表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/16

太鼓の超人

 全力で遊んだ結果、こうなりました。


「寒いぃぃぃぃぃいいいいいいいい!!!」

「うっせ!」

 右隣で由紀が叫んだ。それによって、近所の奥様方が「あらあら」と温かい視線を送ってくる。

 奥様方。この子はこんなこと言ってますが、さっき俺の手袋を奪ってますからね? それに加えて、暖かそうなチェックのマフラーしてますからね?

 どっちかと言えば、ジーパンにジャンパーだけと言う軽装備の俺の方が寒いから。

 冷静に脳内で突っ込んでいると、

「ねえねえ! ちょっとここ行こう!」

 由紀が興奮気味に誘ったのは、古そうな印象を受けるゲームセンター。田舎にしてはゲーム機の種類が多く、休日には暇を持て余した学生で溢れているところだ。今も、殆どのゲーム機では若者が楽しそうに遊んでいる。

「ああ。何するんだ?」

 由紀はゲームをするタイプではない。だから内心は驚いている。まあ、声色には出ないけどな。

「これっ!」

 指を差しているのは「太鼓の超人」と言う、たぬきをマスコットとした太鼓ゲームだ。アニメの曲からJポップ、更にはオペラと、幅広い曲があり、曲に合わせて流れてくるたぬきのマークを指定の場所で叩くと点数が加算され、その合計点で競う。

 ちなみに、叩くと「ぽん」と言う。ちょっとうざったい。

「へー」

 口角が自然と、そう、naturalに!!

「勝負だ!」

「おうよ」

 たまたま前の人が終わったので、金を入れてスタート!


 ♪♪♪


「うわああ!? 負けた!!」

「余裕」

 目の前にはフルコンボの文字が。まあ、見慣れてるけどな。

 難易度はいつも通り、「鬼」のもう一個上にある「裏ステージ」。由紀の難易度は「かんたん」。まあ、叩く数も違うからしょうがないが、由紀はそれでも数回間違えている。

 いつの間にか周りにはギャラリーができており、ところどころから

「すっげ……」

「叩くスピードハンパじゃねえわ」

「レベルが違い過ぎる」

「隣の子が可哀想」

 などと聞こえてくる。由紀を見るとかなりご不満な様子で、下を向いて髪の毛を指でくるくると絡めている。完璧拗ねている。

「も、もう一回!!」

 悔しかったのか、由紀がそう叫ぶと、ギャラリーからは

「頑張れー!」

「倒しちゃえ!」

「可愛い!」

 などと歓声が。おい、一部。

「まあ、次も勝つからな」

 と言いながら、俺は金を財布から取り出した。

「「「はじめるぽん!」」」

 ギャラリーが声を合わせて言う。てか、ギャラリー結構いるな。


 ♪♪♪


「うわああああ!!」

「なぜだっ!」

「くっそお!」

 雑魚達が地面を叩く。

 結局、周りにいるギャラリーの中から、

「俺が倒してやるっ!」

 と挑戦者がやってきて、かなりの回数プレイした。なかなかのやつもいたが、俺の全良攻撃に勝てる者はいなかった。

 目隠しまでされたのになあ。

「うーん、お腹減った!」

 由紀がそう言うと、周りのギャラリーからも「そう言えば……」などと聞こえる。手元の腕時計を確認すると、十二時半を過ぎたあたりだった。

「じゃあ、何か食べるか」

「よし、マックだ!」

 由紀は元気良くその方向へ走って行った。きっと、席でも取りに行ったのだろう。

 全く、能天気な奴だなあ。

 そう思いながら、由紀をゆっくりと追いかけた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ