを、誰も知らなかった。


「ソーキさん」

 羽柴はパソコンの電源を落として、俺に呼びかけた。

 今更になって思う。

 羽柴は自分の想像の補強や確信を得るために、パソコンを借りて調べていたんじゃない。

 逆だ。


 自分の想像を否定したくて、自分の想像があり得ないと断言できる破綻を探していたんだろう。


 けれど、羽柴の想像は何処にも具体的な証拠はなかったけど、状況証拠としては十分だった。

 悲劇の証には、十分だった。


 人として生まれるべきではなかった女と、母親になる資格のなかった女。

 二匹の人の皮を被った鬼の所為で、一人の少年は死んで、聖母は夜叉になった。

 この話は、こういう悲劇だったんだ。


 だから、もう悲しむのも悔やむのもここでやめよう。

 悲しむこと、悔やむことに、残酷だけど意味はない。

 そして、これは悲劇だけではないのだから。


 今はその悲劇が、唯一の希望。


 カズラは、まだいる。

 幽霊とも言えない、「よくないもの」としか言えなくなってしまってるものじゃなくって、ちゃんと生前の人格を持って、一人きりでただ望んでる。


 いっそ諦めてしまいたいのに、諦めきれずに、願いを叫んでる。


「お母さんに、会いたい」と。



 * * *



 羽柴は、俺に向き合って言う。

「ソーキさん。

 カズラは確実に、ソーキさんと波長が合ってる。2階にソーキさんが意識なく入って行ったのは間違いなく、ソーキさんがカズラと同調してたから。

 カズラは確実に、あの2階にいる。もしくは、彼にとって心残りな何かが、あの2階にある」


 あぁ。そうだろうな。

 さすがにだいぶ慣れた経験柄、わかる。

 地縛霊なら、カズラが死んだであろう海水浴場の浜辺にいるはずだろうから、別にカズラは土地に縛られている霊ではないはず。

 そんで、土地に縛られていないのなら、あいつは自分で母親に会いに行けばいい。


 それをせず、「会いたい」と望むのは、彼の願いはただ会うだけじゃない。

 まだ、何かがある。


「私は元々、霊は悪霊も浮遊霊も守護霊すらも寄せ付けない体質だから、霊に同調はほとんどできないし、直接話を聞くにしてもあの蟲どもが邪魔。

 ……だから、ソーキさん。お願い」


 いつもなら羽柴は、俺に下がってろ、大人しくしてろとしか言わない。俺にできることが何もないことを良く知ってるから、何もさせない。

 なのに、彼女は俺に言った。


「私が蟲と、そしてあの母親を何とかする。

 だからソーキさんは、カズラとカズラの『心残り』を見つけてあげて」


 元々、俺の巻き添えで敵認定されたのに、自分の方が危険な役目だっていうのに、それなのに羽柴は、泣き出しそうな顔で俺に頼んだ。

 ……馬鹿だよ。羽柴は。


 そんな顔しなくたって、俺の答えは決まってる。

「当たり前だ!」


 泣き出しそうな羽柴の顔が、いつもの無表情に戻る。

 いつもの、真顔。何考えてるか全くわからない、無表情だ。

 ……そのはずなのに、俺の自意識過剰かな。


「……そう。……ありがとう。ソーキさん」

 羽柴の目は、嬉しそうに見えた。

スランプでなかなか投稿できなくて、ようやく投稿できそうと思ったら、今回の話を彷彿しそうな事件が起こって、その事件の話題が上がらなくなるまでおいていたら夏が終わってしまった……


前書きでも書いたように、この話はフィクションです。

説得力がないかもしれませんが、彷彿する事件が起こる前に書き上げましたので、本当に無関係です。


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