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露草色の秋  作者: 亰
空を想って
2/3

今日の朝食当番は

 朝、外から聴こえてくる蝉の声が僕を心地よい微睡みの中から現実に引き戻す。

 少しだけ網戸にしていた窓から涼しい風が吹き込んできて頬掠める。

 僕は今の季節が好きだ。

 夏と秋が混ざり合ったようなこの感じはとても心地良くて、目は覚めていたけれど、横になったまま今もまだ僕の頬掠める風を楽しんでしまっている。

 「そういえば朝食」

 と、口に出してから思い出した。今日の朝食当番は月火だ。

 それから時間が気になって時計を見る。そろそろ彼女が起きる時間だ。

そんな事を考えているとドアが開いた音がしたかと思ったら、すぐに走ってくる大きな足音が聞こえてくる。

 「噂をすればなんとやら」

 月火だ。もうすぐこの部屋に来るんだろう。

 僕は心の中でカウントする。

 3、2、1、0。

 「起きてる?歩っ」

 腰まである綺麗な黒髪をたなびかせながら同居人が僕の部屋にドアを勢い良く開けて入ってくる。

 「起きてるよ、おはよう」

 僕は体を起こしてから挨拶をした。

 「おはよう」

 と、そこである事に気付く。

「こ・こ」

「ん?」

 「ボ・タ・ン、外れてるよ」

 目をそらしながら自分の胸元を指さす。  

 「え?うそ!」

 顔を赤くして、慌てながらボタンをとめる月火。 

 いくら僕が幼馴染だからって無防備過ぎないかな。起き抜けにその格好は僕には刺激が強すぎるよ。

 「エッチ」

 顔を赤くしたままの月火がボヤく。

 「エッチって」

 それはちょっと理不尽というやつじゃないか?

 「そろそろ朝食の準備しに行った方がいいんじゃない?」

 「む、それもそうね」

 まだなにか言いたそうな表情のまま月火は僕の部屋を後にした。

 「さてと、僕は先に着替えようかな」

 大きな伸びをしてからベッドから出た。





 着替え終えてから、顔を洗うために階段をおりて洗面所に向かおうとすると、キッチンから少し何かが焦げた匂いがした。

 「また目玉焼き焦がしたのかな」

 僕は苦笑しながらどんな風に苦手な料理を頑張ってる月火のフォローをしようか考えながら、洗面所に向かった。





 「別に食べたくなかったら食べなくてもいいのよ?」

 少し苦味のある卵焼きを平気な顔で食べている僕に向かって、少し悲しそうな顔をしながら月火が言ってきた。

 「そこまで苦くないから全然食べれるよ、後作ってもらえるだけで助かってるし、ついこないだはじめたばかりでこれだけ作れるのはすごいんだから、そんな顔しない」

 そう言ってコーヒーを飲み干す。

 「それよりほら、月火も早く食べないと遅刻するよ?洗い物もしときたいから急いで急いで」

 僕は自分の分の朝ごはんを全部食べ終えて、食器を洗い出す。

 「そんなに急かさなくても分かってるわよ」

 さっきよりは少し元気な声が帰ってきたことに内心で安堵してから洗い物を再開した。





 「お弁当持った?」

 「持ったわ」

 「それじゃあ行こうか」

 「そうね」

 そうやって、僕と彼女の今日が始まる。

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