膝上スカートと膝下スカート、どっちが好きですか?(本編とは全く関係ありません)
「兄貴、朝ごはん……え、何それ」
翌日。パンのいい匂いがしてきた頃、妹がノックをして入ってきた。しかし、返事は聞かない。俺は既に諦め、思いついたイメージを白い紙にひたすら描いていた。
「主人公だ」
俺は妹に目を向けず、クレヨンに手を伸ばした。何となくで、黒やピンク、オレンジなどでソイツを描いていく。妹は床に無造作に散らばっている紙をを拾い上げ、一つにまとめて部屋から出ていった。
そして、すぐに戻ってくる。何をしているのだろうと思い、妹の方へ目を向けると紙の束は右上で止められており(針のホッチキスではないところが、気遣いができる妹らしい)、ぺらぺらと捲っては「可愛い……」などと感嘆の声を漏らしている。
「この子の名前、何ていうの!?」
かなり気に入ってくれたようで、妹は立っているにも関わらず、座っている俺と顔が同位置にある。息遣いさえ聞こえてくるような距離で問いかけられた。
「ほこりくんだよ。後で女の子バージョンも出すつもり」
「へえ! 女の子バージョンも描いて!」
「はいはい」
何だか、妹が幼くなったような幻想に陥ったぞ……。目がきらきらしてる。
何となしに灰色のクレヨンを手に持ち、適当にクレヨンを紙から話さずにクルクルと円を続けて重ねていく。このとき、上部左右をさりげなくぽこっとさせるのがポイントだ。女の子バージョンの場合は頭にリボンを乗せて出来上がりだ。
その絵を描き、近くにうさぎやしまうまなどを足して妹に渡すと、
「女の子バージョンも可愛い! 男の子がほこりくんだから、女の子はほこりちゃんだね!!」
と単純な名前を付けてから(俺がつけた『ほこりくん』が全く捻りがないのも素因だと思われるが)、
「どんな話にするのか決まった?」
と訊いてきた。
ほこりちゃんを描いてもらったのが相当嬉しかったのか、くるくると回っている。セーラー服の膝上スカートの中が見えそうで見え――ああ、怒られる。妹愛護団体に。
「いや、決まってない」
ストーリーなんて考えたことないやつに、パッとアイデアが降りてくる訳がない。
……多分。
でも、まだ一ヶ月もあるんだぜ? 余裕だろ。
「そうなの? でも兄貴」
妹はドアまで戻り、ニコッと――いや、ニヤッと笑い、告げた。
「一ヶ月なんて、あっという間だよ?」